【一緒に】球体関節人形【つくろう】
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#41 [七氏]
その後稲川さんは前野さんに、この人形は写真を撮って、その写真だけ大事に持ち歩いているようにして、人形はお寺に預けようともう一度持ちかけた。前野さんも納得し、稲川さんは知り合いのカメラマンの方に相談してキレイな写真を撮影してもらう事にした。久慈玲雲さんの事務所から引き取った人形を前野さんが撮影スタジオに持って行き、撮影は行なわれた。稲川さんと前野さんの2人は建物にある休憩所で待っていたのだが、写真を現像し終わったカメラマンが、悲鳴を上げながら暗室から飛び出してきた。

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#42 [七氏]
驚いた稲川さんはその、たった今現像した人形の写真を見て思わず声を上げた。今3人の目の前にある人形はまったくの普通である。しかし、写真に映ったその人形の姿は、すでに少女の姿ではなかったのだ。髪は床まで伸び、目は切れ長で妖艶な唇を持ち、真っ白い肌で顔立ちはほっそりとしていた。それは紛れもなく成人した女の姿で映っていたのである。3人はその場に立ち尽くすしかなかった。しかし、稲川さんはこの時の事を思い返して悔やまれるのが、2人でお寺に人形を預けに行けば良かった、という事だという。前野さんはその後、稲川さんから「間違いなく預けるようにね。」と念を押されていたにも関わらず、預けずに自分の家に持って帰ってしまったのだ。20 名前: あなたのうしろに名無しさんが・・・: 2001/01/24(水) 02:48その後、今度は大阪にある有名なキーTV局から稲川さんの元に依頼があった。もはや3回目となるのだが、やはり時期も丁度いいしあの人形についての番組を撮りたいから稲川さんにも出演して欲しいという事だ。この番組は毎週月曜日から金曜日のお昼14:00から放送している大変な人気番組であった。

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#43 [七氏]
「稲川さん、おすぎさんから聞いたんですよ。今話題になってますよね?シーズンも夏ですし、ぜひやりたいんですよ。」「いや・・・もう、やめて下さい。あの話はしたくないんですよ。申し訳ありませんが行けません・・・。」稲川さんはハッキリと断った。もはやあんな恐ろしい思いをするのはご免だったのである。しかし、ディレクターの話を一度は断った稲川さんの元に、何度も誘いが来る。その内稲川さんと親しい人物も依頼をして来た為、とうとう断りきれずに番組への出演を承諾してしまったのだ。「分かりました、では人形使いの前野さんという方と一緒に出ましょう。」こうして稲川さんと前野さんの2人は新幹線で大阪に向かった。そして番組のリハーサルが始まった。稲川さんはスタジオの真中に置かれたイスに座り、話す事となっている。稲川さんの背後には黒い大きな幕が天井から垂れ下がっている。黒い幕の前には番組のタイトルを書いた大きなパネルの吊り下げられている。リハーサルが始まり、いざ稲川さんがイスに座ると天井の方からヒューーーーーーーーーーー・・・。という、笛の音のような音が聞こえてきた。(おぉ・・・雰囲気でてるなぁ・・・。)

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#44 [七氏]
思わず稲川さんもそう思ったほどその音はハッキリと、大きく聞こえてきた。ここのスタジオは通常とは違い、実際に収録する場所と音声等を調整する調整ルームが同じ床の上にある。通常は調整ルームだけが同じ階とはいえ階段を上っていった天井近くのスペースにあり、管理するのだ。その調整ルームから声が聞こえてきた。「いいかお前ら!今日も番組成功させるぞー!失敗しても幽霊のせいにはしたらいかんぞ!」「何言ってるんすかー、アハハ。」楽しそうに話している声である。本番まではまだ時間があるため、稲川さんは前野さんを誘いコーヒーでも飲もうと、休憩コーナーに向かった。するとそこではなにやらトラブルがあったらしく、複数のスタッフが大声で怒鳴り合っていた。何事かと思い遠巻きに様子をうかがう稲川さん。「おい!なんじゃい、あの音は!」「い、いえ・・・。それが俺達にも分からんのですわ・・・。」「分からんって・・・お前ら音声だろうが!?」21 名前: あなたのうしろに名無しさんが・・・: 2001/01/24(水) 02:49するとその場に居た別のスタッフが、スタジオ内の音声を管理する現場の責任者を見つけた。先ほど調整ルームでスタッフに気合を入れていた人物である。

