*- エロチュウ -*
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#3 [亜夢]
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「だ…だめだよ…」

アタシの働いてるBARに来る常連客には厄介なやつがいる。

同じビルの3階でホストをしてる“皐月”と名乗る男だ。

「―店長いいんですか?…」

またどうせトイレで女の子を“アッチ”で口説いてる。

「かなりお金使ってくれてるから、きつく言えないんだよなあ…」

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⏰:10/05/17 05:21 📱:F02B 🆔:Za81RYNg


#4 [亜夢]
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うちの店はカナリ小さな個人店だ。 だから働きやすくて数ヶ月、アタシもここにいるんだけれど―…

さすがにお客さんや彼女ていう役割についた何人もの女とトイレで“ナニ”をされるのは不愉快だ。

「1回言わないと、分からないんですよ!!!」

アタシはトイレに向かう。

「響サン!!!」

アタシは皐月サンのことを名字でよんでいる。

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⏰:10/05/17 05:25 📱:F02B 🆔:Za81RYNg


#5 [亜夢]
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「なあに?」

すぐさま、彼はドアをあけてニッコリ微笑む。

「あむむも混ざりたいの?」

響皐月はアタシのことを馬鹿にいて“あむむ”とか呼んでいる。

「なにいって―…」///

アタシは思いっきりドアを閉め直す。

ああ、また言おうとおもってたのにいえなかった。

「諦めるしかないですよ。」

苦笑する猫みたいな顔の店長。

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⏰:10/05/17 05:28 📱:F02B 🆔:Za81RYNg


#6 [亜夢]
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響皐月(ヒビキサツキ)―…

本人曰く21歳。
(アタシのふたつ上…)

身長は高くて足が長い。

どうみても細い体。

顔は、雑誌にのってるモデルさん並に小さいし、

3階にあるホストクラブでは常にナンバー1だとか!!!

月に稼いでる額がウン万円―…

ただ異常なくらいの女好きなことはみてとれる。

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⏰:10/05/17 05:32 📱:F02B 🆔:Za81RYNg


#7 [亜夢]
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「ねえ、あむむ〜ん☆」

俺を癒して♪と言いながらスコッチをロックで飲む渋い男だったりもする。

「はい…て呼び方なおしてくださいよ!!!」

「うん、なおすよ☆癒してくれたら。」

「いったい何したら癒されるんですか?」

う〜んとね、とイケメンは少し天井のへんをみながら、人差し指で氷をカラカラと回す。

「チュウしてくれたら絶対癒されるんだけどなあ〜」

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⏰:10/05/17 05:36 📱:F02B 🆔:Za81RYNg


#8 [亜夢]
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「お客さんに色かける際、してあげてください―…」

ナンバーにはいってるとは言え、色恋で落とすなんて最低。 だけど響サンがどんな営業してるかなんかどうでもいい。

「あむむ、知ってた?俺ね、ポリシーがあって好きじゃない子とはキスしないんだよ。」

「ほかはするのに?」

「そう!!!!」^^

笑顔で言う響サンに首を傾げながらもへえ、と言うアタシ。

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⏰:10/05/17 05:38 📱:F02B 🆔:Za81RYNg


#9 [亜夢]
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「だから、キスしていい?」

ドキッ―…

流れからして“俺はお前のこと好きだからキスしていい?”って聞くんだよオーラ満載だからね。

水商売のひとってこわいこわい。

それに比べてあのひとは―…

チリンチリン♪

「中谷さん、いらっしゃい。」

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⏰:10/05/17 05:41 📱:F02B 🆔:Za81RYNg


#10 [亜夢]
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「マスター今晩は。 おっ亜夢チャン、久しぶりだね。」

いつものカウンターの端に座って、赤ワインを飲む中谷サンに、アタシは胸きゅんなのだ。

肌は少し焼けてて、中肉中背でひげがいい感じ。 食通だし、いろんな話をしってる28歳の彼―…

「なに、あむむって俺よりあっちのが好みなの?」

「ええ!!!!」

勿論ですとも、と返事したかったけど、あえてやめといた。

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⏰:10/05/17 05:44 📱:F02B 🆔:Za81RYNg


#11 [亜夢]
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「ひっでえ〜…俺みたいなイケメンを目の前にして…ってコラ!!! 人の話聞けっ!!!」

アタシが熱い眼差しで中谷サンをみてると響皐月がわがままばっかり言って、相手してオーラをだしてくる。

子犬かっ!!!!

