黒猫の棲むところ
最新 最初 🆕
#551 [イリア]



「狐さんだわ//」

「どうしてあれほどのお顔なのに、
監督をしていらっしゃるのかしら??//」

「是非一度、演技している姿
拝見してみたいものですわ////」



遠くから声が聞こえる。

あぁやっぱ狐さんもモテるんだな。
かっこいいもんなー


⏰:09/03/28 13:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#552 [イリア]



猫「―…ッて、いうことだから…」


「あの!!//練習風景
少しだけ見せて頂けません??///

そうしたら私たち、
すぐに帰…「それは嫌だな…」


⏰:09/03/28 13:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#553 [イリア]



ん?猫さんのファンに対する
初めての否定的な言葉。

ついに本性だすのかな?


⏰:09/03/28 13:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#554 [イリア]



「―…あら、ごめんなさい……

私たち少し調子に―…「だって」」


また猫さんがファンの人の声に
声を被せる。


⏰:09/03/28 13:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#555 [イリア]



猫「―…明日の楽しみが、
なくなるでしょ?


それに僕、まだ台詞
全部覚えられてなくて…

…恥ずかしいから、嫌だな。」


⏰:09/03/28 13:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#556 [イリア]



その甘い声に、私もファンの人たちも
顔を赤くする。




僕って誰!!!

僕って誰???!!!////

っていうか台詞なら
もう覚えてるでしょ??!!///


⏰:09/03/28 13:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#557 [イリア]



「あらまぁ////そうでしたの////」


ファンの人たちが、
また甘ったるい声を出す。


「劇団トップ人気の黒猫さんでも
そんなこともあるのねぇ///」

「それはやっぱり、まだ18歳だもの//」

「ほら!私たち、お邪魔にならないよう
早く帰らなくちゃ!!//」


⏰:09/03/28 13:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#558 [イリア]



改めてさっきの、狼さんが
言っていた言葉の意味が分かる。






七「――……悪魔だ…///」


「…ところで貴女、
―…一体、どなた?」


⏰:09/03/28 13:08 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#559 [イリア]



私に声が向けられる。
突然のことに驚いた。


七「……ふぇっ??!!あ、私ですか?
えーと私は………」


猫さんのマネージャー?

いやぁ、そんなこと言ったら
何か色々ややこしいよな。


⏰:09/03/28 13:09 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#560 [イリア]



猫「新しいスタッフなんだ。

大道具の白(ハク)って奴に惚れて
この劇団に入ったみたい。

動機不十分だよねー」


猫さんがアハハと、幼い顔で笑う。


⏰:09/03/28 13:10 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#561 [イリア]



すいません、ハクって誰ですか。


「あらぁ、そうなの//」

「いやね、黒猫さんと一緒に
歩いてきたもんだから、
私ったら、てっきり…//」


またガヤガヤと騒ぎだす。
猫さんは私の耳元で囁(ササヤ)いた。


⏰:09/03/28 13:11 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#562 [イリア]



猫「あんた、ちょっと離れてて。
こいつら、俺とあんたのこと
疑ってるみたいだから。」


七「……はぁ」


猫「狼のほうが片づいたら
狐が来て追っ払ってくれるから」


⏰:09/03/28 13:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#563 [イリア]



そう言われて私は猫さんと離れ
人だかりの少ないほうに歩き始めた。








――…それにしても。


⏰:09/03/28 13:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#564 [イリア]



何だよさっきの猫さんの態度。

いくら何でも、サービス精神
旺盛(オウセイ)すぎでしょ!!


