黒猫の棲むところ
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#431 [イリア]



浴室から出ると、
まだ猫さんの姿はなかった。

傷にしみそうで、
お湯には浸かってない。

猫さんと別れてから
まだ15分くらいなので
迎えはまだだろう。


⏰:09/03/27 12:31 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#432 [イリア]



七「勝手に外 出てていいかなー
でも猫さん迎えにきてくれるって
言ってたし……

……それにしても」


⏰:09/03/27 12:32 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#433 [イリア]



自分の着ている服を見る。
着てた服はボロボロだったので、
言われたとおり
置いてある服を借りた。

そこには、アスタリスク劇団☆!!と
大きな文字で書かれてある。


⏰:09/03/27 12:32 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#434 [イリア]



七「…恥ずかしいTシャツだな…
まぁ借りてるし文句は言えないけど」


壁に背をつけ、座りこむ。

ふと、さっきの麗さんを思い出した。


⏰:09/03/27 12:33 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#435 [イリア]



あの痣…舞台の練習でついたのかな?
だとしたら、あんまり
人に言わないほうがいいのかな…

余計なことして…


⏰:09/03/27 12:33 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#436 [イリア]



七「…これ以上、
嫌われたくないしなぁ…」


狼「誰にだ?」


七「誰って、麗さん―…」




――……ん?


⏰:09/03/27 12:33 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#437 [イリア]



上を見上げる。
金髪赤目の、知ってる顔。


七「―…ッッ?!!狼さん??!!」


慌てて立ち上がる。


⏰:09/03/27 12:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#438 [イリア]



狼「―…おい!新入り!!
お前声が大きいぞ!!

俺が何かしたと思われるではないか!」



――いや、狼さんのほうが、大きいし。


⏰:09/03/27 12:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#439 [イリア]



七「…あ、すいません…って、
何してるんですか?
ここ女湯の前ですよ?」


私が問う。

すると狼さんは
腕を組みかえながらこう言った。


⏰:09/03/27 12:35 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#440 [イリア]



狼「いや、何。
あのあと雨が降りそうだったから
すぐ麗をつれて帰ってきたんだ。
まだお前らが入り口で喋くってたから
裏口から入ったがな。

それで、麗はすぐ風呂に行ったんで
もうすぐ飯だし、迎えにきた。」


⏰:09/03/27 12:36 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#441 [イリア]



そう言うと狼さんは
ニカッと笑って、白い歯を覗かせる。


七「……本当に狼さんは、
麗さんが好きなんですねぇ」


狼「ふん!当たり前だ!!
あいつは俺にとっての
運命の人だからな!!」


⏰:09/03/27 12:36 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#442 [イリア]





―…いいなぁ。

こんなかっこ良くて、
一途な人に想われてる麗さんは
幸せものだと思う。


⏰:09/03/27 12:37 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#443 [イリア]



七「麗さん、綺麗ですもんね」


狼「そうだろうそうだろう??!!
まぁ俺は顔に惚れてるわけじゃ
ないけどな!!
あいつの人間性に惚れてる!!」


口もとがほころぶ。
狼さんて本当、真っ直ぐだ。


⏰:09/03/27 12:37 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#444 [イリア]



狼「―…ところで、さっきの。
まぁあんまり気にするなよ。
最近麗は…元気ないから」


そう言うと狼さんは
悲しそうな顔をした。


七「…元気がない?」


⏰:09/03/27 12:37 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#445 [イリア]



狼「あぁ、あいつ本当は
もっと笑う奴なんだ。
でも最近はまったく笑わないし、
食欲も少ない。…心配でな。

過保護かもしれんが、
そういうときは、
出来るだけ離れたくない。」


狼さんが意志ある強い瞳で私を見た。


⏰:09/03/27 12:39 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#446 [イリア]



狼「新入りも、
最初は大変かもしれんが
必ず仲良くなれる。

まぁ積極的に話しかけることだな!!」


⏰:09/03/27 12:39 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#447 [イリア]



狼さんが笑う。


……この人だったら、
麗さんの痣のこと知ってるかな?