「わかりました〜どうしたんですかあ〜…」

「君、僕が真剣に君と付き合いたいっていったらどうする?」

「へ?」

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⏰:10/05/17 05:47 📱:F02B 🆔:Za81RYNg


#12 [亜夢]
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「もし俺が付き合ってって、あむむに告白したらどうする?



@付き合う

A無理っていう

Bちょっと意識する

C実はその台詞待ってたのよ…

さあどれだ!!!!」

「Aっすね。」

質問の3秒以内に答えるとまた子犬みたいにくうん、といって顔をカウンターにひっつける。

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⏰:10/05/17 05:50 📱:F02B 🆔:Za81RYNg


#13 [亜夢]
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「むしろなんですか…そのC番とかどう考えてもおかしいでしょ!!!」

「確かに。 俺ってそんなにお笑いのセンスあったっけ…イヒヒ。」

ひとりで響皐月が飲みにくるときは、客と来るときと全く違う雰囲気だ。

仕事の響サンはきりっとしてて男らしくて、いまみたいに甘えただったり面白いキャラだったりがなかなかない。

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⏰:10/05/17 05:53 📱:F02B 🆔:Za81RYNg


#14 [亜夢]
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ある日のことだ。

アタシが自転車をとめてBAR CIELに向かってると…

「よっ♪」

後ろから声をかけられる。

「この子が皐月サンのお気に入りのバーの子ですか?」

後輩ホストらしき子あわせて全部で10人くらい。

「いまからCIEL行くとこなんだよね♪」

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⏰:10/05/17 05:57 📱:F02B 🆔:Za81RYNg


#15 [亜夢]
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と、ダーツもありカラオケのある店を後輩ホスト君達も気にいった様子。

「しかもマスターのご飯まじうまあい!!!」

ココにはBAR CIEL特製の一品料理なんかもおいてある。

日によってマスターの腕と食材でかわるけれど。

マスターは愛嬌はいいし、サービス精神あるし、料理もうまけりゃ、カクテルつくらせれば最強だったり。

おまけにダーツはカウントアップで700をゆうにこえたりもする。

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⏰:10/05/17 06:00 📱:F02B 🆔:Za81RYNg


#16 [亜夢]
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「今日は俺のおごりだから、じゃんじゃん飲んで遊べよ。」

響皐月はそういうと、いつも通り一差し指でロックアイスをカラカラとグラスの中で遊ぶ。

「…皐月君、今日は何を悩んでるの?」

マスターと響サンは意外と色んな話をしてるみたい。

「わかった。 また《あの子》のこと?」

その質問にも答えない響皐月。

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⏰:10/05/17 06:03 📱:F02B 🆔:Za81RYNg


#17 [亜夢]
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[あの子って誰だろ…]

思わず気になりながらもアタシはほかのホスト君に頼まれて、ブルドックを作る。

[まさか響皐月、ちゃんと本命いるんじゃないの―?]

フフン、意外と純情なんだなあとおもいながら出来上がったブルドックをホスト君に渡す。

「お姉さん彼氏いるの?」

「いませんよ―…」

そんな軽いやりとりをしてる。

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⏰:10/05/17 06:06 📱:F02B 🆔:Za81RYNg


#18 [亜夢]
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カランカラン♪

「わっ―今日は混んでるね〜…」

中谷サンと同僚のひとが店にはいってきた。

アタシはすぐにおしぼりを渡して、いらっしゃいませ、と声をかける。

「亜夢チャンはいつみても元気でかわいいね。 癒される。」

ニコリと微笑む中谷サン。

アタシはその笑顔だけで元気になれます〜!!!

