黒猫の棲むところ
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#101 [イリア]


「ふんだ、ふんだ…
よくもまぁこんな綺麗な顔して
カスだのてめぇだの
言えたもんだよ…
お客さんが君の本性知ったら
僕らの劇団終わりだね」


「…てめー」

⏰:09/03/22 19:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#102 [イリア]


「あーはい!ごめんなさい★
えーではさっそく、お嬢さん!」


「あ、はい!」


二人のやり取りを
口をポカンと開けて見ていた私は、
ハッと意識を戻す。

⏰:09/03/22 19:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#103 [イリア]


狐「いやぁさっきは怖かったね!
あれは悪い妖だから気をつけてね!
あ、そうそう、僕の名前は狐。
アスタリスクっていう劇団の
団長をやらせてもらってる。」


七「…アスタリスク…?」

さっきの鬼も、そんなこと…

⏰:09/03/22 19:35 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#104 [イリア]


狐「そう、アスタリスク。
聞いたことあるかな?
僕が言うのもアレだけど、
結構有名なんだよねー!!」


七「…あ…すいません…
私なんか…自分の名前くらいしか
覚えてなくて…ってことに、
今さっき気がついて…」

⏰:09/03/22 19:36 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#105 [イリア]




狐「………へぇ…?」


そう言うと狐は
さっきまでのちゃらけた感じとは
真逆の笑みで七衣を見た。

⏰:09/03/22 19:36 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#106 [イリア]


七「…狐さん…?」


狐「…ん?いや何でもないよ!
ごめんごめん!
いや、なに、アレさ!
僕らの劇団を知らないって
いうもんだから、
ちーとばかりショックをね…」

⏰:09/03/22 19:37 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#107 [イリア]


七「…ごめんなさい…」


狐「いや何!
記憶喪失というなら
いた仕方ない!!」


七「…はぁ」

⏰:09/03/22 19:37 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#108 [イリア]



狐「そんな七衣ちゃんに
軽ぅ〜く説明するとだね、
アスタリスク劇団というのは
巷じゃ人気、まぁ色んな意味でね!

人間に言わせると
イケメン揃いの移動劇団、
妖に言わせると
裏切り者の殺戮奇術(サツリクキジュツ)、
アスタリスク劇団!」


⏰:09/03/22 19:38 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#109 [イリア]


七「裏切り者…?」


狐「うん、
さっきの鬼も言ってたけど
僕らは半妖。
普段は人間の姿でいるけど、
こうやって…」


そう言うと狐は、
左手で自分の頬に触れた。

⏰:09/03/22 19:39 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#110 [イリア]




ボンッ!

「キャッ?!
――……え?」


私の目の前にいたのは

⏰:09/03/22 19:41 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#111 [イリア]


七「…き、きつね…?」


狐はコクン、コクンと頷くと、
右手を自分の頬にあて、
またボンッ と人間の姿に戻った。

⏰:09/03/22 19:41 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#112 [イリア]


狐「まぁ、こんな感じ。
気持ちをこめて頬に触れると
僕らは元の姿に戻れる。」


七「…信じられない…でも…
…ってことは」


私は狐さんの横で
腕組みをしている少年に話しかけた。

⏰:09/03/22 19:42 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#113 [イリア]


「…あのときの…黒猫さん…?」


「………ふん」


黒猫が、鼻を小さく鳴らした。

⏰:09/03/22 19:43 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#114 [イリア]


狐「あ!そうそう!
ネコくんのこと、
助けてくれたんだってね!
いやぁ有難う!」


七「助けたなんて…
私別に何も…」

⏰:09/03/22 19:43 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#115 [イリア]


狐「いやいやいや!
川の水で血を清めて、
雨からも守ってくれたんだろ?

凄いよ君、
見ず知らずの半妖をさ!
ネコくんに話を聞いたときは
感動しすぎて鼻水が出たよ!
あ、もちろんその前に
涙も出てるよ?

さぁ、君の無垢(ムク)で
美しい心に乾杯!
流石ネコくんがスカウトしたいと
いうくらいだよ!!
マリア様と呼ばせてもらっても
いいかい?」

⏰:09/03/22 19:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#116 [イリア]


七「マリア様はちょっと…
っていうか、
川…雨…スカウト…?」


猫「あの川、俺たち妖にとって
怪我に何よりも効く薬なんだ。
あと妖は雨が苦手。
雨が降ってると
力があまり出せない。」

⏰:09/03/22 19:46 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#117 [イリア]


黒猫さんが答えてくれた。
いや、でもあなた
私が止めるのも聞かず、
雨の中飛び出して
いきましたよね…?

