この春ぷ。様デビューしませんか?
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#534 [ぷ。様エブリディ]
美月と出会った日だけは、今でもはっき りと覚えている。
あれは中学2年の春だった。
美月は東京から来た転校生として、この 町にやって来たんだ。
学年が上がる時にクラス替えがあったか ら、転校生が紛れても目立たないけれ ど、
なんせ3クラスしかない小さな中学校。
美月は浮きまくっていた。
:13/04/28 04:33
:ISW11K
:4fzWLTxo
#535 [ぷ。様エブリディ]
―――――――――――――
1997年4月8日―
「東京から来ました、篠原美月です。よ ろしくお願いします」
教壇に立たされた転校生は、無愛想にそ う言った。
まるで教科書に書かれた文字を、感情な く読んだかのように棒読みだった。
「…すげー美人」
教室内で誰かがため息まじりに言った。
確かに、美人。
:13/04/28 04:34
:ISW11K
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#536 [ぷ。様エブリディ]
肌が真っ白で、 目は大きいんだけどつり目で、冷めた雰 囲気。
華奢なのに強そうだし。
アイドル顔が好きな俺には、かなりの論 外だな…。
<
:13/04/28 04:35
:ISW11K
:4fzWLTxo
#537 [ぷ。様エブリディ]
早々とあいさつが済んだ後、担任の工藤 が俺を指さした。
「席は〜出席番号順だから、寺岡の隣だ な」
――えっ。
:13/04/28 04:35
:ISW11K
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#538 [ぷ。様エブリディ]
寺岡とは、俺の名字…。
それを聞いた俺はあからさまに嫌な顔を する。
どうせなら知らない転校生よりも、仲の 良い奴が良かった。
これが本音。
しかもあんな愛想のない女、隣にきても つまらなそうだし…。
:13/04/28 04:36
:ISW11K
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#539 [ぷ。様エブリディ]
転校生は無言で席に着くと、つまらなそ うに腕を組んだ。
…愛想がないどころか、態度がめちゃく ちゃ悪い。
しばらくはこの席順なんだよなぁ…。
早く席替えしないかな…。
腕どころか足まで組みだした転校生を横 目に、そう思った。
:13/04/28 04:38
:ISW11K
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#540 [ぷ。様エブリディ]
「つぅか転校生超かわいくね?」
「分っかる、俺もタイプだし」
「俺もー!」
ホームルームが終わった休み時間、トイ レでは男だけの会議が開かれた。
どうやらみんな、篠原美月みたいな女が 好きらしい。
それを知ると興味なかった俺も、“ちょっ とありかも”と単純にも気持ちが沸き上 がってきた。
:13/04/28 04:39
:ISW11K
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#541 [ぷ。様エブリディ]
すると男達は闘志を燃やしはじめ、
「この中の誰が篠原と付き合えるか」
とゲーム的な事を言い出した。
自動的に俺も巻き込まれ、参加する事 に…。
そして勝者には全員に缶ジュースをおご られる、という安い特典までついた。
やる気を高めるためのものだと思うけ ど、ぶっちゃけくだらね〜って腹の中で は笑った。
でもみんなで一つの事で盛り上がるのは 好きだから、冷めるような事は言わない けど…。
:13/04/28 04:40
:ISW11K
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#542 [ぷ。様エブリディ]
だけど問題が勃発した。
転校生は思った以上に、問題児だったの だ。
それに気付かされたのは、トイレの秘密 会議をした4日後の事だった。
【東京】から来た【転校生】という2つ のキーワードを備えた篠原は、
代わり映えのない田舎の中学校に、それ なりの刺激をもたらした。
篠原を目当てに、他のクラスから見物し に来る奴がちらほらいた。
まるで見せ物小屋の動物。
:13/04/28 04:41
:ISW11K
:4fzWLTxo
#543 [ぷ。様エブリディ]
関係のない俺でさえ、イラっとくるほど だった。
まぁそれでなくても多感な年頃だったか ら、毎日イライラしてたけど。
「あの子だろ?東京から来っていう美人 な転校生…」
「えー、よく見えねー!こっち向かない かなー」
今日もまた、廊下から噂をしている声が 聞こえる。
チラッと見てみると3年の男達だった。
:13/04/28 04:42
:ISW11K
:4fzWLTxo
#544 [ぷ。様エブリディ]
不憫に感じた俺は、ずっと下を向いてい る隣の席の転校生に目をむける。
すると…。
:13/04/28 04:42
:ISW11K
:4fzWLTxo
#545 [ぷ。様エブリディ]
「――チッ」
うつむいた転校生から舌打ちが聞こえ た。
…え…?