と…

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⏰:10/05/17 06:09 📱:F02B 🆔:Za81RYNg


#19 [亜夢]
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「お兄さんの左手の薬指って―…」

「あ、え…」

突然ロックグラスを持ったまま、響皐月が中谷サンに声をかける。 左手の薬指―…?

「中谷サン、新婚だもんなあ〜」

ほろ酔いの同僚がそう言う。

いつも中谷サンは家族の話はしないし、アタシには『一人は寂しいよ』と愚痴ってたのに、うそだったんだ―…

ううん、アタシが勝手に独身ておもってただけだ―…

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⏰:10/05/17 06:13 📱:F02B 🆔:Za81RYNg


#20 [亜夢]
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トイレで少し深呼吸する。

馬鹿だ、既婚者に恋してしまうところだった。

ハアと息をはいた瞬間に溜まってたもの一気に出ていったからか、涙もぶわあってあふれ出した。

「亜夢のばかあ〜…」

コンコン。

「いまでます―…」

アタシは涙をふいて、

「ごめんなさ―…」

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⏰:10/05/17 06:15 📱:F02B 🆔:Za81RYNg


#21 [亜夢]
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「わっ!!!」

出ようとしたのに響皐月にトイレにまた詰め込まれた。

「さっきの客帰ったぞ。 どうせ泣いてたんだろ…?」

「なっ、泣いてないもん…」

「強がるなよ。 目元みてみろよ。」

アイラインが崩れてこすった後が出来てる。

「だっ…あた…エーン…」

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⏰:10/05/17 06:18 📱:F02B 🆔:Za81RYNg


#22 [亜夢]
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「ほら。」

ふわっと、自然に響皐月がアタシを胸の中に包み込む。

「ちょっ…」

「このほうが泣きやすいだろ。」

確かにそうだ。

あったかくて、ほっとするからクシャクシャになるまで泣いた。

「大丈夫になった?」

眉頭を落としながら聞く響皐月…心配してくれてんだ。

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⏰:10/05/17 06:20 📱:F02B 🆔:Za81RYNg


#23 [亜夢]
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「お礼はチュウでいいよ。」

「冗談はやめてくださいっ…そんなファーストキスは簡単に奪わ―…」

あれ?

響皐月の顔がすごくちかくにある。 ながいまつげ。 お人形サンみたい…じゃなくて!!!!

く、く、唇が…!!!

「ファーストキスがどうしたって?」

「―――」///

アタシのファーストキスさよなら…

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⏰:10/05/17 06:23 📱:F02B 🆔:Za81RYNg


#24 [亜夢]
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「憂鬱だ…」

大学の授業中にアタシは、ぼそっと呟く。

「アンタ今日はさっきから上の空じゃん〜〜どしたの?」

右から高校からの親友アリサ。

「アリサ、たぶんアレだよ。 愛しの中谷ッチに、嫁がいた〜〜とかじゃにゃい?」

ちゃらけて左から幼なじみの裕也がそういった。

「…裕也ってまじKYだわ。」

アタシはそういって深くため息をついた。 冗談でいったことがリアル…笑いとれないよね。(苦笑)

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⏰:10/05/18 03:08 📱:F02B 🆔:2tMYvgRI


#25 [亜夢]
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裕也は謝らなかったけど、(むしろ謝らなくていいんだけど…)アタシの大好きな苺みるくとメロンパンを買ってそっと置いてくれた。

「でもさ!!! 初体験を既婚者に盗られなくてよかったじゃん!!!」

グサリ―…

「え…?アンタその顔…捧げちゃったとかやめてよ!!!?」

焦り出すアリサ。

既婚者にはあげなかったけど…初キスは、尻軽で有名な女たらしのナンバー1ホストに持ってかれました…

なんて口が裂けてもいいたくなかった。

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⏰:10/05/18 03:12 📱:F02B 🆔:2tMYvgRI


#26 [亜夢]
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しかも!!!

