黒猫の棲むところ
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#51 [イリア]

それにしても…


「さっきの黒猫、大丈夫かなぁ?
血は止まってたけど
傷だらけだったし…」


まぁ今更心配しても仕方ない。

それに猫は死ぬとき
誰にも見られない場所に
行くというし…

⏰:09/03/22 15:32 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#52 [イリア]

「…なに物騒なこと
考えてんの私…
とにかく」


あの猫が、生きてますように。


私は足を止め、空を仰ぎ、
いるかも分からない神に祈った。

⏰:09/03/22 15:33 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#53 [イリア]

さっき私と黒猫の体を清めてくれた、
あの川まで戻る。


「…帰ろう」



ガザッ

木の揺れる音がして
後ろを振り返る。

⏰:09/03/22 15:33 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#54 [イリア]



「―…誰?」


誰かいる。
それは分かる。
でも、誰?

⏰:09/03/22 15:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#55 [イリア]




見えない
見えない
見えない



怖い


⏰:09/03/22 15:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#56 [イリア]


「…誰か…ッ…いるの…?!
誰か…キャッ!!」


私の声は、誰か、によって遮られた。

後ろから手のひらで
口を塞(フサ)がれているような
感触はあるが、姿は見えない。

⏰:09/03/22 15:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#57 [イリア]



「…フッ…ン―ッ!!」


必死に声を出し、
手を退かせようと抵抗するが、
まったく力ではかなわない。

⏰:09/03/22 15:35 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#58 [イリア]



「――……やっと見つけた…
麗しの君…いや…元、君主…
…雨原(アマハラ)の血―…!!」


「??!!」


後ろから声がした。
低く、暗く、響く声。

⏰:09/03/22 15:36 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#59 [イリア]

声を出すと同時に
一瞬緩められた手を
思いっきり口からずらし
声を張り上げる。


「…プハッ!離して!離してよ!
何あんた…何で見えないの…
誰がいるの…
私の目がおかしいの…?」

⏰:09/03/22 15:37 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#60 [イリア]



泣きそうになる。
ただ、怖かった。


前にもいつか、
こんなことを体験した気がして。
そしてその後、
闇に落ちた、気がして。

⏰:09/03/22 15:38 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#61 [イリア]


「ははは…そうだ、
お前の目がおかしい…
人の目は常に、
大事なものから目をそらす。
そう特に、お前ら雨原一族はな。」

すぐ後ろから声がする。

⏰:09/03/22 15:40 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#62 [イリア]


「…アマハラ…?
何訳分かんないこと言って…
痛いのよ!…さっさと離して!!
私は帰らなきゃいけないんだから!」


「どこへ?」

どこへ?


⏰:09/03/22 15:41 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#63 [イリア]

さっきも思った。

帰らないと。
みんな待ってる。


帰ろう
帰ろう
帰ろう

⏰:09/03/22 15:42 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#64 [イリア]




どこへ?
誰が、待ってる?



⏰:09/03/22 15:42 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#65 [イリア]


―……!!

さっき黒猫と一緒にいたとき
思ったこと。


私は―…
私は………





誰?

⏰:09/03/22 15:43 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#66 [イリア]


「お前に帰る場所は、もうない。
お前たちは裏切った。
俺たちを…妖(アヤカシ)を…」


「―…?!」

⏰:09/03/22 15:44 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#67 [イリア]



「あぁ君主、我らの新しい君主よ。
今、過去の憎しみの一欠片(ヒトカケラ)
壊してみせましょうぞ……!!」


ゾクッ..

後ろにいる誰かの声に
恐怖を覚える。

⏰:09/03/22 15:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#68 [イリア]

刃が見えた。
鋭く尖った、銀色の。
ただ真っ直ぐに
私に向かってくる。



「―……イヤッッ!!!!」



目を、閉じた。

⏰:09/03/22 15:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#69 [イリア]



キーン―…


――……?

痛くない…

金属と金属がぶつかる音。

恐る恐る目を開くと、
私のすぐ前に誰かの背中が見えた。

⏰:09/03/22 18:28 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#70 [イリア]

私に向けられていた刃は
その人の持つ刃と交差(コウサ)し
動けないようだ。


「キャッ!」


目の前にいる人が、
私の腕を引っ張る。

⏰:09/03/22 18:28 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#71 [イリア]


少年?
青年?


「―…誰?」

「――…ッッ!!お前は!!
アスタリスクの――ッッ!!」

私の傍(ソバ)で、
さっきの低い声がする。

⏰:09/03/22 18:29 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#72 [イリア]


「…へぇ、俺を知ってるの?
劇団の常連さんかな…」


その人はクスッと笑い、言葉を続ける。


「でも、お客様。
マナーがなっていませんね、
俺と会話がしたいときは」

⏰:09/03/22 18:29 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#73 [イリア]


ザッ


刃の矛先を変える。
私のすぐ横に。

「あっ危なッ!!
何するんです―…」


「ギャアアアア!!!!!」


「…え?」

⏰:09/03/22 18:29 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#74 [イリア]




「…姿を見せてくれないと。
アンフェアは嫌いなんだ。
特に、俺が不利になることなんて。」



⏰:09/03/22 18:30 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#75 [イリア]

横を見ると、
刃に貫かれ左腕から血を流す……


「…え…鬼ッ…?」


そこにいたのは、
人間ではなかった。

鬼のような…
そういえばさっきこいつ、
妖がどうのこうのって……

⏰:09/03/22 18:30 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#76 [イリア]


「ウウウ…アスタリスクの…
まさかこんなところに…」


「鬼か…人間を襲う妖なんて
俺たちの舞台の客に相応しくない」

⏰:09/03/22 18:31 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#77 [イリア]

舞台?客?何の話…?