:13/04/28 04:43
:ISW11K
:4fzWLTxo
#546 [ぷ。様エブリディ]
その響いた音は一瞬にして、周囲にいた クラスメート達を黙らせた。
たぶんみんなの頭の中では
“いま舌打ちした? この美人で大人しそうな転校生が?”
といった疑問が行き来しているはず。
俺もその一人。
確かに愛想はなさそうだけど、ただの中 学生の女の子が先輩に対して舌打ちする とは思えなかった。
でも転校生は席を立ち、
みんなの疑問を証明するかのように3年 の所へ詰め寄った。
そして、一喝。
「来んなよ、うぜぇ!!」
:13/04/28 04:44
:ISW11K
:4fzWLTxo
#547 [ぷ。様エブリディ]
‥キッツ〜〜〜‥‥。
転校生は想像通り…いやそれ以上に、気 性の荒い人間だった。
:13/04/28 04:45
:ISW11K
:4fzWLTxo
#548 [ぷ。様エブリディ]
「俺やっぱり、篠原いいや…パス」
トイレの会議に参加していた奴が、小声 で言った。
「俺も〜」
「俺も、いいや〜」
次々と脱落していく。このゲームを考え た主催者までも。
そしてこの一件以来、クラスのみんなは 篠原を遠巻きに見るようになってしまっ た。
:13/04/28 04:46
:ISW11K
:4fzWLTxo
#549 [ぷ。様エブリディ]
「なんか怖ぇよな、すましてるし」
「近寄りがたい〜」
毎日のように耳にする、篠原を非難する 声。
…まあ、無理もない。
あんな女、女じゃない。
だけど3年に向かってストレートに反発 した篠原は、見ててスカッとしたなぁ。
:13/04/28 04:47
:ISW11K
:4fzWLTxo
#550 [ぷ。様エブリディ]
女って、もっとうじうじした生き物だと 思ってたのに。
篠原は、違うんだな。
俺だけはなぜか、みんなとは逆で高感度 が上がった。
<
:13/04/28 04:48
:ISW11K
:4fzWLTxo
#551 [ぷ。様エブリディ]
こんなタイミングで興味を持った俺は、 思い切って篠原に話し掛ける事にした。
10分休憩の時、
いつもなら仲のいい奴の所へ行くけど、 俺は席から離れなかった。
「純也ぁ〜トイル行くべ」
だけどタイミング悪く、親友のサトルが 声をかけてきた。
「俺行かん、トイレぐらい一人で行け」
:13/04/28 04:48
:ISW11K
:4fzWLTxo
#552 [ぷ。様エブリディ]
そっけなく言って手で追い払うと、サト ルはブツブツ文句を言いながら教室を出 て行った。
隣の席の篠原は、休み時間だというのに 誰と話す事なく一人で教科書を開いて る。
「なぁ、東京ってどんなとこ?」
:13/04/28 04:49
:ISW11K
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#553 [ぷ。様エブリディ]
顔だけ篠原の方を向き、唐突に話しかけ てみた。
言葉を交わすのは、何だかんだでこれが 初めて。
篠原は突然話し掛けられた事に驚いたの か、教科書を持つ手がピクッと動いた。
そしてゆっくりと俺の方に顔を向ける。
:13/04/28 04:55
:ISW11K
:4fzWLTxo
#554 [ぷ。様エブリディ]
やっぱり、美人。
一瞬息が詰まる。
「アンタ、東京に興味あるの?」
篠原は無表情のまま、そう尋ねてきた。
“アンタ”か…。まぁいいけど。
「んー、まぁ少し?」
すると篠原は視線を教科書に戻し、少し 遠い目になった。
「…東京はいいよ、何でもあって、ない ものはない。あたし出来る事なら戻りた い位だし」
:13/04/28 04:56
:ISW11K
:4fzWLTxo
#555 [ぷ。様エブリディ]
「‥‥ふぅん」
なるほどな、篠原は嫌々引越して来たっ てわけか。
おそらく親の転勤か何かだと思うけど、 強制的にこの学校に通わされてる訳だ。
「だいたいさ、」
篠原は皮肉混じりに笑う。
「この町、ツタヤすらなくない?」
少し…いや、かなりバカにしたような発 言。
:13/04/28 04:56
:ISW11K
:4fzWLTxo
#556 [ぷ。様エブリディ]
「…ハ?あるよ? 隣町に行けば」
レンタルのみの、ちっさいのがな!