もし知らないなら、
教えといたほうがいいよね。


⏰:09/03/27 12:39 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#448 [イリア]



七「――……あの、狼さん……」



麗「狼ッッ!!!!!!」


⏰:09/03/27 12:40 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#449 [イリア]



遠くのほうで声がした。

その声の持ち主は、ゆっくりと
私たちのほうに歩いてくる。


⏰:09/03/27 12:40 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#450 [イリア]



七「―…麗さん。」


狼「おぉ!何だ麗!!
もう風呂から出てたのか!!
迎えにきてたんだ、飯にしよう!!」


狼さんが満面の笑みで、
麗さんに話しかける。


⏰:09/03/27 12:40 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#451 [イリア]



麗「―…狐があんたを呼んでる。
明日からの舞台の台詞(セリフ)で
少し変更があったの。

すぐに裏テント前に来てって。」


⏰:09/03/27 12:41 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#452 [イリア]



狼「何?!またか!!!
舞台は明日だぞ!!
今更 台詞の変更とは、狐め…

では、先に行っとく!!
ちょうどいい、麗!!
新入りを飯場まで
案内してやってくれ!!

今日もいつも通り
川の近くの広場だ!!」


⏰:09/03/27 12:42 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#453 [イリア]



そう言って狼さんは
私をチラッと見て微笑むと
走ってテントの外に向かった。


⏰:09/03/27 12:43 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#454 [イリア]



私と麗さんを、仲良くさせようと
してくれてるのかな?

でも、猫さんが迎えにきてくれるし、
どうしよう…っていうか


⏰:09/03/27 12:43 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#455 [イリア]










―――……き、気まずい……汗


⏰:09/03/27 12:44 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#456 [イリア]



麗さんは一言も喋らない。

どうしようどうしよう。
私から喋っていいかな?
でも今さっき
私に話しかけるな!!って
怒鳴られたばっかだし……


⏰:09/03/27 12:44 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#457 [イリア]



試しに私は恐る恐る、
麗さんに話しかけてみた。


⏰:09/03/27 12:44 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#458 [イリア]



七「……あの…麗さん?

私は、猫さんが
迎えにきてくれるって言ってて…
入れ違いになったら困るし、
ここで待ちます…だから先に、
どうぞご飯に「喋ったか?」」


麗さんと私の声が重なる。


⏰:09/03/27 12:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#459 [イリア]



七「…は、はい?…何を…?」


麗「私の体の痣のこと、
狼に喋ったのか?」


⏰:09/03/27 12:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#460 [イリア]



いやそれは、喋ろうとしたら
麗さんがきたので…


七「…話してませんけど…」


麗「――…」


⏰:09/03/27 12:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#461 [イリア]



麗さんは不思議な顔をしている。


悲しいような、安堵(アンド)したような。


⏰:09/03/27 12:46 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#462 [イリア]



七「麗さん…?」


麗「…何でもない。
話すなよ、ただの怪我だから。
絶対に、誰にも言うな。」


⏰:09/03/27 12:46 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#463 [イリア]



そう言うと
さっきの表情とは別人のような顔で
私を睨み、歩き出す。


⏰:09/03/27 12:47 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#464 [イリア]



七「…あ、待って!!」

麗「……?何だ……」

七「な、七衣です!!」


麗「……は?」


⏰:09/03/27 12:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#465 [イリア]



七「な、名前!!
七衣って言います!!!!
今日からこの劇団で
お世話になります!!

あ、それから
大道具のはずだったんですけど
今さっき、猫さんの
マネージャーになりました!!」


⏰:09/03/27 12:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#466 [イリア]



一気に喋る私を
麗さんが不思議そうに見つめる。


⏰:09/03/27 12:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#467 [イリア]



麗「―…だから、何なんだ。

お前が大道具だろうと、
猫のマネージャーだろうと…
私には関係ない」


七「そうなんですけど…」


⏰:09/03/27 12:49 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#468 [イリア]



麗「狐がお前を、この劇団に
入れることを認めた。
反対はしない。だけど
私には関わるな」


冷たい麗さんの声が響く。

その目に、顔に、
思わず怯(ヒル)んでしまいそうになる。


⏰:09/03/27 12:49 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#469 [イリア]



最初は大変かもしれんが
必ず仲良くなれる――………


さっきの狼さんの声が頭に響く。


⏰:09/03/27 12:50 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#470 [イリア]



―…ここで諦めたら、
せっかく優しい言葉をくれた

狼さんに申し訳ない!!!!