⏰:09/03/28 13:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#565 [イリア]



訳もなくイライラする。


あの声で舞台の上に立ってるのかな。

そんなのファンができて当然じゃん。


⏰:09/03/28 13:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#566 [イリア]






七「……猫さんにとっては私も

うるさいファンの一人なのかな…」


⏰:09/03/28 13:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#567 [イリア]



そう考えると、
どうしようもなく切なくなる。
無意識に頬に冷たい涙が伝う。



七「……?…涙?
どんだけ女々しいんだよ私…」


⏰:09/03/28 13:14 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#568 [イリア]



ファンの人たちの声、聞きたくない。



私はそう思い、森の中に足を進める。

危険かもとは思ったが、
まぁ奥まで入らなかったら
大丈夫だろう。


⏰:09/03/28 13:14 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#569 [イリア]




ザワザワザワ…



森が風で揺れてる。

少し肌寒い。


⏰:09/03/28 13:14 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#570 [イリア]



「――……ッめ…たら」





誰かの声が聞こえる。
こんなところで…誰…?

そう思い、声のするほうに歩く。
すぐに知ってる顔が見えた。


⏰:09/03/28 13:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#571 [イリア]



七「――…麗さん…」


そこには麗さんと、
麗さんを囲う男性4人。
ファンの人かな?
でも何か様子が――……


私は木の影に隠れ、様子を窺(ウカガ)う。


⏰:09/03/28 13:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#572 [イリア]



男「だからぁ、いいじゃん
俺たちだってさー
もうアスタリスク劇団の一員だよー?」


男「今日の晩飯んとき
正式に発表されるみたいだけどー
アスタリスク劇団とオリオン劇団、
次の舞台から合併なるんだってぇ」


⏰:09/03/28 13:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#573 [イリア]





麗「――……だから、何よ」


麗さんの声がする。


⏰:09/03/28 13:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#574 [イリア]



男「だからぁ?
だからどうってことないけどー
まぁ仲良くしようってことぉ〜

…こないだみたいにさー」


こないだ?
こないだって何?


⏰:09/03/28 13:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#575 [イリア]



麗「――……ッッ!!
意味の分からないことを言うな!!
私は別に何も――……ッッ!!」





男「キスしたじゃぁ〜ん」

男が笑いながら言った。


⏰:09/03/28 13:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#576 [イリア]



え、キス?

麗さんが?




麗「―――………ッッ!!」


⏰:09/03/28 13:18 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#577 [イリア]



男「あんときはさぁ
途中で邪魔入ったし
あんだけで終わったけど〜…

あんただってさ、他の奴らに
知られたくないだろ?

…仲良くしよって、そういうこと。」


⏰:09/03/28 13:18 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#578 [イリア]



ギャハハハハハ……
男たちの下品な笑い声が響く。



麗さんの体の痣(アザ)。

最近元気がないって言った
狼さんの言葉。



――…………まさか。


⏰:09/03/28 13:19 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#579 [イリア]



思わず飛び出そうになる。

でも向こうは体の大きい男性4人。
私が出ていっても、何もならない。


⏰:09/03/28 13:20 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#580 [イリア]



誰か。

誰か呼んでこよう。



誰か。



私は走ってさっきの場所に戻る。


⏰:09/03/28 13:20 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#581 [イリア]



狐さんは猫さんのファンの
説得をしていた。



狼さんはファンの人たちを
狐さんに帰されたのか、

食事の準備を手伝っている。


⏰:09/03/28 13:20 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#582 [イリア]



七「――ハァ…ッッ!!狼さん!!!!!」


狼「ん?何だ新入り、
そんなに慌てて。

ところでお前、麗知らないか?
一緒に来てたんじゃ……」


七「いいから!!早く来て!!!!!」


⏰:09/03/28 13:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#583 [イリア]



私は狼さんの腕を引っ張ると
森のほうに走り出す。


遠くで人だかりに囲まれた猫さんが
一瞬こっちを見た気がしたが、
今はそんなこと関係ない。


⏰:09/03/28 13:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#584 [イリア]



狼「……うぉ!!何だ何だ!!!!
何かあったのか?」


七「――ハァ…麗さんが…ッッ!!」


狼「麗?」



その言葉に狼さんがピクッと反応する。


⏰:09/03/28 13:22 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#585 [イリア]



狼「麗に何かあったのか?