沸々と湧き上がる怒りをこらえてそう言 うと、篠原は鼻で笑った。
「うっそ、ありえな……」
:13/04/28 04:57
:ISW11K
:4fzWLTxo
#557 [ぷ。様エブリディ]
ムカつく。
その態度に、さすがの俺も黙っていられ なくなった。
「お前さぁ、そうやってバカにしてるけ ど、お前だってもうこの町の住民で、こ の学校の生徒な訳だろ?」
少し威圧的に言うと、篠原は明らかに ムッとした顔になった。
それでも俺は口を閉じない。
「さっさと気持ち切り替えろよ。この町 だって東京にはない良さがあんだから… 」
:13/04/28 04:57
:ISW11K
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#558 [ぷ。様エブリディ]
そう言いながら,“あったけ?”と、疑問が 浮かんだ。
その結果、
「‥‥とか言いつつ、俺もこの町の良さ なんて分かんねぇけど」
と、余計な言葉を付け足してしまった。
締まりのない言葉。
篠原を前向きにしようと思ったのに、結 局はまた振り出しに戻しただけだし。
何やってんだか、俺。
退散、退散。
自分のふがいなさが嫌になり、さっさと 席を立つ。
:13/04/28 04:58
:ISW11K
:4fzWLTxo
#559 [ぷ。様エブリディ]
教室を出ると、待っていたかのようにサ トルが立っていた。
仁王立ちして、なぜか俺を睨んでいる。
「サト…」
呼びかけようとすると、サトルは俺の首 にガッと手を回してきた。
「わ、」
「見たぞ、お前!抜けがけしやがっ て!」
サトルはそう怒鳴って、容赦なく俺の首 を絞め上げた。
:13/04/28 04:59
:ISW11K
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#560 [ぷ。様エブリディ]
どうやら俺と篠原のやりとりを見ていた らしいけど、嫉妬される程仲良く喋った 覚えはない。
「‥んだよ!羨ましいんならお前も話し かけてみろよ!」
とっさに出た言葉だけど、俺は知ってい る。
こいつは気軽に女子と話すタイプじゃな い。
だからこそ余計に悔しいんだと思う。
サトルはやっと俺の首から手を離したと 思うと、
「べつに羨ましくなんかねぇよ、ば〜 か」
と、吐き捨て、教室に戻っていった。
:13/04/28 05:00
:ISW11K
:4fzWLTxo
#561 [ぷ。様エブリディ]
俺はその後ろ姿を、首を押さえながら眺 める。
「なんなんだよ…!?」
てか“ば〜か”って…。
ガキか、あいつは。
マジで意味分っかんねぇし…。
:13/04/28 05:01
:ISW11K
:4fzWLTxo
#562 [ぷ。様エブリディ]
篠原と初めて口をきいた、次の日の事。
「‥あ、教科書忘れちゃった‥」
授業が始まる1分前。
篠原は鞄の中を眺めながら、気まずそう に呟いた。
どうやら次の授業に使う教科書を、家に 置いてきてしまったらしい。
忘れ物なんてしなさそうなタイプなの に…。
まぁ所詮人間だしな。
「俺の見ればいいよ」
そう言って、篠原の返事も待たずに机を 寄せる。
:13/04/28 05:01
:ISW11K
:4fzWLTxo
#563 [ぷ。様エブリディ]
てっきりまた皮肉な事を言われると思い きや、
篠原は
「ありがとう」
と素直に言って笑った。
初めて見せたその笑顔に、不覚にもド キッとしてしまう。
「…別に」
心の動揺を隠そうとしたら、俺のほうが 皮肉っぽくなってしまった。
だって篠原の笑顔がめちゃくちゃ可愛い かったから。
:13/04/28 05:06
:ISW11K
:4fzWLTxo
#564 [ぷ。様エブリディ]
普段はつり目なのに、笑うと目尻が下 がって、真逆の印象になる。
