━星降る夜のオリオン座━
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#1 [LucK] 09/07/22 10:42
君が見たオリオン座と
俺が見るオリオン座は
まったく違っていた。
同じ輝きなのにね。
#32 [LucK]
「……誰を?」
「小さな頃に実の父親を…。」
「………!」
驚きが隠せない様子だった。
「あんたと同じように、俺は虐待を受けていた。酒に狂った父親は毎晩俺と母親を殴り蹴り…。その地獄から逃げるには、俺か父親が死ぬしかなかった…。」
淡々と続ける俺に、サキはまた涙を流している。自分の体験と照らし合わせたのだろう。
:09/07/25 14:05
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#33 [LucK]
「…そしてある日、俺は母親を殴る父親に背後から包丁を突き立てた。」
その瞬間、鮮明にその景色を思い出した。
おびただしい血と父親のうめき声。脳裏によぎるだけで吐き気がした。
「…母親は、「自分が刺した」と警察に話し、俺をかばって刑務所に入ったんだ…。」
サキは黙って聞いていた。涙を流しながら。
:09/07/25 14:11
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#34 [LucK]
「…だから俺は人を殺す重さを知ってるんだ。あの日から夢に父親の顔が出てこない日はない…。母親の顔もだ…。父親は夢の中でいつもこう言う、「なんで俺を刺した!お前も殺してやる!」ってね……」
俺は体が震え涙が溢れる。それをみたサキは急に俺の手を握ってきた。そして…
「…だからさっきあたしを抱き締めてくれたんですね…」
更に涙が溢れた。この話を誰かにしたのは初めてだし、話そうと思ったのもサキが初めてだった。それは、サキがあの時の俺と同じ感情を持っていたから。
:09/07/25 14:17
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#35 [LucK]
「……この話を聞いても…サキが義母を殺そうと思うなら……金なんかいらない、俺がそいつを殺してやる。」
「……え?」
「人殺しのこんな思い…誰にもしてほしくない。もちろんサキにも。俺はもう人を殺した。あと一人二人殺そうと…何も変わらないから…。」
あの豪邸の前でぶつかったサキの腕をなぜ俺が掴んだのか、なぜサキの素性が妙に気になったのか、それは…俺とサキがとても似ていたからだと分かった。
:09/07/25 14:25
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#36 [LucK]
「それでもサキはその義母を本当に殺したい?」
俺はサキの手を握り返し、目を見て尋ねた。
「………」
サキは俺の手をギュッと強く握り重そうな口を開いた。
「殺したいです…。」
固い決意が見えた。俺はその決意を曲げる事はできないだろうと感じた。
「でも…あなたに殺してもらうなんてできません!あたしは…あたしの手で…」
:09/07/25 14:34
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#37 [LucK]
サキには、そんな事をしてもらいたくなかった。つらい過去を背負い今を生きるサキに、それより重い過去を背負わせるなんて無理だ。
こんな思いをするのは、俺だけで十分だよ…
「俺が殺してやる。」
「いやです!」
「どちらにしろ金を払って他人に殺させるつもりだったんだろ?」
「…………」
「俺がやる。やらせてくれ…」
:09/07/25 14:42
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#38 [LucK]
「…な?たのむ。俺は大丈夫だから。言い方はおかしいけど、俺が殺したい。そんなヤツは俺が殺したいんだ!」
サキは黙って下を向き悩む仕草をしている。さらに俺は頼み続けた。俺は声は届いていたのだろうか。
サキは少しして軽く頷いた。そして
「でももしあなたがその後に罪悪感を感じたなら、それは間違いです。殺すのはあたしです…全部あたしの意志です…。」
と言った。
:09/07/25 14:52
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#39 [LucK]
「初対面のあたしに…なんでそんなに言ってくれるんですか?」
「サキは…俺と同じ苦しみを味わってるから、サキの気持ちがよく分かるんだ。」
「…ありがとう。」
それからサキと俺は色々な話をした。俺の名前、年齢、過去の詳しい話、今の生活。
話せば話すほど、サキは俺と似ていた。
:09/07/25 20:50
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#40 [LucK]
何時間話しただろうか。窓から見える景色はいつのまにか暗くなっていた。
「…やっぱり、翔太さん(俺の名前)に殺してもらうなんて無理です…。翔太さんみたいないい人はいません。そんな人に…頼めないです。」
サキは俺の目を見つめ言った。
:09/07/25 20:57
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#41 [LucK]
「…俺はもういいんだ。この先誰を何人殺そうと何も変わらない。それなら、こんな気持ちを背負っていく人間を一人でも少なくしたいんだ。俺にまかせてくれ。」
俺の本心だ。サキみたいな女の子が手を汚す必要なんてない。子供に地獄を見せるような親は、俺の手で殺してやる。
あの日あの時の感情が、再び溢れてきたんだ。後先も考えない感情が。
「………翔太さんの気持ちは嬉しいです。少し…考えさしてください。」
サキはまた俺の手を握り、言った。
:09/07/25 22:21
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