場所は?場所はどこだ?」



七「…ハァ…ハァ…今、向かってます!!
そこ…その大きな木の向こう…ッッ」


私のその言葉を聞くと
狼さんは私を置いて走り出した。


⏰:09/03/28 13:22 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#586 [イリア]



間に合ったかな――………ッッ??

狼さんが木の近くで走るのをやめた。



七「??!どうしたんですか??
麗さん、大丈夫――……ッッ」


狼「…新入り…」


狼さんの声が響く。


⏰:09/03/28 13:23 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#587 [イリア]



狼「―…誰も、いないぞ?」


え……?


私も狼さんの横に着き、
さっきと同じ場所で前を見る。


七「――……嘘……」


⏰:09/03/28 13:24 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#588 [イリア]



するとさっきまで
麗さんと男性がいた場所には、

狼さんの言うとおり、
誰もいなかった。


⏰:09/03/28 13:24 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#589 [イリア]



七「……さっきまで確かに…」


麗「――……何がよ?」


後ろから、麗さんの声。
驚いて後ろを振り向く。


⏰:09/03/28 13:25 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#590 [イリア]



狼「――…麗」

七「…麗さん……」


麗「狼、あんた馬鹿じゃないの?
いきなり走り出すから、
何かと思ってついてきたら…
…私がなに?私はずっと
テントの傍(ソバ)にいたわ。
…あんた、雨原に騙されて…」


七「……違うッッ!!!!」

私が叫ぶ。


⏰:09/03/28 13:25 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#591 [イリア]



七「何で嘘つくんですか??!!
さっき確かにここで、
麗さんと男性4人で…
何か話してたじゃないですか!!

―……麗さん、震えてた!!
何で言えないんですか……ッッ!!」


⏰:09/03/28 13:26 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#592 [イリア]



嫌われてもいい。

一生、口をきいて貰えなくてもいい。


だから、本当のこと
狼さんに話してよ。

こんなに麗さんのこと想ってる、
狼さんに全部話してよ。


⏰:09/03/28 13:27 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#593 [イリア]



麗「――……何この子?きちがい?
…だから嫌なのよ、人間って「麗」」


狼さんの声が、
麗さんの言葉を遮(サエギ)る。


⏰:09/03/28 13:31 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#594 [イリア]



麗「…何?まさかあんたも
こんな子の言うこと信じてるの?」

狼「新入りの言うこと、
あながち嘘には聞こえない。だけど

――……俺は、お前を信じてる」


狼さんの声が響く。

麗さんは狼さんから目を背けた。


⏰:09/03/28 13:31 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#595 [イリア]



麗「…なにその台詞?

明日の舞台にそんな台詞
あったかしら?」


狼「―…お前を、信じてる。
だから今ここで、一つ約束して欲しい」


⏰:09/03/28 13:32 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#596 [イリア]



風が吹いてる。

あぁ、さっきまで雨が降ってたもんな。


⏰:09/03/28 13:33 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#597 [イリア]



狼「――……何かあったら、
絶対俺に言うこと。

どんなことでも、必ず。」



狼さんを見る。
強く意志のある赤い瞳は
猫さんとは違う美しさを持つ。


⏰:09/03/28 13:33 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#598 [イリア]



麗「――……何で私が…」


狼「約束だぞ、麗」



狼さんの気迫に押されたのか、
麗さんがコクリと頷く。


⏰:09/03/28 13:33 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#599 [イリア]



狼「……よし、それじゃあ
今度こそ本当に飯にしよう!!

猫のファンは帰ったかな?
あいつのファンはしつこくて困る、
まったくあんな悪魔の
どこにそんなに惚れるのか…

行くぞ!麗!!
新入りもご苦労だったな!!!!」


⏰:09/03/28 13:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#600 [イリア]



そう言って狼さんはまた

白い歯を見せてニカッと笑う。


⏰:09/03/28 13:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194