ピンクな気分。V
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#1 [のの子] 10/07/27 10:59
#715 [のの子]
恐い気持ちは今もある。
でも走り出した俺の胸にあるのは彼女の最後に見た笑顔と、真琴の横で笑っていた時の笑顔‥
こんな俺だけど、少しだけ思ってたんだ。
いつか自分に大切な人ができた時‥
もしも君と会う事ができたら、
俺が君を笑顔にしてあげたいって、思ったんだ。
そして橋に繋がる道へ右に曲がった時、電車の走る音が俺の鼓膜をハッキリと大きく揺らした。
「はぁっ‥はぁっ‥‥いたっ‥」
君はそこにいた。
手摺りに捕まりながら何かを探すように、空を見上げて‥
.
:12/04/06 09:40
:SH06A3
:vQLPcnjc
#716 [のの子]
ずっと空を見上げる聡美は俺に気付かない。
その間にも橋の下を電車が通過していく。
ドクンッ ドクンッ‥
ここまできてどう声をかけようか悩んでると、聡美が空から視線を落としていく。
っ‥‥
ずっと先にある、何かを見つめるその瞳はよく知っているモノだ。
そこにいるのは聡美で、でも微かにかぶって見えたのは【俺自身】だった。
‥同じ、なんだろうか。
彼女も俺と同じで、
「‥何っ、してるの‥?」
突然声をかけられ驚いた聡美が、こちらに向いて俺をじっと見つめた。
「‥っ?‥あっ‥‥」
聡美は俺に気づいてまた驚いた顔をする。
そりゃそうだ。さっき別れた男がまた現れたのだから。
.
:12/04/06 13:26
:SH06A3
:vQLPcnjc
#717 [のの子]
なんで、と首を傾げた聡美に俺はぎこちない動きで近づく。
「あああのっ‥!」
「っ!?」
緊張のせいで噛み噛みの俺に、聡美が一歩後ずさる。
‥‥お、落ち着けっ俺。恐がらせてどうすんだ‥
「えっと、‥別に後つけたわけじゃないからっ!たまたま俺もこっちに用があって、そしたら君がいて‥」
言い訳にしか聞こえない俺の話に、聡美は警戒しながら静かに‥いや、ただ聞いてくれていた。
「そういえばさっきちゃんとお礼言えてなかったかもって思ったら、なんかもう一回ぐらい話―」
すると聡美が笑って紙を見せてきた。
『体調はもう大丈夫そうですね。良かった。』
「あっ、うん。本当にもう大丈夫。‥ああいうの初めてなったから正直テンパってたんだけど、本当助かった。ありがとう‥」
聡美の笑った顔を見てやっと冷静になりだした俺がまた小さく頭を下げると、聡美は慌てて首を横に振る。
『私そんな大した事してないでっ!!』
聡美は照れ隠しなのか、顔を少し俯かせた。
「あの‥ここで何してたの?空、見てたよね。」
俺より小さな聡美はこの大きな空に何を見てたのか。
『星になれるかなって考えてたんです。』
.
:12/04/07 11:36
:SH06A3
:W7MDuudI
#718 [のの子]
聡美は手摺りによりかかる。
『生まれ変わりがあるなら人間以外になれるのかなー、なら星になるのもいいかもしれないとか。私変わってますよね?』
そうして微笑みながらまた空を見上げる横顔に、俺は唇を噛み締める。
同じだ。
俺と、同じっ‥
「‥俺も、生まれ変わるなら星になりたいって思った事ある‥ってか調度この前なんだけど‥」
まだ暗くなりだした空には星は見えない。
「俺って‥大切な人を傷つけてばっかで、‥だから星になれば誰も傷つけないし、悲しい思いもしないですむからってそんな理由。俺も変わってるでしょ?」
苦笑いしてみせると、聡美は瞬きせず勢いよく首を振る。
ドクンッ ドクンッ
俺はまだ震えてた。
足も、手も、心も‥
「っ‥あの、さ‥さっき俺、『このまま死ぬのかも』って思った。誰にも気付かれないまま死ぬのかなって思って‥でもそれも仕方がないっていうか‥俺はもう全部を諦めてたから‥」
こんな話をこの子にしても、世界は何も変わらない。
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:12/04/07 16:27
:SH06A3
:W7MDuudI
#719 [のの子]
これはただの懺悔‥
「そしたら君が、声をかけてくれて‥」
いや、
「‥すごい‥‥嬉しかった。」
―‥告白だ。
電車が俺達の下を勢いよく通り過ぎていく。
恥ずかしさから聡美の顔がまともに見れない。
「君がいてくれて、俺は助かった‥」
全ては話せない。
でも、この気持ちは伝えたい。
「君がいてくれて良かった‥」
今の君に届くだろうか‥
「だから、星になんかならないでほしいって思う‥」
星は綺麗だ。
でもその星との距離は遥か遠くすぎて
.
:12/04/07 16:36
:SH06A3
:W7MDuudI
#720 [のの児]
星達もきっと独りぼっちなんだよ。
今の俺ならわかるんだ。
星になったってこの孤独が、寂しさがなくなる事なんてない。
なら今のままでいよう‥?