⏰:09/03/27 12:50 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#471 [イリア]



七「―…!!…麗さんッッ!!!!」


麗「…何だ…まだ何か「私!!」」


麗さんの声に、私の声を被せる。

失礼かもしれないが、今は
この気持ちだけ、早く伝えたい。


⏰:09/03/27 12:51 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#472 [イリア]



七「―…麗さんに認めて貰えるよう、
頑張りますね!!それでもし麗さんが
私のこと認めてくれたら……」


一度、言葉を切る。
前にいる綺麗な人は、
私を不思議そうに見つめている。


⏰:09/03/27 12:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#473 [イリア]



麗「認めて、くれたら?」


七「……認めてくれたら……

…私と、友達になって下さい!!!!」


⏰:09/03/27 12:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#474 [イリア]



私の声がテント内に響く。

稽古やら食事作りやらで
みんな出払っているらしいので、
気にしない。


⏰:09/03/27 12:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#475 [イリア]



麗「……………は?」


七「えっとえっと!!!
私、本当に何も覚えてなくて!!!!
友達もいなくて!!寂しいんです!!!!

今の私の友達って、
猫さんと狐さんと…狼さんは
まだ分かんないけど…
このくらいで!!!!/////」


⏰:09/03/27 12:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#476 [イリア]



言ってしまったあとに
恥ずかしさが込み上げてくる。


そもそも友達って、
こんな風になるもんだっけ?///


⏰:09/03/27 12:54 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#477 [イリア]



麗「――…」


七「――…」


⏰:09/03/27 12:54 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#478 [イリア]



―…沈黙。


呆れられてる気がする。
そりゃそうかぁ。


⏰:09/03/27 12:55 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#479 [イリア]



七「―…あの、麗さん…?」


麗「―…何故」


七「え?」


⏰:09/03/27 12:55 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#480 [イリア]



麗「何故私に、そこまで拘(コダワ)る?
狼に何か言われたか?それとも狐?

―…私と関わっても
何も得るものはない。」


⏰:09/03/27 12:55 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#481 [イリア]



麗さんが、冷たく言い放つ。
でも、どうしてだろう。

何で、何で。


⏰:09/03/27 12:56 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#482 [イリア]



―…麗さんが寂しそうに見えるのは、

何で?


⏰:09/03/27 12:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#483 [イリア]



七「―…麗さん綺麗だから」


思わず私は、声を出す。


麗「………え?」


⏰:09/03/27 12:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#484 [イリア]



七「…同い年くらいの女の子。
友達になりたいと思うの
そんなにおかしいですか?

それに……麗さん、綺麗だから。」


⏰:09/03/27 12:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#485 [イリア]



笑ってみる。

麗さんが演技してるところ

本当の笑顔でいるところ

見てみたいんです。


言葉には出さない。
だけど心で思う。


⏰:09/03/27 12:58 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#486 [イリア]



七「…って、駄目ですよね…
とにかく、認めてもらえるよう、
がんばり「綺麗なんかじゃない」」


⏰:09/03/27 12:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#487 [イリア]



七「……え…?」


麗「…綺麗じゃない、私。

―……話はそれだけか?くだらない」


七「……あ……」


⏰:09/03/27 12:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#488 [イリア]



麗「私はお前を認めない。
何かあったら、
すぐにここから追い出す。

覚悟しておけ、雨原。」


そう言って麗さんは、また歩き出す。


⏰:09/03/27 12:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#489 [イリア]



まだ言いたいことはたくさんあるけど…

少しだけ、喋ってもらえた。
今は、それだけで。


麗さんの姿がテントの外に消える。


⏰:09/03/27 13:00 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#490 [イリア]



