【統合】ﾌｧﾝﾀｼﾞｰなおしりＨ

葉月は物音もたてずにどんどん通路を進んで行った。

すると突然…

「ん…？」

葉月は何者かの気配を感じてすぐさま身を隠した。

そして隠れ蓑からそっと顔を出して辺りを見回してみた。

だが周囲には誰も居ない。しかし何者かの気配はまだ消えていなかった。

『この気配は一体…』

その時である。

「キヒヒヒヒ…それで隠れているつもりかい？」

葉月は驚いた。

「なに…!?」

葉月は隠れ蓑を振り払って声の主を探した。

「どこだ！」

「他の間抜けな奴らの目はごまかせてもこの私の目はごまかされないぞ…キーヒヒヒヒヒヒ…」

「魔物め！姿を現せ！」

「自分が隠れていたクセに随分おかしな事を言うものだな。それに…私は隠れてなどいないぞ。」

「隠れていないだと？…ならなぜ姿が見えない！」

葉月は慌てた。

「キーッヒッヒッヒ…」

その時…

（ﾎﾟﾀｯ…）

葉月の肩に液体のような物が落ちてきた。

「上か!?」

葉月はとっさに上を向いた。

「キヒヒヒヒ…やっと気付いたか…。」

「魔物！」

なんとその声の主は葉月の真上の天井にぶら下がっていたのだった。

葉月はすかさずモンスターから離れ、体勢を立て直した。

（ササッ！）

「この私としたことが…真上にいる魔物に気が付かなかったとは…」

洞窟状の通路の天井は凹凸が著しく、ロウソクの薄明かりでは照らされない所にそのモンスターは居た。

「いくら隠れるのが得意な忍者とは言え私の目からは逃れることはできないのだよ…。」

モンスターは天井を這うように伝い、明るみに出てきた。

「………。」

その不気味でおぞましい姿に葉月は顔をしかめた。

そのモンスターのスイカ程の巨大な目の回りは幾本の触手で覆われており、その触手の表面は気味の悪い分泌液で湿潤していた。

「君に勝ち目はない。おとなしく私に捕まるがいい。キヒヒ…。」

ダークアイはゆっくりと葉月に近付いて行く。

「どうやら貴様は忍者というものを誤解しているようだな。隠れたり逃げたりするだけが忍者ではない。」

「キーッヒッヒ…他になにがあると言うのだ。」

葉月はムッとした顔で答えた。

「忍者とは戦いにその真価を発揮するもの。まして私はメルーザの首を取りに来たのだ。貴様ごときに捕まるはずがない。」

「キヒ…人間ごときが大したことを言うねぇ…。今ここで、そんな言葉が幻想であったということを解らしめてあげるよ。」

ダークアイは体中から更に細い触手を無数に現し、攻撃を仕掛ける体勢に入った。

葉月も背中に携えた刀を抜き、逆手に持って構えた。

「この私に刀を抜かせたことを後悔することだな。」

「フン…」

（ｼｭﾙｼｭﾙｼｭﾙ！）

ダークアイの触手の束が葉月に襲い掛かる。

（ｼｭﾙﾙﾙ！）

触手が葉月の身体を直撃した！

…と思いきや、触手は葉月の身体をすり抜けた。

「何!?…しまった！残像か！」

葉月はダークアイの攻撃にあわせて超スピードで残像を作り、すかさずダークアイの後ろに回り込んでいた。

「かかったな。私は後ろだ！」

動揺するダークアイの背後から葉月が切り掛かる。

「クソ！この私が人間ごときに殺られるとは…！」

「成敗！」

その時！

（ｼｭﾙｼｭﾙｼｭﾙ！）

「ぐっ!?」

葉月の動きが止まった。

ダークアイは葉月の更に背後に触手を忍ばせ、彼女の手足に巻き付けた。

「なーんちゃって…。言っただろう。私の目からは逃れられないと。キーッヒッヒッヒ…」

「そんな…私のスピードが見破られただと…。」

「キヒッ…いくら腕の立つ忍者と言えどもこうなってしまってはただの人間だねぇ…。」

「くそっ！こんなもの！」

葉月は絡み付いた触手を振りほどこうとあがいた。