「…クッ…アスタリスクッッ!!!!!」


目の前の鬼が叫ぶ。

⏰:09/03/22 18:33 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#78 [イリア]


「何故…何故、貴様等は
人間を庇う!
半妖とて、妖は妖!!
ずっとこちら側で生きてきた…
何故いまお前らは、
人間の側に立つ!!」

⏰:09/03/22 18:33 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#79 [イリア]


「クスッ、どうだろう?
俺としては、人間の側に
立ってるつもりはないし…」


少年は妖艶に微笑むと、
また刃を振り下ろす。

⏰:09/03/22 18:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#80 [イリア]



「…てめぇら(妖)の側に
立ってたつもりもない」


刃は無惨にも鬼を貫き、
鬼は砂のように落ちる。

⏰:09/03/22 18:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#81 [イリア]


「…ソノ、女……アマ…ハラ」




「…クシュン!!」

少年がくしゃみをしたとき、
鬼は形をなくし、砂になり
空に舞った。

⏰:09/03/22 18:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#82 [イリア]


「…知ってるよ」


少年はポツリとそう呟いた。

⏰:09/03/22 18:35 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#83 [イリア]

「…あ、あの…」

私は声をだし、
目の前の少年に話しかける。

聞きたいことだらけで、
あー何か…現実だよね?ここ…

⏰:09/03/22 18:35 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#84 [イリア]



「あーまじ風邪気味。」



少年は鼻を少しぐずつかせると
私のほうを見た。

うわ………

⏰:09/03/22 18:36 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#85 [イリア]


細身の体に

筋のいい鼻

綺麗な肌に

漆黒の瞳と、髪。


その全てがよく映える
滑らかな黒コートに
身を包んでいる。

⏰:09/03/22 18:36 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#86 [イリア]


俺、という一人称と
さっきの声から
男だとは思うが、
見た目は妖艶な女性といっても
間違いではないくらい


「―…綺麗…」


「は?」

目の前の人が不思議そうな顔で
私を覗きこんできた。

⏰:09/03/22 18:38 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#87 [イリア]


「ふぇっ?!いえ別に!
何でもありません!
あ、助けてくれて
有難う御座います!!」


一気にこれだけいうと、
私は顔を下に向けた。
少年の顔は私から近く、
なんていうか…

⏰:09/03/22 18:39 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#88 [イリア]


「恥ずかしい…」


「…だから、何」


「え?あ、すいません!
本当に何でもないです!」

⏰:09/03/22 18:39 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#89 [イリア]


あまりに貴方が綺麗すぎて
見とれてしまいました、なんて

初対面の相手に
言えるはずないでしょ!

⏰:09/03/22 18:39 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#90 [イリア]


「…まぁ何でもいいけど。
あんたさ、名前は?」


「あ…七衣です。」


「ふぅん…」


「あの…貴方は…?」

⏰:09/03/22 18:40 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#91 [イリア]


「俺?俺は名前なんていらないし」

「えー…でも、呼びづらいですよ…」

「…呼び名くらいはある
団員や客からは…」

⏰:09/03/22 18:40 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#92 [イリア]


そう言うと彼は、
少しずつ顔をあげてきた私の目を見て
こう言った。

「黒猫、って呼ばれてる」

⏰:09/03/22 18:41 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#93 [イリア]


「……黒猫?」


黒猫って…
さっきの傷だらけの
猫を思い出す。
感じは似てる気もするが、

でも…
まさか、ね。

⏰:09/03/22 18:41 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#94 [イリア]

「正確には、それをもじって
クロ、とかネコ、とかだけど。
まぁあんたも好きに呼べばいい」


「…あ、はい…
それでさっきから言ってる
劇団とか団員…て…?」

⏰:09/03/22 18:43 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#95 [イリア]


?「それは僕が説明しよう!」


ガザッ という音と同時に、
男性が一人、勢いよく
林の陰から飛び出してきた。

七「えッ??!!」

猫「…うぜー…」

⏰:09/03/22 19:29 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#96 [イリア]


?「やぁ、初めまして
可愛らしいお嬢さん♪
時にネコくん、
今うぜーって言った?
団長の僕に対して、
今うぜーって
言ったあああぁぁあ!!!!!!」

⏰:09/03/22 19:29 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#97 [イリア]


猫「うっせーんだよ狐(キツネ)!!
いい大人がそんくらいで
半べそかいてんじゃねえ!!」


狐「ふん、君も狼(ロウ)くんも
いい大人、いい大人って…
僕はまだ25ですぅー
ピチピチなんですぅー
結婚なんてまだまだまだ…」

⏰:09/03/22 19:30 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#98 [イリア]


猫「誰もてめぇの結婚論なんて
聞いちゃいねーんだよ、カス」


狐「うわ、今度はカスって
言ったあああぁぁあ!!!!!
ふんだ、もういいもんね。
次の舞台の主役は君じゃなく
狼くんに任せるもんね」


猫「好きにしろ」

⏰:09/03/22 19:31 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#99 [イリア]


狐「ふん、強がっちゃって…
時にお嬢さん」


七「…え?あ、はい!」


狐「僕と結婚しない?」




ボコツ!

黒猫さんが、
狐と呼ばれた人を殴った。

⏰:09/03/22 19:31 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#100 [イリア]


狐「今度は殴ったあああぁぁあ!!!」


猫「てめぇ本当、いい加減にしろよ。
何のためについてきたんだ、あ?」

⏰:09/03/22 19:32 📱:W61P 🆔:☆☆☆


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