その初キス奪われ事件で、キスの後からずっと胸がぎゅうってなってたなんて、死んでも言えない。

相手はあの響皐月だ。

「絶対むりむりむり!!!」

「…なんか亜夢、すごい百面相だけど…思い詰めてる?心配なんだけど。」

アタシ、だいぶテンションがおかしいことになっている。

今日はCIEL休みだから、裕也とアリサと放課後ゆっくりデートしちゃうんだ!!!

わすれよっと。

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⏰:10/05/18 03:15 📱:F02B 🆔:2tMYvgRI


#27 [亜夢]
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でも神様って大体意地悪だったりする…

「俺ちょっとTSUTAYA寄ってくる!!! スタバいるでしょ?ちょっくら待ってて〜♪」

上機嫌に裕也がCDをあさりにいく。 このパターンはよくある。 裕也がひとりでCDとデートしてるときは、アリサとアタシで色んな他愛もない会話をしながらコーヒーを飲む。

「あれ…今日はカプチーノじゃないんだ…」

ふうん、といいながらアリサは怪しいぞ光線をおくってくる。

しまった―…アタシは悩み事があるときは無意識にチャイとかに浮気してしまうのをアリサはよく知ってる。

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⏰:10/05/18 03:22 📱:F02B 🆔:2tMYvgRI


#28 [亜夢]
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週末、中谷サンが既婚者だと分かったこと…泣いてしまったら不意打ちに響皐月にキスされたこと…

気づいたら全部アリサにぶちまけてた。

「はあ…」

「ご愁傷様でした。」

アリサはフラペチーノを飲み干してそう言った。 アタシも同じ状況なら同じこといっただろう。

「そのホストさんは…亜夢にとってどうなわけ?」

どうって―…

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⏰:10/05/18 03:26 📱:F02B 🆔:2tMYvgRI


#29 [亜夢]
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う―ん…

「どうって言われても分からないかなあ〜…」

「じゃあ嫌いとか興味がないってことではないんでしょ? 意識してるなら、なおさらだけど、少し知ってみてもいい相手なんじゃない?」

そうなのかあ…アタシは、甘ったるいチャイを飲んで少し、うってなってしまった。 やっぱりカプチーノがいいや…。

と、

「お姉さん♪なにやってるの?」

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⏰:10/05/18 03:32 📱:F02B 🆔:2tMYvgRI


#30 [亜夢]
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素無視しようとしたら回り込んできて、ねえねえ〜…と話しかける。 夕方からナンパとかお断りだっつうの!!!

「あれ?CIELのお姉さんじゃん!!! みたことあると思ったあ〜♪」

この子は響皐月のとこの従業員だ。 確か彼氏いる?とか聞いてきたブルドック飲む男の子。

普段物覚えが悪いアタシも店のお客さんの顔と飲み物は覚えられる。

「皐月サンもすぐそこにいるんすよ〜♪」

て…呼ばなくていいからあああああ!!!!!
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⏰:10/05/18 03:36 📱:F02B 🆔:2tMYvgRI


#31 [亜夢]
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黒いパーカーを頭に被って大きめのサングラスに見慣れないノーセット。 全身真っ黒なのに、シルバーアクセと真っ赤な派手な鞄で、お洒落にコーディネートされている。

「あれっ…あむむ☆ 可愛い子ふたりで何やってんの〜?」

そんな響皐月は相変わらずアタシをあむむ、とか不思議な呼び方をする。

「皐月サン、そんなにCIELのお姉さんと仲良くしたらエース怒るのもわかりますよっ!!!」

ケラケラ笑う後輩たち。

わけのわかってないアリサ。

ここから消えたいアタシ。

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⏰:10/05/18 03:43 📱:F02B 🆔:2tMYvgRI


#32 [亜夢]
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「なに?…ナンパされてんの?この状況って。」

あっけらかん〜としながら裕也が分厚いショップ袋を両手に握りしめて帰ってきた。 な、ナイスタイミング!!!