まぁ、それは言わないでおこ。

⏰:09/03/22 19:47 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#118 [イリア]


七「もう、怪我はいいんですか?」


猫「…あんたのお陰で、何とか。
もともと血は止まってたしな」


良かった…口には出さなかったが、
代わりに私は口元を緩めた。

⏰:09/03/22 19:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#119 [イリア]


狐「ちょっと、僕を置いて
ラブラブしないでくれる?」


猫「いつラブラブしたよ、あ?」


狐「またそんな
えげつない声出すぅー
もぉーネコくんったら
顔と声と性格が合ってないぃー

僕の劇団の花形俳優ってとこ、
もう少し自覚して
欲しいとこだよね、まったく」

⏰:09/03/22 19:50 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#120 [イリア]


>>115

続きになってしまった(゚д゚)

読んで下さってる方
もしいましたら
感想・アドバイスなど
頂けると嬉しいです(;_;)

⏰:09/03/22 19:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#121 [イリア]


猫「…狐…」

狐「コホン!
えー話が大分ズレましたが!
僕らアスタリスク劇団の主な仕事は
昼間は人間、たまに妖の
心のオアシスともなりえる
大人気!移動劇団!!」

⏰:09/03/22 19:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#122 [イリア]


七「…はぁ」


狐「しかし!もう一つの姿は
最近、罪なき人間を
襲うようになった
怖ぁ〜い妖を退治する
ハンター集団!

…さっきの、
ネコくんみたいにね♪」

⏰:09/03/22 19:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#123 [イリア]


七「…ハンター…」

狐「そう♪かっこいいでしょ★
って言っても、
悪い妖ばっかじゃないんだよ?
ちゃんと人間と共存しようと
努力してる妖もいる。」

⏰:09/03/23 13:51 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#124 [イリア]


七「…あの…それで…
さっきの鬼が言ってた、
アマハラ…?って、
何のことですか…?」


ピクッ


空気が変わる

狐さんからは
おちゃらけた笑みが消え、
黒猫さんは私から目をそらす。

⏰:09/03/23 13:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#125 [イリア]


七「…あの…?汗」


何か…聞いちゃいけない
ことだったかな?


でもでもでも!
鬼は間違いなく
私のことアマハラ一族だって…

⏰:09/03/23 13:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#126 [イリア]


七「あ、あの!
言いづらいことだったら
ごめんなさい!
でも私…さっきも言ったけど
自分のこと…何も覚えてなくて…」


猫「―……何も…?」


どもりながらも必死に言うと、
黒猫さんが、私に話しかけてきた。

⏰:09/03/23 13:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#127 [イリア]


七「何も!本当に何も!!
あ、名前と…あと、
日本語は一応喋れますけど!
なんていうか…どこに」

⏰:09/03/23 13:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#128 [イリア]



どこに


誰が



マ ッ テ ル ?



七「…どこに…行けばいいか…」

⏰:09/03/23 13:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#129 [イリア]


狐「―…ふぅ…ネコくん、
どう思う?本当にこの子、
雨原の子かい?」


猫「フフン、頭だけじゃなく、
ついに嗅覚まで
イカれちまったか、狐。

お前は匂わないのか?
この血は…」

⏰:09/03/23 13:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#130 [イリア]


黒猫さんは私の腕を掴み
自分のほうに寄せた。


七「キャッ!」



猫「――……間違いなく、
雨原の血だ」

⏰:09/03/23 13:55 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#131 [イリア]


そう言うと黒猫さんは
掴んでいた私の腕を舐め、
血を拭った。

⏰:09/03/23 13:55 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#132 [イリア]



七「――ッッ!!!!!!キ!!キャアアー!!!!///」


キ――ン……


あたり一面に
私の叫び声が轟(トドロ)く。

⏰:09/03/23 13:56 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#133 [イリア]


狐「―…120dB(デシベル)…笑」


猫「…煩(ウルサ)いな、何だよ?」


七「な、何だよじゃないですよ!
いま…いま…私の腕、
舐めたでしょっ?!」

⏰:09/03/23 13:56 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#134 [イリア]


