秋風ノ~So.Na.Ta~ｼﾅﾘｵ制作中ｵﾘｼﾞﾅﾙｽﾄｰﾘｰ...

「ごめん……。学桐さん…とは……」
「………っ」
　素直に言えよ自分っ！答が違うだろ？何で素直に言えないんだよ！
「……っ！」
　ﾀｯﾀｯﾀｯ…ﾊﾞﾀﾝ。
　屋上から学桐が消えた。
　自分に嘘をついてしまう。ホントは自分の気持ちが解ってる。…解っているのに…。
　一人、ただ佇み、学桐が消えて行ったドアを見ていた。罪悪感でいっぱいになっていた。
　友達なのに、傷つけてしまった。大切な親友なのに…。
　素直に話せない。素直に話すことさえ出来ない。
　自分の力のなさに苛立ちを覚えた。でも…それはもう遅いかもしれない。
　本当は学桐は友達以上に思っている。
　だけど…嘘をついて…。
　そうだよな…。
　学桐を思うことに何も我慢することはなかったんだ。
　誰でもあんな元気な彼女を見れば惚れるよ。…それに嫉妬する自分が情けない。
　…ずっと傍にいるって約束したのは僕の方じゃないかっ！何やってんだよ僕はぁっ！！

　携帯がなる。
　着信だ。…学桐からの。
　出ろよ……。出て謝れよ…っ。…好きって言えばいいんだ！
「………っ」
　指が動かない。
　『通話』のボタンを押すのが怖い。また…傷つけるんじゃないか…？出てちゃんと喋れる勇気はあるのか？
　結果的に学桐は学年の注目の的になった。だけど、そんな学桐を支える資格が自分にはあるのか…？
　…出れなかった。携帯電話は鳴るのを止め、留守電メッセージに切り替わる。
　数秒すると切れ、待受画面に映る『着信あり』の表示と『留守電メッセージ』の表示。
　恐る恐る、メッセージを聞く。
「……………っ！」
　…僕は間違えていた！
「ちあきさん…っ！」
　屋上から見下ろすグラウンドで一人、校門に走る学桐を見つけた。
「ちあきさんっっ！！」
　…聞こえない。
　…追い掛けなきゃっ！謝らなきゃ！

『もしもし？江原…？』

　学桐は一人なんだ。まだ、一人なんだ…。

『……私ね、江原のこと、一日も忘れたことないよ…？』

　僕も一人…。学桐さんがいて、やっと自分がいる。

『…引越した時なんか、…もう生きていく自信もなくなるぐらい……』

　階段を勢いよく降りて行く。涙を堪えながら…ただひたすら、学桐が通った道を辿り走る。

『……私は素直に言ったよ？約束守ったよ……？』

　走る…、走って、学桐さんに言わなきゃ……っ！

『……嘘でも好きって言ってくれればいいよ…。……私はそれだけでいいんだから……』

　グラウンドを横切る。校門の前に座り込む学桐を見つけた。

『私は…もう嘘をつかない……。まだ変わらないよ……。……好き……大好き…』

「ちあきさんっ！」
「…江原ぁ」
　江原は学桐だと確信すると力が抜けそうだった。ほっとした。…安心できた。

「……僕も……」
　一歩近づく。
「僕は自分に素直になれなかった。…モテるようになったちあきさんが僕の目の前から消えちゃうのが…恐かったから…」
　……でも。
「でも……違う。僕はちゃんと言えてない！…自分の気持ちにまだ…正直になれなかったんだ…」
　学桐は立ち上がり、江原に近づく。
「今度は……江原ぁが正直になる番だよ？…聞かせて…？」
　……うん。
「僕は、ちあきさんが好きだっ！離れたくないほどに…っ！嫌いなんて思ったことない……ずっと好きなんだ…」
　…言えた？
「……私、一人ぼっちになったままだよ？…江原ぁが傍にいないとずっと一人ぼっちなんだよ？……菜和っちも春姉も香音もみんな、みんなみんな大切。だけど！…江原ぁがいないと…ずっと一人ぼっちのまま何だよ…？」
　……ちあきさん。
「傍に居てくれなきゃ嫌だよぉっ！…傍に居てよぉっ！……私だってこんなに大好きなんだからぁっ！！」

　二人の気持ちは一つに重なった。今、やっと二つになり輝きだした。
　一つだと輝かない宝石は、もう一つの宝石によって輝き出す…。
　どんな宝石よりも綺麗で…、どんな値をつけてもつけきれないほどの、大きな雫となる。
　その雫は地面に落ち、小さな雫となって夕焼けに溶け込む。
「ごめん…ちあきさん……。ずっと一人にさせて…」
「ううん…♪もう寂しくないもんっ♪」

学桐は…今まで以上の微笑みを見せて笑う。

「これ以上の事は生涯一生ないもんっ♪だって……江原ぁが傍にいてくれるんだから………♪」

江原はそんな幸せそうな顔をする学桐の顔を自分の顔に寄せた。
静かに、そっと、重なる。
お互いが傍にずっといると約束を誓い、口づけを交わす。

“一つの涙は”
“もう一つの涙でやっと落ちる”
“二人で一つ”
“ただその瞬間を感じたい”
“これからもずっと二人で...”