BLUE LETTERS
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#50 [我輩は匿名である]
 

それを上田は知っていた。
知っていて知らないふりをしていた。

なんでも話せるふたりだったのに。

お互いが宝物だったのに。
 

⏰:09/05/20 02:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#51 [我輩は匿名である]
 
――榊原はたいへんに優秀だった。
医者の家系でもともと頭がよかったのもあるが、彼自身も真面目で努力家だった。
そんな彼の人柄もあってか、3年の夏まで榊原は野球部の主将をつとめる程に周囲からの信頼も厚かった。 

⏰:09/05/20 02:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#52 [我輩は匿名である]
 

大好きだった野球に全力を注ぎながら勉学も両立させていた榊原。

 

⏰:09/05/20 02:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#53 [我輩は匿名である]
 
しかしそんな彼が野球を失った瞬間、調子を崩した。
体も、勉学も。
 

⏰:09/05/20 02:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#54 [我輩は匿名である]
 
――もっと、もっと。

榊原の心の声に耳を澄ましていればよかったのだ。

そうすれば、ふたりは、
こんなに離れずにすんだのかもしれないのに。
榊原は、こんな笑いかたをしなかったかもしれないのに。
 

⏰:09/05/20 02:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#55 [我輩は匿名である]
 
あの頃。

すれ違いが多くなりはじめた頃。

どこにいても、
なにをしていても、
いつかの夏の榊原をどこか探していた。
 

⏰:09/05/20 02:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#56 [我輩は匿名である]
 
浅黒く日焼けをした肌に汗を浮かばせ、グラグラウンドを駆け回る彼を。
 

⏰:09/05/20 02:51 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#57 [我輩は匿名である]
 
真夏の陽射しで脳裏に焼き付けていた。

ふたりで夢を語りあった窓際から優しく吹き抜けた風に目を細めて、記憶の中に閉じ込めた。
 

⏰:09/05/20 02:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#58 [我輩は匿名である]
 

しかしどこを探したって、あの夏の榊原はもういなくて。

 

⏰:09/05/20 02:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#59 [我輩は匿名である]
 
輝きながら笑いあった日々を思い出し、もう戻れないと直感して目を伏せた。

一緒にいたのも。
あの頃のふたりが幸せであったことも。

この記憶に嘘はひとつだってありはしないのに。

戻れない。
帰らない、あの夏の薫り。 

⏰:09/05/20 02:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


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