Traumerei‐トロイメライ‐
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#21 [moeco◆eedZl7e0Rw]
「あ……いけない、昼休み終わっちゃう……。ユータ君、一緒に病室戻ろうか」
「うんっ」
二人は黒木の病室をあとにして廊下を歩き出したが、ふと谷川が足を止めた。
「どーしたの?」
:10/04/01 12:08 :N03A :XtlM9Yjo
#22 [moeco◆eedZl7e0Rw]
「黒木さんとこの窓閉め忘れてたぁ……。雨が降ったら大変だから、……ごめんなさい、ちょっと閉めてくるね」
「タニタニってほんっとドジだなー。フチョーさんに叱られてばっかりだもんねー」
悪態をつきながらも悠太は谷川のあとをついていく。
谷川は小さく笑った。
「んもー、止めてよね」
:10/04/01 14:22 :N03A :XtlM9Yjo
#23 [ゆっちゃん]
すごくおもしろいです
頑張って下さい
:10/04/01 15:46 :D705i :mmq1ec2g
#24 [moeco◆eedZl7e0Rw]
ドアをスライドさせて中に入ろうとしたとたん、二人の顔からぴたりと表情が消えた。
それは――
信じられない光景だった。
黒木が立っていたのだ。
ベッドの近くにあった点滴バーをつかみもたれかかって、ずるずるとこちらへ歩んできていた。
息が激しく、いつ倒れてもおかしくない足取りで。
:10/04/01 17:15 :N03A :XtlM9Yjo
#25 [moeco◆eedZl7e0Rw]
「う……動いてる……クロキさんが……わぁぁ」
悠太がへなへなと座り込んだ。
あまりの驚きに我を忘れていた谷川は、あわてて黒木にかけよった。
谷川に支えられると、黒木は力尽きしなだれてきた。
「黒木さん!」
こんな奇跡が……。
ああ、神様!
:10/04/01 17:16 :N03A :XtlM9Yjo
#26 [moeco◆eedZl7e0Rw]
「……ユータ君っ、急いでナースステーションに行って看護師さん連れてきてっ! お願い!」
「わ、わかった!」
悠太は弾けるようにかけだした。
黒木の息がますます荒くなる。
胸を押さえていた。
「胸が痛いですか?」
谷川が黒木を寝かせようとしたときだった。
:10/04/01 17:18 :N03A :XtlM9Yjo
#27 [moeco◆eedZl7e0Rw]
突然、黒木は谷川の右肩を凄まじい力で掴んだ。
谷川のきゃしゃな肩がギリギリとひねりあげられ軋んだ。
「い……痛い! は、放してくださ……」
「純は……どこだ……」
うなるように低い声で黒木が呟いた。
谷川が黒木の手から逃げようと暴れるほど、黒木はさらに強く肩を握りしめた。
:10/04/01 18:11 :N03A :XtlM9Yjo
#28 [moeco◆eedZl7e0Rw]
「じゅ、ジュン? 落ち着いてください! 大丈夫ですから……大丈夫ですからっ……い……痛い!」
「純はどこなんだ……!」
あわただしくバタバタと、血相をかえた数人の看護師たちが廊下をかけてきた。
その誰もが黒木の姿を見るなり驚きの声や表情をあらわにした。
まさか、こんなことが……!
:10/04/01 19:13 :N03A :XtlM9Yjo
#29 [moeco◆eedZl7e0Rw]
「黒木さん、落ち着いてください! じっとしていてください」
看護師長が黒木に近づき、谷川の肩を今にも潰す勢いで掴む黒木の手をどかそうとした。
しかし剥がれない。
黒木は苦しげに歯ぎしりをしながら、鋭いギラギラとした目で看護師長をみていた。
まるで捕えた獲物を逃がすまいとする飢えた獣のようだった。
看護師長はそのあまりにも本能的な恐ろしさに思わず身震いをした。
:10/04/01 19:52 :N03A :XtlM9Yjo
#30 [moeco◆eedZl7e0Rw]
看護師の一人が呼び出した院長が黒木の病室に飛び込むなり、彼もまた絶句した。
はっきりとした意識をもって、黒木が動いている。
これは日本の――いや、もはや世界を揺るがす回復劇だった。
遷延性意識障害、いわゆる植物状態に陥ると脳幹以外の脳機能は動かなくなるか死滅する。
一概には言えないが、三ヶ月を目安に回復率は下降する。
回復例はいくらかあるが黒木のように昏睡状態から六年経ち、なおかつ目覚めしなにこれだけ動けるとは……。
黒木に奇跡の神が加担したとしか考えられない。
:10/04/01 23:19 :N03A :XtlM9Yjo
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