秋風ノ~So.Na.Ta~ｼﾅﾘｵ制作中ｵﾘｼﾞﾅﾙｽﾄｰﾘｰ...

「おっす！今日は帰りどうするんだ？」
「えっと…今日は図書委員があるから…」
「そっか…んじゃ、先に帰ってるぜ」
「またね♪」
「またな！」
　帰りのホームルームが終わり、見能林が誘ってきた。しかし、今日、図書委員の初仕事だ。何か妙に気合が入る。それにつけたし、妙に緊張する。
　教室から見能林を見送ると、身支度をし、図書室へと向かう。

「江原君！遅刻です…。いきなりですか？」
「ご、ごめんなさい……。少し遅れました」
　言い訳はしなかった。本当は弁解したかったが、しょうがない。
　ホームルームが始まる時間は性格には14時30分…。しかし、担任の先生のミスにより、かなり時間が遅れたことだ。そのミスと言うものは、プリントの印刷のしわすれと言う単純ミス。生徒のブーイングは激しかったものの、先生はあれで真面目なのだからしょうがない。だから江原は責めたりしなかった。
「…いいでしょう。その代わり、今日はスパルタ並に調教します。覚悟していてください」
「図書委員にスパルタって───」
「図書委員を甘く見ないでくださいね……？」
　彼雀の鋭い眼差し。一体何が始まろうとしてるのか、江原には想像もつかなかった。

　授業だ…。絶対誰が言おうとも、これは授業だ。絶対に説明会じゃない。
　黒板にならべられた多数の言葉や説明やら図形…。さらに教師になりきったように喋り続ける彼雀。その口が止まることはない。
　この個室は一体なんだろう。説教部屋か？はたまた取調べ室か？
　窓は一つしかない。だけどその窓は以外とでかく、部屋中を日があたる感じだ。そして窓の正反対側には二重式のでかい黒板だ。手動で上下に動く仕組みの黒板だ。
　そして真ん中には机が一つと椅子が二つ。椅子は向かい合えるように置いてある。
　彼雀はまだ黒板の前に立って、説明を続けている。江原は彼雀に言われたとおりにノートに写すが、すでに３ページ越しだ。それにあと２行でも書いたら……あ、図を書き始めた。次のページに書かないと。

　淡々と黒板の字やら彼雀の言葉をメモして行くうちに、２時間経過した。その間図書室では江原の代わりに仕事をしている。とは言え、その人もまさかここまで任されるとは思わなかっただろう。
　やっと彼雀の『特別授業』が終わった。
「江原君…、以外とタフなのね……」
「慣れてますから…。へっちゃらですよ」
「……そう…。期待してるわよ、仕事のほう…」
「任せといてください！…彼雀先輩のおかげで本の配置とか、仕事内容もちゃんと理解できました…。覚えやすかったですよ、すごく」
「………今日はご苦労様…。帰りに飲物を奢ってあげるわ…」
「えっ？…い、いいですよ！そんな気を使わなくて」
　江原は手を前でふり、彼雀の誘いを断ろうとした。が、彼雀はまた鋭い眼差しで江原を睨みつける。
「図書委員長の誘いに断るって言うのね…？いい度胸だわ…」
　彼雀は何かと妖しい笑みを浮かべて、江原に迫り寄ってくる。
　そして江原は悟った。
　──食われる！
「あっ…あ～～…、せ、せっかくだし、ありがたく飲もうかなぁ～？ちょうど…の、喉かわいたところだったし…」

「クスクスクス…、なら先輩の好意ありがたく受け取りなさい。…身支度済ませたら、校門前で待ってるから早くきなさいよ……」
　そう言い残し、彼雀は説教部屋（本当の名前は、第２視聴覚室らしい。…だけど使われてないらしい）を後にした。
　江原も身支度はメモしたノートをしまうだけだったので、すぐに身支度を済ました。そして、代わりに図書委員の仕事をしてくれた女の子に挨拶をしようと、図書室に戻る。
「あっ……」
「……ふぁ…」
　カウンターに座って、管理をしていたのは間違いなく、瑠原だった。
「る、瑠原さんが…、代わりに……」
「……えぇ…」
「と、図書委員…？」
「ううん……、ずーちゃんの手伝い…」
「…彼雀先輩のこと？」
　瑠原は小さく頷く。
「江原……、江原にとっておきのあだ名…考えたよ……」
「あだ名…？」
　にこやかに笑う。あきらかに楽しそうだ。

「さとし…、だから、しぃー…」
　数秒の沈黙…。
　何だ、この不思議というか、変というか分からないあだ名は…。
「し、…しぃーって…」
　瑠原の目つきが変わる。少しだけキリっとした目だ。
「しぃーが拒否をしても、私はしぃーと呼ぶ…」
　本気だそうだ。せっかく瑠原があだ名をつけてくれたんだから、拒否をするわけにはいかない。
　江原は優しく笑う。
「今日はありがとう、瑠原さん……」
「…べっ…べ別にいい……。しぃーには音楽を聞いてもらったし…、その御礼だ……」
「……ありがとう♪…そういえばまだ帰らないの…？」
「私は…本も好きなのだ……。だからしばしここに残る……。もう帰ってもいい…」
　そう言うと、すぐ近くにあった本を手に取る。
　その本の束からして、どうやら読む予定の本を予めそこにいつでも読めるように積み重ねてるのだろう。
「それじゃあ…、またね」
「またね…しぃー」