「俺CIELの常連なんですよ。」

前々から裕也にはいってある。

どスケベ女たらしホスト響皐月がうちの店の常連サンだってことは。

「ああ、例のホストさんかあ。 噂はいろいろ亜夢から聞いてますよ。」^^

にっこり笑う裕也。

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⏰:10/05/18 03:46 📱:F02B 🆔:2tMYvgRI


#33 [亜夢]
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「すいませんけど、僕の大事な子…あんまり遊んであげないでくださいね☆」

にこりと再び微笑む裕也。

その言い方って【アタシ、裕也の彼女でえす♪】になってないか!!!?

それも迷惑!!!

「大丈夫ですよ!!! 手は出さないんで♪」

丁寧に微笑んで会釈すると、手を軽くふって響皐月たちは去っていった。

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⏰:10/05/18 03:50 📱:F02B 🆔:2tMYvgRI


#34 [亜夢]
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アタシ、妙に…響皐月がアタシと裕也が付き合ってるって思ってないかとか気にしてる。

裕也が言った言葉を、撤回して【うちら付き合ってないですよ?】なんていいそうにもなった。

なんなんだアタシ。

今日は月曜日。

シフトでは明日から4日連勤だ。

「次会ったらどんな顔しよ…」

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⏰:10/05/18 03:52 📱:F02B 🆔:2tMYvgRI


#35 [亜夢]
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火曜の授業は、なんだかいつもより長く感じた。

「たぶん―…響皐月のことが気になってるからだ。」

っっっ!!!

「アリサ〜…アタシの気持ちを勝手にナレーションしないでよう…」///

「でも合ってるデショ?」

クスリと意地悪に笑うアリサ。

「も〜…」

丁度タイミングよく鳴ったチャイムで、裕也は背伸びをして起きる。 全く気楽なやつだ。

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⏰:10/05/18 04:00 📱:F02B 🆔:2tMYvgRI


#36 [亜夢]
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8時に出勤。

シャツに黒いパンツ。 長い髪の毛をバレッタでまとめて、アタシは腰に黒いながめのエプロンをまく。 これがCIELのユニホーム。

そんな堅苦しいものはないけれど。

「店長おはようございます☆」

うん、おはようとマスターは言った。 このほんわかした雰囲気が好きなお客さんはかなり多い。

この店はリピーターが週に何回もくるくらい、ゆったりすごせるバーだ。

居心地がいいくせに、やたらいいムードが漂うこじゃれたバーだ。

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⏰:10/05/18 04:05 📱:F02B 🆔:2tMYvgRI


#37 [亜夢]
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珍しくギムレットがバーのところに置かれてある。

これを飲むとしたらうちのお客さんでは、何かの社長さんをしている村上さんだけだ。

「昨日村上サン来てたんですね!!!」

ううん、と首を横に振るマスター。

「昨日皐月クンがひとりで、ギムレット飲みにきてたんだよ。」

響皐月がギムレット?

「彼の癖を教えてあげようか、亜夢ちゃん。」

え?

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⏰:10/05/18 04:09 📱:F02B 🆔:2tMYvgRI


#38 [亜夢]
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「彼はね…スコッチをロックで飲むでしょう?」

ひとりで来るときは、確かにそれ以外飲んでるのを見かけない。

「彼、少し悩んだり、照れくさかったりすると…アイスをね、…こうやって人差し指でカラカラ回す癖があるんだよね。」

あ、そういえば…

「あとはね、気分が病んでたりすると…ギムレットを飲むんだよ。 彼って意外と繊細でね…」

まえに信用してた後輩をかわいがっててお金を貸したら飛ばれたことがあったらしくて、真剣にへこんでたとき、ギムレットを片手にマスターとお話してたんだって。

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⏰:10/05/18 04:13 📱:F02B 🆔:2tMYvgRI