猫「フフン、何あんた、
こんくらいで照れるわけ?
顔真っ赤だよ?」


七「な、な、な、
慣れて…ないもんで…」


猫「って、ことは」

⏰:09/03/23 13:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#135 [イリア]



グイッ


顎(アゴ)をもたれ、無理矢理顔を
近づけさせられる。


猫「―…誰かと唇を重ねたことは?」

⏰:09/03/23 13:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#136 [イリア]


七「なっ…////」


綺麗な顔がすぐ目の前にある。
何この人!慣れすぎでしょ!//


七「はなはなはな、離して下さい!」


猫「クス、いいよ」

⏰:09/03/23 13:58 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#137 [イリア]


笑うともっと妖艶…
何なのこの人、本当に男?//

⏰:09/03/23 13:58 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#138 [イリア]


狐「ちょっとちょっとネコくん。
本当にキスするかと思ったよー
駄目だよ?七衣ちゃんって
何もかも処女みたいだしさ?
優しくしなきゃ〜」


七「何もかもって…
てか、処女っ…?!//」

⏰:09/03/23 13:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#139 [イリア]


猫「何あんた?記憶がないくせに
処女とか、そういう言葉は
覚えてるんだ、ふーん。」


ニッコリ笑って
こっちを見る黒猫さん。
さ、さっきまでは
私から目を
そらしてたくせに…!!///

⏰:09/03/23 14:01 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#140 [イリア]


狐「はいはい、お二方、
そろそろ話を
元に戻しましょうかね、

うん、確かに七衣ちゃんからは
雨原一族の血の匂いがする。」


七「…アマハラ…」

⏰:09/03/23 14:01 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#141 [イリア]


狐「雨に、原っぱの原で、雨原。

一人一人が雨に関する
何かしらの力を持ってて…
さっきも話した通り、僕ら妖は
雨が大の苦手。

だからその力で雨雲なんか
呼ばれた日にゃ、
僕らなんかまったく
太刀打ちできないって訳。」

⏰:09/03/23 14:02 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#142 [イリア]


七「なんか…おとぎ話みたい」


猫「現実だけどね」


狐「そう、まさしく現実。
僕らが生きてる世界だ。
―…だから僕らは今まで」


雲が出る。
もう一雨きそうな曇天。

⏰:09/03/23 14:02 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#143 [イリア]



狐「――……雨原一族を、
見つけしだい…殺してきた」





え…

いま何て…

⏰:09/03/23 14:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#144 [イリア]


狐「大丈夫、まだ続きがあるんだ。

もう何百年も昔から、
妖と人間は、戦い続けてきた。

共存なんて無理だ。
妖を人間を喰らうし、
人間は妖を恐れ殺す。

…僕ら半妖は一応、
妖側として戦争に参加していた。」

⏰:09/03/23 14:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#145 [イリア]


七「………」

狐「ずっと…ずっと、ね?
そこで少しずつ、
頭角(トウカク)を表してきたのが
雨原一族。君の一族だ。」

⏰:09/03/23 14:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#146 [イリア]


七「私の…?」


狐「妖にとっての最大の弱点。
雨を呼ばれ、妖は一時期
本当に滅亡しかけた。だけど」


七「…だけど?」

⏰:09/03/23 14:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#147 [イリア]


狐「…あるとき急に、
雨原一族が妖側に言ったんだ。

【そちらで丁重に扱って頂けるなら
私達、雨原一族は妖側に立ちます】

…って、ね。」

⏰:09/03/23 14:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#148 [イリア]



ポツポツ…


少しずつ、雨が降り出す。
黒猫さん、狐さん
大丈夫なのかな?

⏰:09/03/23 14:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#149 [イリア]


狐「そうして、雨原一族は
僕らの君主になった。
……雨だ、場所を変えよう」


猫「…いや…」


七、狐「?」

⏰:09/03/23 14:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#150 [イリア]


猫「ここで、話してしまおう。
どちらにしろ早く話さないと
そろそろ麗(レイ)が気づく」


狐「麗ちゃん嗅覚いいもんねー
もうバレてるかも…で、
どこまで話したかな?
あ、そうそう。それで数十年は
うまくいってた。」

⏰:09/03/23 14:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


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