笑った方が断然いい。
まぁこんなダサい事、口には出来ないけ ど…。
でも、普段ももっと笑えばいいの に‥‥。
:13/04/28 05:08
:ISW11K
:4fzWLTxo
#565 [ぷ。様エブリディ]
だけどそんな心配は不要だったみたい だ。
しばらくすると篠原は人が変わったよう によく笑うようになった。
転校してきてから約2週間。
どうやらクラスに馴染めるようになった らしい。
よく笑い、みんなの脳内にある“無愛想な 篠原”のイメージは一掃された。
それどころか、
“誰が篠原と付き合えるか” という賭けが復活したほどだった。
それは前回よりも真剣さが増し、どいつ もこいつも目がギラついている。
:13/04/28 05:09
:ISW11K
:4fzWLTxo
#566 [ぷ。様エブリディ]
なんとなく、俺はその賭けに乗る気にな れなかった。
どうせみんな「落とす!」なんて口ばっ かだろうし。
それに急に手の平返したりして、調子良 すぎだろ。
そして実際問題、行動に移している奴な んて誰一人いなかった。
みんなによると、
「やっぱり篠原はどこか近寄り難い雰囲 気がある」らしい。
…そうかな?
俺はもう全然平気だけど。
:13/04/28 05:11
:ISW11K
:4fzWLTxo
#567 [ぷ。様エブリディ]
「寺岡んちって、お寺さんなの?」
授業中、篠原がこんな事を聞いてきた。
「寺?違うけど、何で?」
「だって名字に“寺”がつくじゃん。家がお 寺さんだからじゃないの?」
篠原はたまに、すっとぼけた事を言う。
一体こいつのどこが“近寄り難い雰囲気”の 人間なんだ?と、俺は疑問に思う。
「関係ないだろ。うちなんて花屋して るっつーの」
そう言うと、篠原は小さく吹き出して 笑った。
「うそ〜、可愛い〜!」
バカにしたように笑う篠原に、ついムッ としてしまう。
:13/04/28 05:13
:ISW11K
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#568 [ぷ。様エブリディ]
「ムっカつく、笑うなよな〜!つか篠原 さぁ、いい加減教科書忘れるクセなおせ よ」
この日も篠原は英語の教科書を持ってい なかった。
またいつもの如く、机を合わせて俺が教 科書を見せている。
すると篠原は言い訳じみた事を口にす る。
「違うの、あたしは寺岡と違って家で予 習するからさぁ〜。だからいつも置いて きちゃうの」しかも言い訳の内容が、いちいちムカつ く。
こないだ少しでも可愛いって思った自分 に腹が立つ。
:13/04/28 05:14
:ISW11K
:4fzWLTxo
#569 [ぷ。様エブリディ]
「だからって、何で毎回忘れられるんだ よ!おかしくねぇ?」
つい口を大きく開けて喋ると、すかさず 先生が注意してきた。
「コラそこ、喋らない!」
俺らは慌てて口を閉じ、反省したふりを する。
最悪だ、篠原のせいで…。
恨みを込めて篠原を見ると、一瞬目が 合った。
篠原はすぐに目を反らし、シャーペンを 持って俺の教科書に手を伸ばした。
:13/04/28 05:15
:ISW11K
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#570 [ぷ。様エブリディ]
何する気だ?コイツ…。
俺は大人しく篠原の行動を見ていると、 何やら教科書に文字を書き込んでいる様 子。
そして書き終わった篠原は“見ろ”と言わん ばかりに俺の方へ教科書を滑らせてき た。
…なんだ?
:13/04/28 05:18
:ISW11K
:4fzWLTxo
#571 [ぷ。様エブリディ]
頬杖をついたまま、目で文字を追う。
“お まえのせいだ”
ハァ――!?
