Traumerei‐トロイメライ‐
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#32 [moeco◆eedZl7e0Rw]
第一部
第一章【出会い】

⏰:10/04/02 12:46 📱:N03A 🆔:vPG502HI


#33 [moeco◆eedZl7e0Rw]
真夏日。


とにかく暑い。


騒がしいセミの鳴き声が、いよいよ夏のうだってしまいそうな暑さをかきたてる。


太陽が駐車場のアスファルトを照りつけて蜃気楼が揺れていた。

⏰:10/04/04 19:34 📱:N03A 🆔:fRcR2/pM


#34 [moeco◆eedZl7e0Rw]
「おい、宇佐美」


ゴミ箱の分別をしていると店長がずかずかと近くへやってきた。


顔を見るかぎり僕に良くないことだと今までの経験による直感で知って、気分がますます下がった。



店長は汚いものを見るような目で僕をにらみつける。


僕も黙ってにらみつけた。


「お前昨日ゴミ箱の口、ちゃんと縛ってなかったろ」

⏰:10/04/04 19:35 📱:N03A 🆔:fRcR2/pM


#35 [moeco◆eedZl7e0Rw]
「縛りましたよ」


「ウソつけ。昨日オレが倉庫にゴミ袋移動しようとしたとき持ち上げただけで中身が出ちまったんだよ。お前の縛りが緩かったからじゃねーかコラ」


店長は握りこぶしを僕の胸にぐいっと押しあてた。



またいつものいちゃもんづけが始まった。

毎日やっててよく飽きないよな。


僕はため息をついた。

⏰:10/04/04 20:37 📱:N03A 🆔:fRcR2/pM


#36 [moeco◆eedZl7e0Rw]
「カラスが空に群がってましたから、あいつらがつついて破ったんでしょ。なんなら」


僕は店長の毛深い握りこぶしをつかみ、強く押し返した。



「僕が確かめてきますよ。倉庫」


「……ああ? ……めんどくさいからよけいなことすんじゃねぇ。それよりお前、なに襟のボタンあけてんだ。バイトのくせして……最近のガキ(高校生)は制服もきちんと切れねーのか」

⏰:10/04/04 20:39 📱:N03A 🆔:fRcR2/pM


#37 [moeco◆eedZl7e0Rw]
「クールビズです」


「……ナメてんのか? 目上に向かって生意気なんだよ気に入らねー。クビにされてーかこの野郎」


店長が握りこぶしを振り上げたとき、花さんがストップーと叫びながら走ってきて段ボールで店長の頭をたたいた。



うお。


いつもながら……

間近でみると圧巻だ。

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⏰:10/04/04 20:41 📱:N03A 🆔:fRcR2/pM


#38 [moeco◆eedZl7e0Rw]
たたいたときの尋常ならない音からして中身が相当重いらしく、すごく痛そうだった。


目を丸くする店長をよそに、花さんはさわやかな笑顔で「一件落着だね」と言った。



いやにはつらつとしてるな。

いつもだけど。


高い位置で束ねてある髪についた、ひまわりの髪飾りがゆらゆら風になびいていた。


なにも終わってないと思うけどそこはあえて突っ込まない。

⏰:10/04/04 20:44 📱:N03A 🆔:fRcR2/pM


#39 [moeco◆eedZl7e0Rw]
「いつもケンカばっかりしてー、止めに入るあたしの気持ちも察してよね。店長もなんで毎日宇佐美クンにつっかかるんですかー?」


「あのな、オレじゃねぇよ。」


「かわいそうじゃないですか。マジメな若いコいじめるなんてカッコ悪いですよー」


花さんと店長がもめ始めた。

これも日常茶飯事だ。

⏰:10/04/04 21:43 📱:N03A 🆔:fRcR2/pM


#40 [moeco◆eedZl7e0Rw]
二人の騒がしい声を背にして、僕は空いたレジへ向かった。


店内は冷房がきいていて涼しい。


くそ暑い外とはまるで別世界だった。




一人っきりの涼しい店内。

ようやくリラックスできた。


「はあ……しんどー」

⏰:10/04/04 21:44 📱:N03A 🆔:fRcR2/pM


#41 [moeco◆eedZl7e0Rw]
このコンビニで働き始めて二年たつけど、僕はいまだにあのおっさん(店長)に慣れない。


向こうも僕のことをしゃくにさわる奴だと思ってるみたいだけど、それはお互い様だった。


僕も嫌いだった。



ただ単に性格が悪いから嫌いってのもあるけど、それとはまたすこし違うかもしれない。

⏰:10/04/04 21:52 📱:N03A 🆔:fRcR2/pM


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