#39 [亜夢]
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「あとひとつあるけど…聞きたい?」

うん、と縦に首を振る。

「皐月クンはね…亜夢チャンがいるときに絶対ギムレットは飲まないんだよ。 と、違う言い方をすれば、…彼は僕に君が休みか電話してくるんだ。 やすみですよ、というとギムレットを頼んで…人生や恋愛について話したりしてくるんだよ。」

にっこり優しく微笑むマスター。

「でもそれって、アタシがいたら邪魔だから確認なんじゃないですか?」

アハハと軽く笑ってマスターは首を横にふった。

「亜夢チャンもまだまだだね。 …彼が君の存在を気にしてるからだよ。」

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⏰:10/05/18 04:18 📱:F02B 🆔:2tMYvgRI


#40 [亜夢]
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「〜…だからそれってアタシに話を聞かれたくないからですよね?」

「うん、それはそうだよ。 だって君について話してるんだから。」

え?

「それは皐月クンも、君に言えるなら僕に相談したりしないだろうね。」

どういう意味?

カランカラン♪

「左渡さんいらっしゃい。」

焼酎ボトルを素早く出して、おしぼりをお客さんの手にそっとかけてあげる。

でも―…さっきのマスターが言ったことがすごく胸にひっかかる。

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⏰:10/05/18 04:21 📱:F02B 🆔:2tMYvgRI


#41 [亜夢]
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4連勤最後の日。

週2のアルバイトの子が月曜と土曜固定出勤なので、アタシは何かがない限り、火・水・木・金にCIELにいる。

―…結局、響皐月は来ない。

12時過ぎたときだった。

カランカラン♪

「やっほお―い☆」

裕也とアリサがふたりでカウンターに腰かける。 このふたりはアタシが仲良くさせたんだが、ふたりで飲みにいくほど仲がいい。

「今日も飲むぞお♪…とマスター!!! あれ食べたいっ!!!」

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⏰:10/05/18 04:26 📱:F02B 🆔:2tMYvgRI


#42 [亜夢]
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いつも裕也とアリサは、マスター特製のオムレツをたべたがる。 確かに美味しい。 本当に毎回食べるたびにおいしくなる。

「亜夢、アタシはね〜…カルアミルクくださあい。」

ふたりは自由に飲んで食べて、ダーツして遊んでる。 アタシはそれをみてただ笑ってるだけ。

と、

カランカラン♪

金曜の12時なのに珍しく響皐月がひとりでやってきた。

「あれっ…」

響皐月はアタシをみて目を丸くする。

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⏰:10/05/18 04:29 📱:F02B 🆔:2tMYvgRI


#43 [亜夢]
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「響サン、何飲まれます?」

なんでアタシをみて驚いたのかは知らないけれど…なんだか不愉快だ。

「えとギム〜…じゃなくて、いつもの…」

いつものとはスコッチ。

ギムレットて今言いそうになったってことは何かに悩んでるんだな?ふうん〜…

裏方からオムレツを持ったマスターがでてきて裕也とアリサに渡した。

「また何かほしかったら言ってね。」

もちろん響皐月は裕也とアリサをみて、あれ?て顔を作る。

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⏰:10/05/18 04:32 📱:F02B 🆔:2tMYvgRI


#44 [亜夢]
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「おまえの彼氏と友達じゃん…」

やっぱり勘違いしてた。

「あれ、アタシの幼なじみと親友。 どっちも長いつきあいのおともだちです〜…彼氏なんか出来た試しがないって前言ったじゃないですか。」

アタシが呆れながらそういうとスコッチをコースターの上に置いた。

「やあ、皐月クンおはよう。」

「マスター!!! あいついないってい〜〜〜〜〜」

ごにょごにょと内緒話をするふたりを背にしてアタシも裕也とアリサのオムレツに便乗しておいた。

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⏰:10/05/18 04:36 📱:F02B 🆔:2tMYvgRI