――……綺麗じゃない。


確かにそう聞こえた。

綺麗じゃない?
麗さんが綺麗じゃなかったら
この世界に綺麗な人なんて
いないんじゃないかな。


⏰:09/03/27 13:00 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#491 [イリア]



口は悪いが、根はいい子。

森の中での狐さんの言葉を思い出す。


⏰:09/03/27 13:01 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#492 [イリア]



確かに口は悪いかも。

でもどこか優しそうで、
立ち居振る舞い、全てが綺麗な人。



……仲良くなれたらいいなぁ。


⏰:09/03/27 13:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#493 [イリア]



っていうか、私も麗さんみたく
綺麗になりたいなー




―…そうしたら猫さんとも…

目を見て、話せるのに。


⏰:09/03/27 13:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#494 [イリア]



フゥ………


ため息をつく。



少しだけ眠い。

壁に背をつけ、ズルッと座り込んで

瞳を閉じる。


⏰:09/03/27 13:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#495 [イリア]



―――…………

――――……………


暗い、暗い、
ここはどこだろう?

あたり一面に広がる、
闇と、血の匂い。


体がいやに軽い。
これは、夢?


⏰:09/03/27 13:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#496 [イリア]



その揺りかごが風に揺れて

私は大きくなった――……


⏰:09/03/27 13:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#497 [イリア]



七「?」


歌声…



後ろを振り返る。
するとそこには闇の中に
黒く大きい、檻(オリ)が見えた。


⏰:09/03/27 13:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#498 [イリア]



中には誰か、

5歳くらいの男の子と、女の子。


⏰:09/03/27 13:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#499 [イリア]



歌っている。


二人は手を繋ぎ、
暗い暗い檻の中で
あの唄を、歌っている。


⏰:09/03/27 13:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#500 [イリア]



雨の音 風の声 聴いて
揺りかごを揺らして

早く私を迎えにきて――……


⏰:09/03/27 13:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#501 [イリア]



キャハハハハ……


時折もれる、楽しそうな笑い声。


⏰:09/03/27 13:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#502 [イリア]



苦しくなる。


何故、こんな気持ちになるの。

どうしてこんな暗い場所で、
あなたたちは、笑っているの。


この闇は何。

この甘い甘い、血の香りは何?


⏰:09/03/27 13:08 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#503 [イリア]



誰だろう?


もう少しだけ近づいてみようか。

そうしたら、
もっとはっきり見えるかも。


⏰:09/03/27 13:09 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#504 [イリア]



唄が聞こえる方向に
足を一歩踏み出す。


女の子が、私を見つめた。


七「……え?」


思わず声を出す。


⏰:09/03/27 13:09 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#505 [イリア]



こっちを見て、
楽しそうに笑う少女は…





七「―――………私……?」


⏰:09/03/27 13:09 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#506 [イリア]



男の子の顔は、ぼやけていて見えない。


何、何なの?
ここは、どこ?



幼い私に向かって、手を伸ばす。


⏰:09/03/27 13:10 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#507 [イリア]



グィッ


するとすぐに
誰かに意識を掴まれ
引き戻される。


意識が遠のく。


⏰:09/03/27 13:10 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#508 [イリア]









「――……僕は君を、守りたい」


⏰:09/03/27 13:11 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#509 [イリア]



引き戻される直前に
顔の見えない、男の子の声が響いた。



ズキッ


七「痛ッッ!!」


⏰:09/03/27 13:11 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#510 [イリア]



頭が痛い。
割れそうだ。




痛い…痛い―………


⏰:09/03/27 13:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#511 [イリア]



七「―――……痛………」

猫「――……??!!……オイ!!!!」



七「?」


⏰:09/03/27 13:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#512 [イリア]



目の前で、
夢の中の男の子とは違う少年が
私を心配そうに覗き込んでいた。


⏰:09/03/27 13:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#513 [イリア]



