あとは載せないから、せめて最後だけでもってこと……‥

載せてほしい(`･д･)

………‥

　枯れ葉が舞う。
　銀杏の木を飾るものはなくなった。
　小学生に羽瀬と一緒に見た木。
　その日から今日までが全て、…今日で終わる？
　嫌だ！…逢えて、いっぱい、いっぱい話しをした。それが普通だと思ってたのに…。
　公園の時計を見る。夕暮れが沈み出す４時を指していた。
　羽瀬の姿はどこにもない。
　探しまわった。──学校、映画館、駅、…そして公園。
　いつもそばに居た、羽瀬の姿がいなくなると、すごく切ない。
　あれから４時間、か。
　ベンチで少し身を休ませる。
　羽瀬の言葉が江原の頭の中でフラッシュバックした。

『今日が素敵な一日でありますように♪』

『楽しいです…♪…うん、楽しい……』

『明日…、明日から私は……、もう行かなきゃ……』

『また、逢えるといいですね…♪』

『……ちょっとお手洗いに………、さようなら江原暁君』

「待って！！待ってよ！」
　…いつのまにか、ベンチで眠っていたらしい。羽瀬が遠くに離れる夢を見ていた。
「…羽瀬さん……」
　羽瀬が歌った歌、自分のために書いてくれた詩。全部、自分には内緒にして、少しずつ、わかってきたんだ。いや、最初っからわかっていた。
　羽瀬が好き。…小さい頃から、ずっと忘れられない存在なんだ。ずっといたんだ。目をつぶれば、すぐ思い浮かべる羽瀬の笑顔…。
　今すぐ、逢いたい。逢ってまた約束する！小さいころにも約束したこと──…。

『また巡り会おうね。季節は秋の、夕暮れ時』

　そう羽瀬は言い残し、江原は引っ越した。あのときの羽瀬の顔は笑っていたな…。…でも泣いていたんだよね？
　解ってるんだ。もう別れたくはない！もう泣かせたくなんか──。
「……っ！！」
　自分の羽瀬への強い気持ちが、大きな涙になっていた。もう、会えない。もう話せないと思うと、その分零れ落ちていく。
「うわぁぁぁぁぁぁあぁっっ！！」
　男らしくない。でも涙は止まらない。辛い。苦しい──…。
　初めてこんなに泣いた。男なのに、泣いた。
　泣いてちゃだめなのに。一秒でも早く羽瀬に逢いたいのに…。
　江原は涙をできる限る拭う。
　そして前を見る。
　そこにはいつから、立ってたんだろ。
「……泣いちゃダメですよ、江原君……」
　──羽瀬だ。

「……は、…はせ……さん……」
　また涙がでそうになった目を必死に堪える。
「……探してくれたんですか？……私のこと…」
「……うん……」
「江原君……、ごめんなさい………。私勝手にいなくなったりして……」
　江原は我慢しながら笑う。これでも精一杯なんだ…。
「ううん……♪…羽瀬さんは…うまいなぁ…かくれんぼ…♪」
　ごまかしてみる。でも、今きっと涙がこぼれているだろうな…。
「江原君……私ね…」
　羽瀬は夕日を見ながら喋り出す。
「私ね……きっと淋しがり屋で、甘えん坊で、…それで、嫉妬深くて………」
　少しだけ声が掠れてるような気がする。
　羽瀬は江原に背を向けているので顔がみえない。

「それでも江原君が……大好きで………。きっとそれはまた別れても変わらなくて……」
「……うん…、僕だってきっと同じなんだ……。ずっと好きなんだって………言いたかったのに、それがまた別れの日なんて…」
「………本当に…？…江原君……私のこと…？」
「何度だって言えるよっ！！…好きだよ…ずっと！！……しょうがくせーの……、くっ、…こ、ころからっ！！」
　堪えていた涙も空しく落ちていく。もはや羽瀬の後ろ姿も見えなくなってしまう。
「……や、…やくそく、おぼえていますか…？」
　羽瀬がさっきより掠れた声で江原に問い掛ける。
「…『まためぐり…あおうね。…きせつは秋の、夕暮れ…時』……だよね…？」
　きっと頷いてくれている。羽瀬は少しだけ笑うとくるっとこちらを向いた。
「その約束、…今日で最期にしましょう…」

　──それって？もう逢わないってこと？
　悲しい現実は涙を流せなくなった。心臓がすごく痛い。ズキズキと締め付ける痛み。
　でも、自分を忘れるためならそれでも構わない。これ以上苦しみたくない。…そう思うと逆に楽になった。
　ううん…。楽にさせた。無理矢理そう思い込ませた。
　だけど羽瀬は、…悲しい顔はしない。
　そして──…。

「今日が…その日なんですから……♪」

　秋の夕暮れ時、…確かにそうだ。
　江原は羽瀬を見た。その夕暮れに染まった…、羽瀬の笑顔。
　だけど、泣いていて…それでも嬉しそうで。
「もう……、はなればなれに……ならなくていいの……？」
「うん……♪」
「ひっこしは……？」
「…ここに一人暮し…♪」
「………えへへ…♪じゃあ……これからは……」
「うん………」