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#45 [七氏]
この管理者もこの場に呼ばれたのだ。「あ、来ました。チーフです!」「なんすか?」「さっきから聞こえてるあの音はなんなんですか!?」「いや〜・・・俺らにもサッパリ分からんのです。」「あ・・・分かった。ふざけてそんな事言ってるのとちゃいます?」緊迫した空気が少しやわらいだ。笑い声も沸き起こる。「そんな事しませんって!バカにせんといて下さい!!!」「またまた〜、何言っとるんですか〜。この、この〜。」「・・・わし、やっとらんぜ!!!」管理者は本気で怒り出してしまった。その様子を見た周りのスタッフたちの間に、再び重い空気が流れる。稲川さんと前野さんは邪魔しないように静かに缶コーヒーを飲んでいたのだが、その稲川さんの元に遠くから廊下を走ってくるスタッフが1人いた。もの凄い勢いで走ってくる。そして息を切らせながら稲川さんに話しかけてきた。「す、すいません稲川さん。今・・・番組に出演するはずだった霊能者の方が、局の前の道路で車にはねられちゃったんです・・・!」「・・・えぇっ!?」思わず窓の外に目を向けると、外からはパトカーや救急車のサイレンの音が聞こえてくるのだ。ファンファンファンファン!!!「・・・あれがそう・・・?」

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#46 [七氏]
「そうなんです・・・!」「で・・・どうするの?」「えぇ、ですから本番に間に合うかどうか分からないんですが、別の霊能者の人を呼びますから、番組の中でつないで欲しいんですよ。」「うん、分かった。つなぐよ。」するとその場に、同じ事を稲川さんに報告しに、プロデューサーがやって来た。「稲川さん、実は大変な事になっちゃって・・・。」「えぇ。今ADの彼から聞きましたよ。大変ですね。」「いや・・その事だけじゃないんですよ。」「・・・?」聞くところによると、その霊能者の人は「2人目」だというのだ。最初の1人目は、前日の夜にそのプロデューサーがTV局の向かいにある大きなホテルのバーで会っていたのだという。その場では翌日の収録についての軽い打ち合わせのような事が行なわれていたのだが、その霊能者の人がそれまでは翌日の出演について特に何も言っていなかったにも関わらず、打ち合わせの最中急に「・・・やっぱり、申し訳無いんですが明日の出演はやめさせていただきます。」と言って来たというのだ。22 名前: あなたのうしろに名無しさんが・・・: 2001/01/24(水) 02:50「えぇっ!?ど、どうしたんですか、急に!?」

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#47 [七氏]
「いえ、申し訳ありませんとしか言えません。わたしは行かない方が良いみたいです。」「そ、そのような事を今になって急に言われても・・・。どうしたんですか?一体・・・。」「・・・これはちょっと、私の手には負えないようです・・・。」「なにがですか?」「・・・さっきからあそこで・・・女の子が私の事をジーッと見てるんです・・・。」と言ってプロデューサーの背後の方角を指差した。思わず後ろを振り向くプロデューサー。「・・・誰もいないですよ・・・?」「・・・いえ、わたし見えてますから・・・。多分・・・人形の女の子だと思います・・・。私行ったらきっとまずい事になります・・・。」「・・・いや、あの・・・そんな事はないですよ。」「いや・・・まずいです・・・。」「そこをどうにか・・・頼みます!」「・・・分かりました・・・。では行きましょう。」こうして1人目の霊能者の人は出演してくれる事になったのだが、プロデューサーと別れた後、この霊能者の人は原因不明の高熱を出し、倒れてしまったという。その為に出演は無理という事になり、仕方がなく大急ぎで別の霊能者の人物を探し出し、TV局に来てもらう事となった。

