僕は欠陥品でよかったんだ。

僕は基本的に好きだから好きなの。みたいなものをそのまま受け入れられないし信じられない。どんな理由でもいい、馬鹿みたいな理由でもいい。原因が知りたい。絶対何かしら原因はあるはずなんだ。だからそれを知ろうとする努力をすべきだ。考え尽くした人間にのみ好きに理由なんてないの。と言うことが許されている。本当はなんでもいいの、すきって言葉を言いたかったの。でもいい、あなたの自転車こぐ姿が格好よかったから。でもいい、好きな食べ物をカレーと言ったから。でもいい、なんだっていい。好きってのはそういうことなんだよ。

共通点なんか見つけようとすればいくらでも見つかる。同様に違いなんかも簡単に見つけられる。
もっと大事な何かがあるんだ。僕には見えない。僕はそれを探す作業が愛だと思っていた。

離さないってのは自分が離れないということだけではなく相手も離れないようにするというものを必ず含んでいる。

ただその女を合法的に一生犯したいが為の結婚には少しは結婚の意味があると思える。

僕は幼い頃祖父とすごく仲が良かった。なんの仕事をしていたのか、記憶はない。ただ祖父の家はすごく広くて(子供だからそう感じたのかもしれない)祖父の家に行くと必ず人が何人かいて、その大人の会話に入るのが僕はとても好きだった。僕はそこで礼儀だとか礼節だとか挨拶だとか上下関係だとかを叩き込まれた。道徳的というよりかは差別的で絶対的なものとして教えられた。僕は子供にはそういう教育が必要だと今でも思っている。ある意味では有難いし僕が僕であらんとする為に不可欠な要素の一つだ。
父はそういうシステムを大変嫌っていた。上下関係なんかないと常々言っていた。でも父は愛を、正義を、約束を、整合性を、正しく善き人間であることを重んじていたし、僕はそういうものにも勿論染まっていった。

テレビや学校が親に勝てないなんておかしい。そんななら親なんかいらない。

今の僕はちゃんとそれらを破る時には破れる。ちゃんと天秤にかけてどちらを選択するか考えられる。愛と上下関係を、正義と挨拶を、約束と礼節を秤にかけることができる。ある場面において僕は取捨選択できる。

かつてゴダールが言った。

比較とは
比べられるものを比べることではなく
比べられないものを比べることだ

それが唯一と言っていい、僕の強みだ。

何でだ、例えば、人前でずっと嘘をついている人がこれは本当だよ、と本当のことを言ったとする。それが本当に本当のことだったらどうするの？あなたはどう責任を取るの？
今まで嘘をついていたからそう判断されて仕方がないと思う？
僕はそうは思わない。
では例えば嘘をつかなくちゃ殺されると脅されていたら？お母さんの病気が治る為には嘘をつき続けなくてはならなかったとしたら？どうだろう？

ナチスの高官が僕の友人であるユダヤ人を殺した。僕の目の前で。僕はその高官を追いかけた。高官は広場でフルートを吹き始めた。その音色は寒気がするくらい美しいものだった。僕は涙を流しながら周りの群衆と一緒に拍手を送った。その後にその高官をピストルで撃った。

美しい音色と
友人の仇討ち

それはこの世界では同時には両存し得ないのかもしれない。
完全なパラレルな問題ではない。

そして個別の問題だ。
でもそのどれもが真実だ。
若干の時間差があり二つとも存在している。

僕はその時の復讐心でフルートの音色の美しさがわからないような人間にはなりたくない。また美しいフルートの音色によって僕の復讐心が少しでも減少されたり助長されてはならない。
僕は他の要素を完全に排除した其の復讐心のみで弾丸をぶっ放さなくてはならない。

美しさや真実は例えば善悪を超えて独立して存在しているものだ。
善悪の彼岸に在るものだ。