太陽と夏の空
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#271 [ラビ]
監督「あんまり泣いたら宮本が心配するぞ」


達矢「そうですけど…泣かないなんて…無理っすよ」


監督「そうだな。悪い悪い。お前はずっと宮本を見てきたんだもんな…。」


監督の言葉に、俺はまた涙を流した。

達矢「俺…悔しいです…。ヒロキが甲子園前に死ぬなんて…有り得ない…」

⏰:06/09/05 22:31 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#272 [ラビ]
泣く俺の頭をまたポンポンと叩き、監督は優しく言った。


監督「俺も本当に無念でならない…。悔しいな。神様もずいぶんヒドイことするモンだ」

監督も泣いているようだった。


静かな待合室で、鼻をすする音が響く。

⏰:06/09/05 22:35 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#273 [ラビ]
しばらくすると、監督がゆっくりと口を開いた。


監督「なぁ…お前、1番着ないか?」


達矢「…え?」


監督「ヒロキがいなくても甲子園出ないわけにはいかないだろう?大会ではお前をピッチャーで戦おうと思ってる…。どうだ?」


俺がピッチャー…。


俺が…ヒロキの変わり…?

⏰:06/09/05 22:42 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#274 [ラビ]
背番号1番はヒロキの番号だ。


俺はショートだから6番…。


監督「ショートには他の奴を入れるよ。ヒロキも変わりに1番を着てもらうとしたら、親友であるお前に着て欲しいと思うだろう」


俺は困った。

確かに…ヒロキも俺に着ろと言いそうだ…。

だが俺は…。


俺は答えを決めた。

⏰:06/09/05 22:45 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#275 [ラビ]
達矢「…着ないです。」


監督は意外な返答に驚いていた。

監督「どうしてだ?ピッチャーは嫌か?どう考えたってピッチャーはお前しか…」


達矢「そうじゃないんです」


俺は監督の言葉を止めた。

⏰:06/09/05 22:49 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#276 [ラビ]
達矢「ピッチャーをやるとか、やらないとかじゃなくて…。背番号1はヒロキのものです。他の誰のものでもありません。」


俺はまっすぐ監督を見て訴えた。

達矢「ウチのエースはヒロキです。だから…ヒロキ以外の奴が着る資格は…ないっ…です…」


話してる途中でまた涙が溢れてきた。

背番号1はヒロキの番号。

それ以外何でもないんだ…。

⏰:06/09/05 22:54 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#277 [ラビ]
達矢「ヒロキは…愛川高校の…ピッチャーですよ…」


俺が涙ながらに話すと、監督はニコっと笑ってそうだな、と言った。


監督「そうだな。宮本はウチのエースだもんな…。よし、そのままで行くか」

そう言うと、監督は立ち上がった。


監督「チームの皆からは俺が報告しておく。今日の練習は中止だな…。お前は学校来なくていいからゆっくり気持ちを落ち着かせておけよ。」

⏰:06/09/05 23:02 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#278 [ラビ]
俺はハイと返事をして、また下を向いた。


監督「じゃあな」


そう言って監督は病院を後にした。





…こんな日でも空はあの時のように青くてキレイだ。


ゆっくりと雲が流れ、いい野球日和。


甲子園まであと3日…。

俺は立ち上がり、また病室へ戻った。

ヒロキに…

別れの言葉と感謝の言葉を伝えに。

⏰:06/09/05 23:08 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#279 [ラビ]
【8章―先発投手は背番号6】

チュンチュン…


スズメが鳴いている。


…朝だ。


俺は昨日、あのあと家に戻ってひたすら寝た。


起きていたら涙が止まらないし、ツラくなるだけだった。


「うぅ〜ん…」

⏰:06/09/06 15:54 📱:W32SA 🆔:OSoUVjEk


#280 [ラビ]
俺は重たい体を起こした。



昨日、ヒロキが死んだっていうのに


何ひとつ変わりない朝だった。



「着替えなきゃ…」


今日は練習だ…。


俺は練習なんて気分じゃなかった。

⏰:06/09/06 16:08 📱:W32SA 🆔:OSoUVjEk


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