【統合】ﾌｧﾝﾀｼﾞｰなおしりＨ

セリスはただひたすら西へ向かって歩いていた。

その時。

「ん…？何か来る…。」

セリスは自分の方に向かってくる大きなオーラを感じ取った。

そのオーラの感じられる方向の上空に大きな怪鳥が羽ばたいているのが見えた。

そしてその怪鳥の脚に何かがぶら下がっていた。

「何だ…あれは。人…？」

怪鳥はどんどんセリスに近付き、彼女の真上付近まで来た。

そして脚にぶら下がっていた人影がその脚を離して飛び降りた。

（…ｽﾀｯ！）

「魔族か!?」

セリスはそのオーラの強さに警戒し、槍を強く握った。

「貴様は何者だ!?」

「我が名はグレン。…勇者セリスよ、我等魔族の平安のため…お前を倒す。」

「この力…ただ者ではなさそうね。」

「セリスよ…闘いを前にしてこんなにワクワクするのは初めてだ。お前の力…すべて私にぶつけてみろ！」

「この私を目の前にしてそんな堂々と落ち着き余った敵は今まで居なかったわ。」

「フッフッフ…セリスよ、いざ、尋常に……勝負!!!」

戦いの火蓋は切って落とされた。
（ｶﾞｷｰﾝ!!!ｶﾞｷｯ！ｶﾞｷｰﾝ!!!）

互いの武器が激しくぶつかり合う。

「くらえ!!!」

「はぁっ!!!」

（ｶﾞｷﾞｰﾝ!!!!!）

「フッフッフ。さすが人間では最強と噂されるだけのことはある。スピード・パワー・テクニック共に申し分ない。素晴らしいぞセリス!!!」

「フッ！まさか敵に誉められるとは。あなた、よっぽど変わってるわね。だけど…私の力はまだまだこんなものじゃないわよ!!!」

セリスは更に攻撃の手を強めた。

「おおっ!!何という力だ！セリス…いや！セリス殿！私も本気を出させてもらうぞ!!」

二人の戦闘は一層激しさを増し、その衝撃で大地に亀裂が走る。

戦いは続いた。

互いに一歩も引かない、地上最高峰の戦いだった。

「はぁ、はぁ、セリス殿…名残惜しいがそろそろ決着を付ける時が来たようだ。………おおおおお!!!」

グレンは力を溜めだした。

「はぁ、はぁ、望むところだわ。はぁぁぁぁぁぁあ!!!」

グレンの身体から魔闘気が溢れ出す。

「いくぞ！ヘルズボルケーノ!!!!!」

（ｺﾞｫｫｫｫｫｫｫ!!）

地獄のマグマがセリスに襲い掛かる。

「負けないわ！はぁぁ！ドラゴンアタック!!!!!」

セリスは体からオーラを放出しながら槍を突き出して空中を突進していく。

セリスのオーラはドラゴンの形を象り、グレンの放ったマグマを弾き飛ばした。

「な！なんと!!!」

「はぁぁぁぁぁ!!!」

グレンは間一髪、槍撃をかわしたものの、セリスのオーラに飲み込まれた。

（ｷﾞｭｫｫｫｫｫｫｫｫ!!!）

「うわ！うわぁぁぁぁぁ!!!」

（ﾄﾞｯｺﾞｫｫｫｫｫｫﾝ!!!）

二人の凄まじい必殺技がぶつかりあい、辺りには砂けむりが舞っている。

セリスが放った技の軌道の地面はその力でえぐれ、その軌道上にはグレンが横たわっている。

そして軌道の終点にはセリスが息を切らしながら立っていた。

「はぁ、はぁ、確実に決まったと思ったけど急所は上手くかわされたみたいね。」

「うぅ……み、見事だ…セリス殿。私の負けだ。さぁ…とどめを刺すがいい。」

「動けない相手に武器をかざすなんて私の騎士道に反するわ。」

「フッ…騎士として戦いの中に命を落とす事は覚悟の上。ましてやセリス殿に殺されるなら本望だ。同じ騎士としての頼みだ。私を騎士として葬ってくれ。」

「………」

セリスは無言でグレンに近寄った。

グレンはセリスの槍が自分の身体を貫くのを待った。

「グレン…って言ったかしら。…あなたは騎士として、何の為に戦うの？」

「…ふっ、そんなことは言うまでもなく、我等魔族の平安だ。…しかし、私はその戦いに敗北した。それなのにどういうことなんだ…負けたにも関わらず気分が清々しい。…私はこうなることを望んでいたのかもしれない。」

「望んでいた…？」

「あぁ。私は魔族軍の幹部として部下を戦場に送り出し、自分はただ指示を出すのみ。そしてそのたびに私は自分のかわいい部下達を失っていった。そんな毎日に嫌気がさした。…さぁ、私を部下達の元へ送ってくれ。」