春風の誘い
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#1 [めぐる] 09/02/26 23:16
#3 [めぐる]
桜が舞う季節。
あたしは、走っていた。
「待ってー!」
必死で追いかけるも虚しく
あたしから逃げるように
バスは去って行く。
完全に遅刻だ……。
:09/02/27 00:17
:W53H
:l3pcUa62
#4 [めぐる]
歩いたら20分。
走ったら15分。
バスだったら8分。
学校までの道のりはそんなもの。
現在8時15分。
神崎 詩羽(かんざき しう)、
新学期早々大ピンチ!
:09/02/27 00:22
:W53H
:l3pcUa62
#5 [めぐる]
……なんて、バスが来ない
バス停で脳内解説をしていたら
自転車が颯爽と隣を
駆けて行った。
同じ高校の制服だ。
自転車だったら、10分。
二ケツしてほしいな……
という考えがよぎったが
知り合いでもないから
諦めて歩いて行くことにした。
:09/02/27 00:30
:W53H
:l3pcUa62
#6 [めぐる]
ガラ。
はじめて見る顔、馴染みの顔、
新しいクラスメイト全員が
あたしに目を向けた。
「神崎。新学期早々遅刻とは感心できないな」
「すいません」
「名前の順だから、そこ、はやく座れ」
先生の指差した席に座る。
みんなの視線が刺さる。
恥ずかしい、恥ずかしい。
:09/02/27 00:37
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#7 [めぐる]
「詩羽おっそい!」
「ゆり〜!」
1年のとき同じクラスだった
ゆりが、後ろの席から
声をかけてきた。
「ゆり一緒のクラスかぁ、よかったぁ」
「去年一緒の子、少ないよね? あたし詩羽来るのすごい待ってたんだから!」
「ごめんね、バス乗り遅れちゃってさ」
:09/02/27 00:47
:W53H
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#8 [めぐる]
始業式の為体育館に移動する時
隣の席だった男子に
声をかけられた。
「バス停の子でしょ」
そう言って、にこっと笑う。
その言葉に、あたしの頭は
ハテナがいっぱい。
彼はそんなあたしの頭の中を
読み取ったのか、続ける。
「バス停でフリーズしてた子でしょ?」
「え、あぁ、そうかも」
「俺、チャリで通り過ぎたんだけど、今思えば乗せてやればよかったなって」
怪しい人オーラ満点だった彼が
その瞬間、とても良い人に
見えてきた。
:09/02/27 00:59
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:l3pcUa62
#9 [めぐる]
「ってもう言っても遅いか!」
わはは、と自己解決したようで
彼は行ってしまった。
「なんだ、あの人……」
「なに、今の」
今まで後ろで黙っていたゆりが
肩に手を置いて訊いた。
「わかんない」
「でもあの人詩羽のタイプじゃない? 明るい、爽やか、坊主だし野球部っぽい」
ゆりがニヤリと笑う。
そう。ずばり、その通り。
:09/02/27 01:08
:W53H
:l3pcUa62
#10 [めぐる]
身長は180ありそう。
見た目程よい体格。
そしてあたしは球児がすきだ。
それはもうどんぴしゃって感じで。どんぴしゃってまだ使えるの?って感じだけどそんな感じで。
でも一目惚れなんかしない。
あたしは、そういうタイプじゃ
ないから。
:09/02/27 01:16
:W53H
:l3pcUa62
#11 [めぐる]
始業式が終わり、教室へ戻る。
自己紹介で、彼の名前は久賀 健人(くが けんと)、やはり野球部だということがわかった。
ついでに、彼の前の木村くんと仲が良いこともわかった。
はじめて同じクラスになった
女の子と少し喋り、ゆりと二人で帰った。
その途中、ゆりの家に寄る。
もう日課と言っても過言ではない。帰宅部で暇なあたしたちはどちらかの家でまったりする。
ゆりの家の方が学校から近いので必然的にゆりの家に行く回数の方が多いのだ。
:09/02/27 01:43
:W53H
:l3pcUa62
#12 [めぐる]
「詩羽、彼氏作んないの?」
「作んないんじゃなくてできないんだよ、お嬢さん」
「その気になればできると思うけどなぁ」
「ゆりは、ね」
その気になればできるのはゆりだからだ。
小さい顔に大きい目、小柄だけどスタイルも良い。
男が一番すきそうなタイプ。
少々性格に難ありだけど。
「そういうけどさぁ、詩羽だって顔は可愛いんだからもっと自信持てば?」
「え」
「なによ」
「ゆりがそんなこと言うなんて、なんかキモイ……」
「誉めてやってんのに!」
ぎゃははと笑い声が響く。
こんな瞬間が、高校生って感じがする。
:09/02/27 02:01
:W53H
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