黒猫の棲むところ

何十人もの人だかりが
一気に私たちのほうに流れてくる。

「ｷｬｧｯ!!//やっぱり
本物のほうが綺麗だわ!!///」

「噂通りのお方!!///」

「お綺麗ですねぇ//
何か贈り物をしたいのだけど、
お好きなものは何かしら?///」

次々とファンの人の声がする。

よく見ると向こうのほうで
狼さんもファンの人に囲まれている。

――……麗さんの姿はない。

麗さんどうしたんだろ…
もう先に来てると思ったのに…

私がそんなことを考えてる間にも
ファンの人たちの質問は続く。

「私、前に一度違う街で
この劇団の講演を見たことあって//
そのときから黒猫さんの大ファンで!!//

覚えています？あれは去年の今頃、
ｾﾊﾟﾅ会館での講演で…//」

猫「―…『夢の街、ｽﾚﾗｲﾅ』」

猫さんはそう言うと

妖艶に微笑んだ。

「そうです!!//流石だわ!!//
私あのときの黒猫さんの最後の台詞、

あれを聞いたとき本当に鳥肌が…//」

「―…嗚呼、コレを見よ。」

猫さんの声が響く。

猫『コレが本物の、我らの故郷。
ｽﾚﾗｲﾅのあるべき姿だ。

王、兵、そして群集。
殺戮(ｻﾂﾘｸ)と哀話(ｱｲﾜ)。

壁を創(ﾂｸ)ったのは誰だ??』

いつもよりずっと澄んだ声。
思わず聞き惚れる。

しばらくすると
またファンの人たちが叫び始める。

「ｷｬｧｯ!!//それです!!//
あぁもうどうしましょう!!//
明日の講演が待ちきれないわ//」

猫「―…ｸｽｯ、有難う。
僕も今から、待ち切れません。」

誰だよ僕って。

ちょっと性格違い過ぎません？

猫さんの声に、また人だかりが増える。

っていうか、あきらか私邪魔だよね。
そう思い、一歩後ろに下がる。

少しの間、離れていよう。

そう思った、そのとき。