…やっぱり、
超ムカつく、この女…。
:13/04/28 05:19
:ISW11K
:4fzWLTxo
#572 [ぷ。様エブリディ]
親の顔が見てみたい。
どうやったらこんな生意気な女に育てら れるのか。
きっと親もひねくれてるに違いない。
その日の放課後。
篠原との一件を引きずっている俺は、い まだにむしゃくしゃしていた。
それでもいつも通り、仲間達と学校前の 商店街に足を運んだ。
俺は陸上部を半年で辞めて以来、放課後 は毎日ここで 過ごしている。
:13/04/28 05:20
:ISW11K
:4fzWLTxo
#573 [ぷ。様エブリディ]
「あ〜あっ!賭けは純也の勝ちだな〜」
突然、同じクラスの奴が俺にそう言って きた。
「は?賭け?」
一体なんの事やら。
意味の分からない俺は首を傾げる。
「篠原だよ、しーのーはーら! あいつ 絶対純也の事好きだよなぁ!」
そいつが大きな声で言うと、みんなは一 斉に食い付いてきた。
:13/04/28 05:21
:ISW11K
:4fzWLTxo
#574 [ぷ。様エブリディ]
「俺もそれ思った!なんか純也にだけ話 すじゃん、篠原って。他の奴らには挨拶 すらしねぇのに」
「本当ズルイよな〜純也ばっかりいつも モテて。2組のレイカちゃんも純也の事 好きって噂だし!」
みんなは勝手に言い合った後、ギロッと 鋭い視線を俺に向けてきた。
「…んだよ!?」
:13/04/28 05:22
:ISW11K
:4fzWLTxo
#575 [ぷ。様エブリディ]
突き刺さるような視線に、たじろぎなが ら小さく反発する。
と、サトルが背後からプロレスの技をか けてきた。
「純也ぁーー!お前は篠原を取るの か!?それともレイカちゃんを取るの か!?」
またサトルが始まった、と思った。
こいつは基本的に力の加減を知らないか ら怖い。
:13/04/28 05:23
:ISW11K
:4fzWLTxo
#576 [ぷ。様エブリディ]
容赦なく締め上げられた首が、苦しい。
「ちょ… 痛ぇってマジで!!」
何とかサトルの腕からすり抜けた俺は、 続けて口を開く。
「つうか誰だよ、“レイカちゃん”って!」
:13/04/28 05:24
:ISW11K
:4fzWLTxo
#577 [ぷ。様エブリディ]
初めて聞いたような知らない名前。
絶対ただのデマだし。
レイカちゃんを知らない俺を、みんなは 信じられないって顔で見た。
そして仲間の一人が口を開く。
「おま…っ何で知らねーの!?」
「何でって…。そんな有名人なわけ?」
「まぁ、ある意味? でも見りゃ絶対分 かるよ。すげぇ胸デカイから」
………。
「そんなでけーの?」
「学年一ですから」
:13/04/28 05:25
:ISW11K
:4fzWLTxo
#578 [ぷ。様エブリディ]
「ふぅ〜ん、じゃ俺“レイカちゃん”にし よっ」
冗談でそう言うと、案の定みんなは一斉 にブーイングしてきた。
もう相手にしてられない俺は、無視して サイダーを口に含む。
すっかりぬるくなった炭酸が喉ではじけ た。
そういえばもう5月なんだっけ。
5月って事は篠原が引越してきて、もう 一ヶ月が経ったのか…。
なんだかんだであいつの隣は楽しいか ら、日が経つのが早く感じる。
:13/04/28 05:26
:ISW11K
:4fzWLTxo
#579 [ぷ。様エブリディ]
その2日後、驚く事が起きた。
なんと例の“レイカちゃん”が俺に会いに教 室まで来たんだ。
大きな胸を揺らして。
「寺岡くーん!」
呼ばれて振り返ると、見るからに安っぽ い派手な女が、ドアの所で手を振ってい る。
―…あ、あいつ知ってる!
