【統合】ﾌｧﾝﾀｼﾞｰなおしりＨ

葉月は気配を消して周辺を見回した。

『どこか忍び込めそうな所はないものか…ん？』

その時である。
なにやら城の裏側にある岩場からモンスター達の声が聞こえてきた。

葉月は声のするほうにそっと近付き、木陰からその様子をのぞいた。

そこには数匹のモンスターが立っていて、その一匹が岩に手を触れているのが見えた。

『何をしているのだ……？』

すると…

（ｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞ…）

岩の一部が動き出した。

『これは………!?』

動いた岩の裏は洞窟になっており、モンスター達はその中へ入っていった。

モンスター達が中へ入ると岩はまた元の位置に戻った。

「ここが裏口と言うわけか…」

葉月は近くにモンスターがいないかどうか確認し、その岩場に近寄った。

葉月はモンスターが触れていた岩の部分を見てみた。

『たしかこのあたりだったはず…。』

するとその岩の表面になにやら小さなボタンを発見した。

『あった！これだな…』

葉月は恐る恐るそのボタンを押した。

（ｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞ…）

葉月の読み通り、岩は動き出した。

「よし…」

葉月は注意しながらその洞窟の中に忍び込んだ。

中の通路はロウソクの薄明かりに照らされており、どうやら城の地下へ続いているようだった。

時折通路を通ってくるモンスターからは忍術で身を隠し、葉月はどんどん奥へ進んで行った。

メルーザの部屋…

メルーザは部屋の前に立たせている護衛兵に言った。

「ベドムを呼んで来なさい。」

「はっ！かしこまりました！」

護衛兵は即座にベドムを呼びに行った。

しばらくするとベドムがメルーザの部屋を訪れた。

「お呼びでしょうか、メルーザ様。」

「来たかベドム。…どうやら城の隠し通路にネズミが一匹迷い込んだみたいね。少し警備が甘いんじゃないかしら？」

葉月の消しているはずの気配さえメルーザは鋭い感覚で感じ取っていた。

「お気付きでしたか、メルーザ様。」

「ほう、お前も気付いていたのか。なら話は早い。感じるこのオーラはまさしく人間の勇者。この城に安々と侵入を許すなどとはあってはならないこと。即刻捕らえて来なさい！」

「メルーザ様、そうあせらずとも大丈夫でございます。確かにこのオーラは人間の勇者。そしてこんな芸当が出来るのは忍者、葉月しかおりません。」

「そこまでわかっておいてなぜ兵を出さない。このまま城の内部まで侵入させるつもりか！」

「フッフッフ…」

「何がおかしい！貴様この私をバカにしているのか？」

「まぁ落ち着いて下さい。こうなることは最初から予想しておりました。」

「予想していただと…？」

「はい、葉月の使う忍術をもってすれば十分考えられる事。したがってこの事態に備え、隠し通路には前もって優秀な見張り番を配置しております。奴にかかれば葉月など相手ではございません…フッフッフ…」

「しかし、その見張り番とやらは本当に大丈夫なのか？相手は勇者だぞ。」

「はい、もちろんでございます。万が一、奴がやられるようなことがあれば…この私が自ら責任をもって捕らえてまいります。…まぁ、それはありえないと思いますが…。」

「わかった。お前がそこまで言うなら信じるとしよう。しかし、念のために城全体の警備を強化するよう皆の者に伝えよ。」

「かしこまりました…。」

そう言って立ち去ろうとするベドムをメルーザが呼び止めた。

「ベドム！」

「はい、まだ何か？」

「あの…その…」

「はい？」

メルーザは何か言いたそうにモジモジしている。

「フッフッフ…ホイミンの事でございますね？」

「あ、あぁ。そうだ。」

メルーザは少し恥ずかしそうに応えた。

「前にも話した通り、無理に連れ戻すのは得策ではございません。時がくれば必ず連れ戻しますのでそれまでどうかお待ち下さい。」

「そうか…わかった。」

「それでは失礼いたします。」

ベドムは部屋を去った。