黒猫の棲むところ
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#451 [イリア]



麗「―…狐があんたを呼んでる。
明日からの舞台の台詞(セリフ)で
少し変更があったの。

すぐに裏テント前に来てって。」


⏰:09/03/27 12:41 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#452 [イリア]



狼「何?!またか!!!
舞台は明日だぞ!!
今更 台詞の変更とは、狐め…

では、先に行っとく!!
ちょうどいい、麗!!
新入りを飯場まで
案内してやってくれ!!

今日もいつも通り
川の近くの広場だ!!」


⏰:09/03/27 12:42 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#453 [イリア]



そう言って狼さんは
私をチラッと見て微笑むと
走ってテントの外に向かった。


⏰:09/03/27 12:43 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#454 [イリア]



私と麗さんを、仲良くさせようと
してくれてるのかな?

でも、猫さんが迎えにきてくれるし、
どうしよう…っていうか


⏰:09/03/27 12:43 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#455 [イリア]










―――……き、気まずい……汗


⏰:09/03/27 12:44 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#456 [イリア]



麗さんは一言も喋らない。

どうしようどうしよう。
私から喋っていいかな?
でも今さっき
私に話しかけるな!!って
怒鳴られたばっかだし……


⏰:09/03/27 12:44 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#457 [イリア]



試しに私は恐る恐る、
麗さんに話しかけてみた。


⏰:09/03/27 12:44 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#458 [イリア]



七「……あの…麗さん?

私は、猫さんが
迎えにきてくれるって言ってて…
入れ違いになったら困るし、
ここで待ちます…だから先に、
どうぞご飯に「喋ったか?」」


麗さんと私の声が重なる。


⏰:09/03/27 12:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#459 [イリア]



七「…は、はい?…何を…?」


麗「私の体の痣のこと、
狼に喋ったのか?」


⏰:09/03/27 12:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#460 [イリア]



いやそれは、喋ろうとしたら
麗さんがきたので…


七「…話してませんけど…」


麗「――…」


⏰:09/03/27 12:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#461 [イリア]



麗さんは不思議な顔をしている。


悲しいような、安堵(アンド)したような。


⏰:09/03/27 12:46 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#462 [イリア]



七「麗さん…?」


麗「…何でもない。
話すなよ、ただの怪我だから。
絶対に、誰にも言うな。」


⏰:09/03/27 12:46 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#463 [イリア]



そう言うと
さっきの表情とは別人のような顔で
私を睨み、歩き出す。


⏰:09/03/27 12:47 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#464 [イリア]



七「…あ、待って!!」

麗「……?何だ……」

七「な、七衣です!!」


麗「……は?」


⏰:09/03/27 12:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#465 [イリア]



七「な、名前!!
七衣って言います!!!!
今日からこの劇団で
お世話になります!!

あ、それから
大道具のはずだったんですけど
今さっき、猫さんの
マネージャーになりました!!」


⏰:09/03/27 12:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#466 [イリア]



一気に喋る私を
麗さんが不思議そうに見つめる。


⏰:09/03/27 12:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#467 [イリア]



麗「―…だから、何なんだ。

お前が大道具だろうと、
猫のマネージャーだろうと…
私には関係ない」


七「そうなんですけど…」


⏰:09/03/27 12:49 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#468 [イリア]



麗「狐がお前を、この劇団に
入れることを認めた。
反対はしない。だけど
私には関わるな」


冷たい麗さんの声が響く。

その目に、顔に、
思わず怯(ヒル)んでしまいそうになる。


⏰:09/03/27 12:49 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#469 [イリア]



最初は大変かもしれんが
必ず仲良くなれる――………


さっきの狼さんの声が頭に響く。


⏰:09/03/27 12:50 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#470 [イリア]



―…ここで諦めたら、
せっかく優しい言葉をくれた

狼さんに申し訳ない!!!!


⏰:09/03/27 12:50 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#471 [イリア]



七「―…!!…麗さんッッ!!!!」


麗「…何だ…まだ何か「私!!」」


麗さんの声に、私の声を被せる。

失礼かもしれないが、今は
この気持ちだけ、早く伝えたい。


⏰:09/03/27 12:51 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#472 [イリア]



七「―…麗さんに認めて貰えるよう、
頑張りますね!!それでもし麗さんが
私のこと認めてくれたら……」


一度、言葉を切る。
前にいる綺麗な人は、
私を不思議そうに見つめている。


⏰:09/03/27 12:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#473 [イリア]



麗「認めて、くれたら?」


七「……認めてくれたら……

…私と、友達になって下さい!!!!」


⏰:09/03/27 12:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#474 [イリア]



私の声がテント内に響く。

稽古やら食事作りやらで
みんな出払っているらしいので、
気にしない。


⏰:09/03/27 12:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#475 [イリア]



麗「……………は?」


七「えっとえっと!!!
私、本当に何も覚えてなくて!!!!
友達もいなくて!!寂しいんです!!!!