男好きで有名な奴じゃん。
ってか…あれがレイカちゃんかよ。
マジ無理。
:13/04/28 05:28
:ISW11K
:4fzWLTxo
#580 [ぷ。様エブリディ]
「おい、純也!レイカちゃんが呼んでる ぞ!?」
聞こえないふりをしていたのに、サトル がわざわざ呼びに来た。
「……知ってる」
重い腰をあげ、席を立つ。
前までの俺は身構える女より、ちょっと 馴れ馴れしい女の方が丁度良かった。
入り込みやすいし。
だけど、なんでか今は生理的に受け付け ねぇな…。
:13/04/28 05:30
:ISW11K
:4fzWLTxo
#581 [ぷ。様エブリディ]
ふと、こないだ仲間に言われた言葉を思 い出した。
“2組のレイカちゃんも 純也の事好きって噂だし”
その噂が本当なら、レイカちゃんって女 はかなり物好きだな。
口も利いた事のない他人をわざわざ好き になるんだもんな。
「何か用っすか?」
すっかり興味のなくなった俺は、無愛想 に言った。
:13/04/28 05:31
:ISW11K
:4fzWLTxo
#582 [ぷ。様エブリディ]
一方のレイカちゃんは人懐っこい笑顔 で、俺を廊下まで引っ張り出す。
「ねぇ、友達がゆってたんだけど〜こな いだあたしの噂してたってホント〜?」
「噂?」
…え? 何の事だ?
「サトル君たちと商店街で話してたで しょ?」
「あぁ…」
そういえば…。一瞬だけ話題にあがっ たっけ。
その時たまたまレイカちゃんの友達が近 くにいて、報告したって事か?
だから何?って感じだけど…。
:13/04/28 05:32
:ISW11K
:4fzWLTxo
#583 [ぷ。様エブリディ]
「あのさ、寺岡くんさえよければ今日 いっしょに帰らない?」
なぜかこの流れでレイカちゃんが誘って きた。
帰る? 一緒に?
…何で?
「無理だわ俺、サトルらと帰るし」
:13/04/28 05:33
:ISW11K
:4fzWLTxo
#584 [ぷ。様エブリディ]
何で俺んちの場所、知ってるわけ…?
怖いから理由聞きたくないけど…。
「でも俺、レイカちゃんと一緒に帰る理 由が分かんねぇし…。だからごめん な?」
俺は“ごめん”と謝った事で、話に区切りを つけたつもりでいた。
:13/04/28 05:38
:ISW11K
:4fzWLTxo
#585 [ぷ。様エブリディ]
けれどレイカちゃんは、下の名前で呼ば れた事に可能性を感じたのか、更に押し てきた。
――やべぇ!
と後悔したのもつかの間…
口を挟む隙を与えないくらい、彼女はマ シンガンのように喋り続けた。
マジメに 勘弁して 。
次の授業のチャイムが鳴ると、レイカ ちゃんは大声で
「じゃあ放課後ねっ!」
:13/04/28 05:40
:ISW11K
:4fzWLTxo
#586 [ぷ。様エブリディ]
喋り続けていたのは向こうなのに、なぜ か俺がグッタリしてしまった…。
あぁ…なんか
面倒くせぇ‥。
<
:13/04/28 05:40
:ISW11K
:4fzWLTxo
#587 [ぷ。様エブリディ]
何で女ってあんなによく喋んの?
何で俺の迷惑とか少しも考えられねぇ の?
それが女っていう生き物なら、俺一生彼 女いらねぇかも。
自分の席に腰を下ろし、ふぅーっと深呼 吸をする。
なんか一気に疲れたな…。
それよりあの女の様子じゃ、放課後迎え に来るんだろうな…。
正直だりぃな。
:13/04/28 05:41
:ISW11K
:4fzWLTxo
#588 [ぷ。様エブリディ]
すると、さっきのやり取りを見ていたク ラスの男共が、嫉妬の視線を俺に集中さ せた。
―…げ。
てゆーか、羨ましいんなら変わってくれ よ。
そもそも外見にばかり気を取られた男 が、自信過剰なバカ女を作り出すんだ よ。
レイカちゃんの、あの
“アタシを断る男なんていないわ”
的な勘違いは、ここにいる奴らがちやほ やするからいけないんだ。
:13/04/28 05:42
:ISW11K
:4fzWLTxo
#589 [ぷ。様エブリディ]
俺は視線を避けて、教科書を開く。
するとこのあいだ篠原に書かれた“おまえ のせいだ”という落書きが目についた。
そういえば次って、篠原がいつも教科書 を忘れてくる英語の授業じゃん。
いつもなら「見せて」って言ってくるの に‥‥。
言わないって事は、今日こそ持ってきた のか…?
