【統合】ﾌｧﾝﾀｼﾞｰなおしりＨ

大会は大盛況の内に終了し、晴れて世界一の称号を手にした鈴々は次なる目標を達成すべく、故郷を旅立つ準備を整えた。

世界一とは言えそれはあくまで人間の中だけの話。

メルーザを始めとする魔族のエリート層に通用するかはわからない。

そのことは鈴々もわかっており、この旅立ちには苦難を乗り越える修行の意味も込められていた。

生まれ育った賑やかな繁華街の人々に盛大に見送られ、鈴々は旅立った。

旅路についてしばらく歩くと、鈴々の前方からフード付きのマントに身を包んだ人間らしき者が歩いてきた。

その人間は鈴々の顔を見ると彼女に話しかけた。

「あなたはもしや、あの天下無双武闘大会で優勝された鈴々さんではございませんか？」

きょとんとした表情で鈴々が受け答える。

「うん。そうだけど…。」

「こんなところであの有名な鈴々さんにお会いできるとは。神に感謝いたします。」

「そ、そんなぁ、大袈裟だよ

アハハッ

」

まんざらでもない様子の鈴々。

「実は私、占い師をしておりまして…。是非、鈴々さんを占わせていただけないでしょうか？勿論、お代はいりませんので。」

世界一の武闘家と言えども鈴々は女の子。
占いと聞いて興味が湧かないはずがない。

「えっ？占い？じゃあ、占ってもらおっかなー

」

「おお、これはありがとうございます。ではさっそく…」

占い師は水晶をかざして何やら念を込め始めた。

「むぅぅ…」

鈴々の胸が高鳴った。

（ﾄﾞｷﾄﾞｷ

）

「ふむふむ…」

どうやら占いが完了したらしい。

「で、どうなの!?」

鈴々は目を輝かせて占い師を急かす。

「鈴々さん…あなたは魔族の女王メルーザを討ち取る為に旅を始めたとお聞きしましたが…。」

「うん、そうだよ！」

「残念ですが…このままでは実現は不可能でしょう…。」

「そ…そんなぁ…。」

鈴々はぐったりとうなだれた。

「ですが…それを実現させる方法が１つだけあります。」

「えっ!?どうすればいいの？」

「その方法とは、天昇山（てんしょうざん）という山の頂上に住む仙人様に修行をつけていただくことです。」

「天昇山に住む仙人様…？」

「はい。天昇山はここから南西に200㎞程進んだ所にありまして、その付近では一番背の高い山です。仙人様は武術の達人でいらっしゃいますのできっと鈴々さんをメルーザにも負けない程の武闘家へと育て上げて下さるでしょう。」

「ありがとう！」

それを聞いた鈴々は礼を一言言うと即、猛烈な勢いで走って行った。

鈴々がその場を去ると、占い師が本当の姿に戻る。

なんとその占い師はベドムであった。

「フッフッフ…実に容易い。」

そしてそのままベドムは姿を消した。

鈴々は一目散に天昇山を目指して走った。

鈴々の身体能力をもってすれば200㎞程度の距離はどうと言うこともなく、一時間程度で山の麓まで辿り着いた。

天昇山を見上げる鈴々。

「これが天昇山ね…。」

天昇山は岩がむき出しの、険しく荒々しい山であった。

「ようし！」

鈴々は気合いを入れると、一気に山を駆け上がった。

常人なら登ることは不可能な岩壁を、鈴々はその強靭な脚力と腕力で跳ねるように登って行った。

さすがの鈴々も、少し息を切らしながらも頂上まで到着した。

「はぁ、はぁ…」

天昇山は頂上にのみ植物が自生しており、そこは小規模な林になっていた。

鈴々はその林の中に入って行くと、こじんまりとした建物を発見した。

「こんなところに…。これは仙人の家に違いないわ。」

鈴々は恐る恐るその建物の戸を開けてみた。

「ごめんくださーい。」

建物の中は無人らしく、返事はなかった。

「あれ…？留守かなぁ。」