今の私の友達って、
猫さんと狐さんと…狼さんは
まだ分かんないけど…
このくらいで!!!!/////」


⏰:09/03/27 12:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#476 [イリア]



言ってしまったあとに
恥ずかしさが込み上げてくる。


そもそも友達って、
こんな風になるもんだっけ?///


⏰:09/03/27 12:54 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#477 [イリア]



麗「――…」


七「――…」


⏰:09/03/27 12:54 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#478 [イリア]



―…沈黙。


呆れられてる気がする。
そりゃそうかぁ。


⏰:09/03/27 12:55 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#479 [イリア]



七「―…あの、麗さん…?」


麗「―…何故」


七「え?」


⏰:09/03/27 12:55 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#480 [イリア]



麗「何故私に、そこまで拘(コダワ)る?
狼に何か言われたか?それとも狐?

―…私と関わっても
何も得るものはない。」


⏰:09/03/27 12:55 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#481 [イリア]



麗さんが、冷たく言い放つ。
でも、どうしてだろう。

何で、何で。


⏰:09/03/27 12:56 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#482 [イリア]



―…麗さんが寂しそうに見えるのは、

何で?


⏰:09/03/27 12:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#483 [イリア]



七「―…麗さん綺麗だから」


思わず私は、声を出す。


麗「………え?」


⏰:09/03/27 12:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#484 [イリア]



七「…同い年くらいの女の子。
友達になりたいと思うの
そんなにおかしいですか?

それに……麗さん、綺麗だから。」


⏰:09/03/27 12:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#485 [イリア]



笑ってみる。

麗さんが演技してるところ

本当の笑顔でいるところ

見てみたいんです。


言葉には出さない。
だけど心で思う。


⏰:09/03/27 12:58 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#486 [イリア]



七「…って、駄目ですよね…
とにかく、認めてもらえるよう、
がんばり「綺麗なんかじゃない」」


⏰:09/03/27 12:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#487 [イリア]



七「……え…?」


麗「…綺麗じゃない、私。

―……話はそれだけか?くだらない」


七「……あ……」


⏰:09/03/27 12:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#488 [イリア]



麗「私はお前を認めない。
何かあったら、
すぐにここから追い出す。

覚悟しておけ、雨原。」


そう言って麗さんは、また歩き出す。


⏰:09/03/27 12:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#489 [イリア]



まだ言いたいことはたくさんあるけど…

少しだけ、喋ってもらえた。
今は、それだけで。


麗さんの姿がテントの外に消える。


⏰:09/03/27 13:00 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#490 [イリア]



――……綺麗じゃない。


確かにそう聞こえた。

綺麗じゃない?
麗さんが綺麗じゃなかったら
この世界に綺麗な人なんて
いないんじゃないかな。


⏰:09/03/27 13:00 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#491 [イリア]



口は悪いが、根はいい子。

森の中での狐さんの言葉を思い出す。


⏰:09/03/27 13:01 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#492 [イリア]



確かに口は悪いかも。

でもどこか優しそうで、
立ち居振る舞い、全てが綺麗な人。



……仲良くなれたらいいなぁ。


⏰:09/03/27 13:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#493 [イリア]



っていうか、私も麗さんみたく
綺麗になりたいなー




―…そうしたら猫さんとも…

目を見て、話せるのに。


⏰:09/03/27 13:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#494 [イリア]



フゥ………


ため息をつく。



少しだけ眠い。

壁に背をつけ、ズルッと座り込んで

瞳を閉じる。


⏰:09/03/27 13:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#495 [イリア]



―――…………

――――……………


暗い、暗い、
ここはどこだろう?

あたり一面に広がる、
闇と、血の匂い。


体がいやに軽い。
これは、夢?


⏰:09/03/27 13:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#496 [イリア]



その揺りかごが風に揺れて

私は大きくなった――……


⏰:09/03/27 13:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#497 [イリア]



七「?」


歌声…



後ろを振り返る。
するとそこには闇の中に
黒く大きい、檻(オリ)が見えた。


⏰:09/03/27 13:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#498 [イリア]



中には誰か、

5歳くらいの男の子と、女の子。


⏰:09/03/27 13:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#499 [イリア]



歌っている。


二人は手を繋ぎ、
暗い暗い檻の中で
あの唄を、歌っている。


⏰:09/03/27 13:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#500 [イリア]



雨の音 風の声 聴いて
揺りかごを揺らして

早く私を迎えにきて――……


⏰:09/03/27 13:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


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