チラッと隣の様子を伺うと、篠原の机の 上にはノートしか乗っていなかった。
:13/04/28 05:42
:ISW11K
:4fzWLTxo
#590 [ぷ。様エブリディ]
何だよ、 今日も忘れてんじゃん。
何で何も言ってこないんだ?
気になった俺は、わざとらしく教科書を ペラペラとめくりながら横目で篠原を見 る。
篠原は机の上で腕を組んで、下を向いて いる。
…寝てんのか?
ジッと観察していると、あるものが俺の 目に飛び込んできた。
篠原の左手首に、青紫色のいびつな模 様。
なんだ?これ…。
:13/04/28 05:43
:ISW11K
:4fzWLTxo
#591 [ぷ。様エブリディ]
教科書を置き、覗き込む。
ぶつけたかのような濃い跡…。
「…アザ?」
そう言うと、篠原の手がピクッと反応し た。
「――えっ!?」
バッと顔を上げると同時に、模様は右手 で隠れた。
「篠原、手首に跡出来てねぇ?ほらこ こ…」
身を乗り出し、何気なく左手部分に手を 伸ばすと…
「――やめてよッ!!」
バチン、と音がしたあと、左手に鈍い痛 みが走った。
:13/04/28 05:44
:ISW11K
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#592 [ぷ。様エブリディ]
クラスのみんなは声と音に反応して、視 線をこちらに寄せる。
「いってぇ…何すんだよ、お前」
篠原は口をへの字に歪ませて、ぷいっと 顔を反らした。
そしてまた机の上で手を組む。
:13/04/28 05:47
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#593 [ぷ。様エブリディ]
篠原の様子がおかしい。
俺なんかしたっけ?
「…篠原ぁ〜??」
ご機嫌をとるように呼びかけても、篠原 はぶすっとしたまま、返事をしようとし ない。
何キレてんだ?
レイカちゃんといい篠原といい、女って 本当意味分かんねぇし!
「つーか教科書は!?見なくていい の!?」
教科書をちらつかせる。
:13/04/28 05:48
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#594 [ぷ。様エブリディ]
「‥‥」
篠原の反応はない。
「い〜のか〜?先生もう来るよ〜?」
そう言うと、篠原はハァッとため息をつ き、無言で机を寄せてきた。
‥なんなんだよ、コイツは‥。
先生が来て授業が始まっても、篠原は ずっと不機嫌なままだった。
何もしていないのにキレられるのは、腹 の虫さんがおさまらない。
俺は合わせた机の真ん中にある教科書 に、文字を殴り書きした。
:13/04/28 05:49
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#595 [ぷ。様エブリディ]
【なにキレてんだよ!?】
乱暴に書いた文字を見せると、篠原は余 計ムッとした表情になった。
そして俺の手からシャーペンを奪い、文 字の下に返事を書き出した。
:13/04/28 05:50
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#596 [ぷ。様エブリディ]
篠原の書いた返事は…
【キレてねーよ!】
の、一言だった。
‥明らかに怒ってんじゃねぇかよ‥。
その文字を書き終えた篠原は、シャーペ ンをバンッと教科書の上に置いた。
ていうか…篠原がこんなに怒るのは久し ぶりじゃねぇ?
3年に向かって『うぜぇんだよ』と言っ た時以来だ。
:13/04/28 05:54
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#597 [ぷ。様エブリディ]
もしかしたら俺は自分の知らない間に、 怒らすような事をしたのかもしれない。
身に覚えはないけど。
叩きつけられたシャーペンを手に、俺は また質問を書く。
【オレなんかした‥?】
さっきよりも勢いは弱く、明らかに下手 だ。
篠原から返ってきた返事は…
【ウザイ、ムカつく!】
これまた痛いものだった。
:13/04/28 05:55
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#598 [ぷ。様エブリディ]
ウザイって… 生まれて初めて言われたし…。
引けなくなった俺は懲りずにまた質問す る。
【だから質問の答えになってねーよ 俺なんかしたか?】
強調するように、
【俺なんかしたか?】
の文字に、何重もの下線を引いた。
その文字をじっと眺める篠原。
しばらくしてやっと本音を書き始める。
:13/04/28 05:56
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#599 [ぷ。様エブリディ]
【デレデレしやがって みっともな い ムカつく 巨乳ずき あんたなんか 】
まだ続きそうな文字の途中で、俺は シャーペンを奪った。
篠原はきっと、さっきの俺とレイカちゃ んのやり取りの事を言ってるんだ。
冗談じゃねぇ。
俺がいつ、デレデレしたっつーんだよ?