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#48 [七氏]
その2人目の霊能者の人もまた、局の目の前で車にはねられるという事故に遭ってしまった訳である。そして霊能者の人が不在のまま番組は始まった。生放送である為に本番である。稲川さんはイスに座り前方を見た。しかし丁度真正面から強いライトが当たっている為に、まぶしくて前がよく見えない。話し始める合図は誰が出してくれるのか分からない稲川さんは横を見た。すると、背後にある黒い幕が引っ込んでいるのだ。分かりにくい状況の為補足すると、稲川さんたちがいる側を黒い幕の表として、そして幕を隔てた向こう側を裏とする。裏側にもし人が居たり何か物が置いてあるのであれば、幕が稲川さん達が居る表側の方に向かって出っ張っているはずだ。しかしそうではなくて、稲川さん達が居る表側の方から裏に向かって幕が引っ込んでいるのである。当然、何も無い。その引っ込みが、徐々に稲川さんに向かって進んでくるのだという。(うわ・・・イヤだなぁ・・・。)そう思いゾッとした稲川さんであったが、カメラに向かって話し始めた。23 名前: あなたのうしろに名無しさんが・・・: 2001/01/24(水) 02:51やがて話も一段落して、稲川さんはゲストの席に座る。

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#49 [七氏]
3人目の霊能者の人も本番中に間に合って、稲川さんの横に座った。そして挨拶をする2人。「今回はよろしくお願い致します。」「いえ、こちらこそ。・・・ところで稲川さん、今何か感じませんか?」「えぇ、今こんな事があったんですよ・・・。」と言って稲川さんは黒い幕の所で見た不可解な現象について説明した。すると霊能者の人はこんな事を口にした。「えぇ・・・ここに居ます・・・。」と言って稲川さんの肩の上のあたりを指差した。「え・・・?」「・・・居るんです・・・。今稲川さんの上に男の子が1人・・・。」そしてさらに、番組の段取りには無い事を言い出した。それによれば、番組を観にスタジオまで来ている奥様達が大勢座っている観客席の上に、照明がたくさんセットされている太くて長い棒がある。その棒がこの時にはちょうど観客席の真上にあったのだが、「お客さん達が危ないから、皆さんどかして下さい。」と言って来たのだ。稲川さんもさすがに(何を言い出すんだろう。)と思ったという。この事を聞いたスタッフが、「すいませ〜ん、ちょっと移動して下さ〜い。」と言いながら観客の奥様達を誘導して別の席に移した。すると次の瞬間、ガシャーーーーーーーーーーン!!!

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#50 [七氏]
という物凄い音を立てて、その太い棒をつないでいる2本のクサリのうち、1本が切れて棒が宙吊りの状態になって、音を立てて揺れている。ガシャン!!!ガシャーーーーーーーーーーン!!!ガシャン!!!その光景を見た番組司会のタレントの男の人は、口を開けたまま呆然と見つめている。「な・・・なんや、これ・・・どないなっとんや・・・。」そう言ってブルブルと震え出した。観客の奥様達も恐怖のあまり泣き出してしまった。すると別のフロアからスタッフが1人、大声で叫びながら本番収録中のそのスタジオに駆け込んできた。「い、稲川さーん!!!た、大変でーす!!!電話が鳴りっぱなしです!!!視聴者の人達からで、稲川さんの斜め上と少女人形の斜め上に男の子が1人映ってるというんです!!!」24 名前: あなたのうしろに名無しさんが・・・: 2001/01/24(水) 02:52この言葉を聞いた司会者が、半狂乱で叫んだ。「モニター回して見せてみー!!!」スタッフの誰かがモニターを司会者や稲川さん、霊能者の人、番組のアシスタント達に見えるようにクルリと向きを変えた。視聴者が生放送中の番組をTVで見たら霊が映っていた、などといった生半可な状況ではない。

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