七「―…?猫さん…」


猫「オイ…あんた、大丈夫か?」


風が吹き抜けるテントの中。
見覚えのある景色。
ついさっきまで麗さんと
話をしていた場所。


⏰:09/03/27 13:14 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#514 [イリア]



七「……………」



あれは、どこだったんだろう。

あの檻も、あの暗さも。
何故か私を、懐かしくさせる。


⏰:09/03/27 13:14 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#515 [イリア]



猫「…オイ、聞いてる?」


七「…私…どうしたんですか?」


猫「それは俺が聞いてるの。

迎えにきたらさ、あんた
座り込んで、うなされてるし。」


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#516 [イリア]



うなされてた…

そうか私、寝ちゃったんだ。


猫「―…嫌な夢でも、見てたわけ?」


七「……嫌な夢……?」


⏰:09/03/27 13:15 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#517 [イリア]



分からない。

分からない。



――……僕は君を、守りたい



あの男の子の声だけが、
鮮明に頭に響き続ける。


⏰:09/03/27 13:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#518 [イリア]



深い闇と、甘い血の香り。


そんな場所で
屈託(クッタク)なく笑っている
幼い私の顔。


⏰:09/03/27 13:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#519 [イリア]



猫「―…気分悪い?
医者呼ぼうか?」


猫さんの綺麗な声が聞こえる。

心配してくれてるのかな。


⏰:09/03/27 13:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#520 [イリア]



七「―…変な夢…見て…」


猫「…変?」


七「はい…でも、もう大丈夫です。
ただの夢ですよね。ごめんなさい。」


⏰:09/03/27 13:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#521 [イリア]



アハハ、と笑ってみせる。


そう、夢なんだ。

今の私には、関係ない。


⏰:09/03/27 13:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#522 [イリア]



猫「―…夢と現実は、必ず繋がってる」


七「………え?」


⏰:09/03/27 13:19 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#523 [イリア]



猫「繋がってるんだ。

――……俺は、そう思う。」


猫さんの顔がかすむ。
少し悲しそうな顔に胸が痛む。


⏰:09/03/27 13:19 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#524 [イリア]






―…繋がってる。

私とあの夢は…繋がっている?


⏰:09/03/27 13:19 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#525 [イリア]



七「―…猫さん…」


猫「……?何?」



七「―…私がちゃんと、
全部思い出したとき…

それでも私は、私だから…」


⏰:09/03/27 13:20 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#526 [イリア]



風が吹いている。

記憶をなくす前も私は
この風を感じれていたのかな。


⏰:09/03/27 13:20 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#527 [イリア]








七「―……今と変わらず、

傍(ソバ)で笑ってくれますか?」


⏰:09/03/27 13:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#528 [イリア]



猫さんが驚いた顔をした。

瞬間、いま自分が聞いたことに
焦りと恥ずかしさを感じる。


⏰:09/03/27 13:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#529 [イリア]



七「……ッッ!!///いえ、別に!!
なに聞いてんだろ私、寝ぼけてる!!//
忘れて下さい//忘れ―…「あんたが」」


猫さんの声。

変わらない、甘い、甘い声。


⏰:09/03/27 13:22 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#530 [イリア]





猫「―…あんたが変わらないなら、
俺も変わらない」



その声に、表情(カオ)に

今日一日だけで
どれだけ鼓動を速めさせられただろう。


⏰:09/03/27 13:22 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#531 [イリア]



猫「―…行こう、もう飯の時間だ」


猫さんは私の腕を引っ張り立たせると

そのまま外に歩き出す。


⏰:09/03/27 13:23 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#532 [イリア]



猫さんの手のひらに、
確かな熱を感じる。



私たちは生きていること。

ここは夢じゃないということ。



目の前の人の優しさに、
溺れてしまってるということ。


⏰:09/03/27 13:24 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#533 [イリア]



確かなことは少ないけれど、
少しずつ、増えてきた。





私たちは布をめくり、外に出る。

さっきまでの雨はどこかに消え、
紅い夕日が顔を見せていた。


⏰:09/03/27 13:25 📱:W61P 🆔:☆☆☆


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