【ふざけんな、あんな女キョーミねぇ よ!】
:13/04/28 05:56
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#600 [ぷ。様エブリディ]
怒りをストレートに文字にする。
篠原は俺を、他の男達と同じだと思って んのか?
そう思うと胸がムカムカして吐き気がす る。
:13/04/28 05:57
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#601 [ぷ。様エブリディ]
篠原は文字と俺を交互に見る。
そして教科書にゆっくりと文字を書き始 めた。
【本当に?】
急に大人しくなった篠原の文字。
…ん?
まさかとは思うけど、
ヤキモチやいてたのか?
:13/04/28 06:00
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#602 [ぷ。様エブリディ]
いや、まさかな‥‥。
そう思いつつも、冗談半分で聞いてみ る。
【ヤキモチ?】
篠原の近くにシャーペンを置き、答えを 待つ。
――が、しかし、篠原はシャーペンを手 にしようとしない。
次は篠原の番なのに…。
頭をポリポリとかきながら、篠原の方を 見る。
:13/04/28 06:00
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#603 [ぷ。様エブリディ]
するとそこには、顔を真っ赤に染める篠 原の姿があった。
――えっ!
耳まで赤くする篠原に、俺は目を疑って 何度もまばたきをした。
え、え、 ひょっとして当たり―‥?
呆然としていると、篠原は赤い顔を見ら れた事に気づき、また文字を書く。
【わるい!?】
:13/04/28 06:06
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#604 [ぷ。様エブリディ]
強い言葉とは裏腹に、篠原は恥ずかしそ うにうつむいた。
‥マジかよ‥。
感情が追いつかない中、それでもシャー ペンを持って文字を書く。
【おまえってオレの事好きなの?】
まさかな…、
自分で書いた自信過剰な言葉に、少しげ んなりした。
これじゃあ、俺もレイカちゃんと変わん ねぇじゃん…。
だけど返ってきた言葉は…、
:13/04/28 06:08
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#605 [ぷ。様エブリディ]
【好きだよ】
:13/04/28 06:08
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#606 [ぷ。様エブリディ]
そういえば俺は、考えるまでもなく“恋”っ てやつをした事がない。
だからどういう気持ちが“好き”なのかサッ パリ分からない。
だけど心の奥底からじわじわと込み上げ る、このもどかしい感情が恋というな ら、
俺は間違いなく、篠原が好きなんだと 思った。
【好きだよ】
篠原がこの文字を書いてから、10分が 経過…。
俺は文字を深く見つめ、 一方の篠原は顔を伏せてしまった。
:13/04/28 06:11
:ISW11K
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#607 [ぷ。様エブリディ]
俺は文字の下に新しく文字を書き、篠原 の肩を叩く。
そしてシャーペンで教科書の文字をトン トン、とさした。
【今日一緒にかえろ】
それを見ると、篠原はやっと俺の顔を見 てくれた。
赤い頬 涙ぐんだ瞳
噛み締めたままの唇。
いかに緊張しているかが分かる。
そして自信過剰なんかじゃなく、本当に 好かれているんだと気付かされる。
:13/04/28 06:12
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#608 [ぷ。様エブリディ]
俺たちの間に、こんな空気が流れるのは 始めてだった。
今までは口喧嘩ばかりしてたから、
今更照れるっていうか、気恥ずかしいっ ていうか…。
帰り道気まずくなったら嫌だな。
そんな心配が頭をよぎったけど、肝心の 返事はまだ貰えてない。
篠原は顔を赤くして黙ったままだ。
…もしかしてダメなのか?
不安になって、「ダメ?」と口パクで聞 くと、篠原はハッと我に返って首を横に 振った。
…なんだ、良かった。
ホッとして微笑むと、篠原もつられて笑 顔になった。
:13/04/28 06:13
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