だってほら、
俺は君を見つめて、君は俺を見つめてる。
俺達がこうして出会う事ができたのだって、
今を生きてるからだ‥
「だから、死なないで‥君は死んじゃダメなんだっ‥」
そう、この時の聡美は俺と同じで
死の陰を潜めた瞳で世界を見つめていた。
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:12/05/18 10:35
:SH06A3
:cV8Y6ylw
#721 [のの子]
「っ‥!!」
聡美は目を見開いたまま俺を見つめた。
俺も黙ったまま聡美を見つめ返す。
「‥っ‥、‥‥」
動揺を隠せない聡美はすぐに真っ直ぐ見つめる俺から目を反らし、紙に何か書き出した。
『なんでわかったんですか?』
意外にも聡美は否定せずにただ気まずそうにそれを見せてきた。
「言ったでしょ?俺は諦めてたって‥俺も君と同じ。だから通じるモノがあったのかもね‥」
どんな表情をすればいいかわからず、
「―‥俺も、死のうと思ってたんだ。」
俺は笑う事しかできなかった。
聡美はそんな俺に複雑な瞳を向ける。
『どうして死のうと思ったんですか?』
避けては通れないだろうと予想していた質問に俺は苦笑しながら小さなため息を漏らす。
「‥ずっと俺は、自分の存在価値がわからなかった。どうして俺はこの世界に生まれて、こんな人間に生まれて‥なんのためにって‥でも答えを求めれば求めるほど俺は人を傷つける。」
こんな俺の話は聞かせたくはなかったけど、聡美と向き合う事は『もう一人』の俺とも向き合える気がしたんだ。
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:12/05/21 15:04
:SH06A3
:HmFvjA6M
#722 [のの子]
「俺は人を傷つける事でしか自分の存在を見いだせなくて‥それは間違ってるって気づかせてくれた人も、結局俺は傷つけた‥変われると思ったのに‥俺のせいでっ‥だから俺は死の―」
真っ直ぐ見つめる聡美と被って見えたものに言葉が詰まる。
「‥そうだよ、死ぬべきだと思ったんだ‥でもそんな俺を君は見つけた‥俺なんかをっ‥」
聡美と被って見えたのは、小さい頃の『俺』だった。
じっと不安げに、
何かに恐れ、
上目遣いで見つめる『俺』
俺は両手で顔を覆う。
―‥そうだ。
俺が今まで人を傷つけてまで自分の存在を感じようとしていたのは、
ただ俺を見てほしかったんだ。
相手の瞳に写る自分を見つめては
ほっとしていたんだ。
俺はここにいるって‥
それなら俺は――
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:12/05/23 09:57
:SH06A3
:T7DIK6kc
#723 [のの子]
なんでこんな簡単な事がわからなかったんだ‥
「こんな世界って思ってたのに‥嫌いだって思ってたのに、」
俺は両手を力無く下ろす。
「俺はこの大嫌いな世界が、‥どうしても好きなんだっ‥諦め、きれなっ‥」
ポロリと落ちた涙がアスファルトの地面へ落ちていった。
神様は俺に優しくない。
でも俺に家族を、
彰を、真琴を、
この子を引き合わせてくれた。
‥嫌いになんかなれる訳ないんだ。
大切な人がいるこの世界を。
そんな世界に俺は、今まで必死にしがみついてきたんだ。
「ごめっ‥、」
聡美の前で泣いてる事に恥ずかしさが込み上げてきた時、見覚えあるハンカチが優しく俺の涙を拭った。
それは先程聡美に差し出されたハンカチで、聡美は俺と目を合わさないように静かに俺の涙だけを見つめていた。
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:12/05/23 10:30
:SH06A3
:T7DIK6kc
#724 [のの子]
それがまた俺を動揺させる。
聡美の細い睫毛や、暗くてもわかる肌の白さに俺の心臓はうるさくなり、身体は逆にカチカチに固まる。
学校の女子には恐がられてほとんど女子との関わり合いがない俺にとって、聡美のような女の子らしく細い、柔らかそうな体に俺は目を泳がせる。
真琴と由紀とはこれぐらい近付いても何も思わなかったのに‥
「あ、大丈夫っ‥!もう大丈夫だから‥」
なんとかそう言って後退りすると彼女はほっとしたように笑ってハンカチをしまう。
『話を聞いて思ったんですけど、』
「えっ、なに‥?」
聡美が紙にサラサラと書き出す。
『あなたは人より優しい。すごい優しい人なんですね。』
その言葉に俺は驚く。
「‥別に優しくないよっ。喧嘩もするし‥本当はただの臆病者だし‥」
まだ濡れていた睫毛も拭きながら否定すると、聡美は笑いながら首を横に振ってからこう書いた。
『臆病者は本気で死のうなんて考えないです。でしょ?』
‥確かに。それじゃ、
「ぷっ‥なら君も臆病者じゃないって事になるね?」
俺が笑うと聡美も困ったように笑う。
『私はどうでしょう?(笑)でも、笑ってくれて良かった。』
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:12/07/08 18:55
:SH06A3
:omG.LuOY
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