#45 [亜夢]
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「そろそろ皐月クンもはっきりしたほうがいいんじゃないかな、と思ってね。 君も子供ではないんだし。 あんな子を野放しにしておくと、後悔するよ。」

とマスターの声がはっきり聞こえた瞬間、

カランカラン♪

「亜夢チャン―…」

中谷サンが店にひとりではいってくると、響皐月と裕也&アリサの間にひとりで座る。

「赤ワインですか?」

「ああ、頼むよ。」

胸に針金がささったみたいに凄く痛む。

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⏰:10/05/18 04:39 📱:F02B 🆔:2tMYvgRI


#46 [亜夢]
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新しいボトルをあけて、それを中谷サンにそそぐ。

「亜夢チャン…ごめんね。 僕は君を傷つけたよね? 言い訳に聞こえるかもしれないが、きいてくれるかい?」

それは中谷サンがお嫁サンとうまくいってないこと、アタシをみると元気をもらえること、―…淡々と語られた。

「僕はたぶん、君にこうして会えるから、頑張れるんだよ。」

嘘つき。

大人はやっぱり嘘ばっかりなんだよ。

「ありがとうございます」

アタシは何の感情もいれずにその言葉だけを伝えた。 アタシが中谷サンに対するあこがれはとっくに消えてた。

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⏰:10/05/18 05:10 📱:F02B 🆔:2tMYvgRI


#47 [亜夢]
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そうこうしてるうちに、数十分すると中谷サンはチェックをして帰った。 アタシの態度でもわかったんだろう。

アタシって、まだまだ浅はかだなあ…と改めて思った。

「亜夢。」

へ?

思わず方向が違うとも裕也たちのほうをみる。 ふたりはふたりで、キャッキャ言いながら遊んでる。

てことは…

「亜夢って呼ばないから違和感…かな?」

ロックグラスを片手に苦笑いする響皐月。

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⏰:10/05/18 05:23 📱:F02B 🆔:2tMYvgRI


#48 [亜夢]
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「亜夢、俺と今度デートしない?」

ロックグラスの中にはいったアイスを見ながら響皐月は言った。

「いやですよ。 変なことされそうですもん。」

アタシは苦笑しながらそう答える。

響皐月は子犬が耳を下げるときみたいな顔を作る。 両肘をテーブルにつけてアイスをただ、じいっと見つめる。


「…べ、別にいいですけど。 甘いもの御馳走してくれるなら…」

「まじ?やった☆ 俺もさ〜甘いもの大好きなんだよね〜特にね―…」

カランカラン♪

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⏰:10/05/18 05:27 📱:F02B 🆔:2tMYvgRI


#49 [亜夢]
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「やっぱりココにいたの、皐月…」

胸元がセクシーに開いた服をきたお姉さんが響皐月の隣に座ると顎を肩に乗せる。

「こんなお子様騙しちゃかわいそうでしょう?」

と耳元で言うわりに、声がでかい。 わざとアタシの耳にはいるように話している。

「あむむはイイ子だから…俺の悪い誘いにはのってくれないよ。 からかってるだけだもん♪俺冗談の固まりだから〜☆」

クスリとほほえむと時計で時間を確認する響皐月。

「あやの、同伴してくれんの?」

「だからココにきたんでしょ」

アタシは蚊帳の外―…

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⏰:10/05/18 05:31 📱:F02B 🆔:2tMYvgRI


#50 [亜夢]
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お会計を済ませると、あやのって女の人は響皐月の腕に自分の腕を絡めてでていった。

【俺冗談の固まりだから☆】

【からかってるだけ…】

響皐月のいった言葉がアタシの胸をチクチク突き刺す。

また、泣いてしまいそう。

裕也もアリサも2時すぎには店をでて酔っぱらったまま自転車を押してかえっていった。

裏方でカチャカチャ洗い物をしてるマスター。

こっそりトイレに入るとまた涙が溢れてきた―…

「もお〜…亜夢のばかあ…」

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⏰:10/05/18 05:35 📱:F02B 🆔:2tMYvgRI


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