【統合】ﾌｧﾝﾀｼﾞｰなおしりＨ

「はい、葉月の使う忍術をもってすれば十分考えられる事。したがってこの事態に備え、隠し通路には前もって優秀な見張り番を配置しております。奴にかかれば葉月など相手ではございません…フッフッフ…」

「しかし、その見張り番とやらは本当に大丈夫なのか？相手は勇者だぞ。」

「はい、もちろんでございます。万が一、奴がやられるようなことがあれば…この私が自ら責任をもって捕らえてまいります。…まぁ、それはありえないと思いますが…。」

「わかった。お前がそこまで言うなら信じるとしよう。しかし、念のために城全体の警備を強化するよう皆の者に伝えよ。」

「かしこまりました…。」

そう言って立ち去ろうとするベドムをメルーザが呼び止めた。

「ベドム！」

「はい、まだ何か？」

「あの…その…」

「はい？」

メルーザは何か言いたそうにモジモジしている。

「フッフッフ…ホイミンの事でございますね？」

「あ、あぁ。そうだ。」

メルーザは少し恥ずかしそうに応えた。

「前にも話した通り、無理に連れ戻すのは得策ではございません。時がくれば必ず連れ戻しますのでそれまでどうかお待ち下さい。」

「そうか…わかった。」

「それでは失礼いたします。」

ベドムは部屋を去った。

メルーザは前にエルフの王、フローラから言われたことが気になっていた。

『ベドム…あの男は賢く鋭い。そしてあの男からは底知れぬ何かを感じずにはいられない。フローラの言う通り、私にとって危険な存在になりうるかもしれない……………いや、そんなはずはない。彼の知恵がなければこの城はとうに陥落していてもおかしくないというのに。バカバカしい。私としたことが一番頼れる部下を疑うとは………。』

ホイミンが姿を消してからメルーザの精神状態は少し不安定になっていた。

『ホイミン…早く帰ってきて…。』

葉月は物音もたてずにどんどん通路を進んで行った。

すると突然…

「ん…？」

葉月は何者かの気配を感じてすぐさま身を隠した。

そして隠れ蓑からそっと顔を出して辺りを見回してみた。

だが周囲には誰も居ない。しかし何者かの気配はまだ消えていなかった。

『この気配は一体…』

その時である。

「キヒヒヒヒ…それで隠れているつもりかい？」

葉月は驚いた。

「なに…!?」

葉月は隠れ蓑を振り払って声の主を探した。

「どこだ！」

「他の間抜けな奴らの目はごまかせてもこの私の目はごまかされないぞ…キーヒヒヒヒヒヒ…」

「魔物め！姿を現せ！」

「自分が隠れていたクセに随分おかしな事を言うものだな。それに…私は隠れてなどいないぞ。」

「隠れていないだと？…ならなぜ姿が見えない！」

葉月は慌てた。

「キーッヒッヒッヒ…」

その時…

（ﾎﾟﾀｯ…）

葉月の肩に液体のような物が落ちてきた。

「上か!?」

葉月はとっさに上を向いた。

「キヒヒヒヒ…やっと気付いたか…。」

「魔物！」

なんとその声の主は葉月の真上の天井にぶら下がっていたのだった。

葉月はすかさずモンスターから離れ、体勢を立て直した。

（ササッ！）

「この私としたことが…真上にいる魔物に気が付かなかったとは…」

洞窟状の通路の天井は凹凸が著しく、ロウソクの薄明かりでは照らされない所にそのモンスターは居た。

「いくら隠れるのが得意な忍者とは言え私の目からは逃れることはできないのだよ…。」

モンスターは天井を這うように伝い、明るみに出てきた。

「………。」

その不気味でおぞましい姿に葉月は顔をしかめた。

そのモンスターのスイカ程の巨大な目の回りは幾本の触手で覆われており、その触手の表面は気味の悪い分泌液で湿潤していた。

「君に勝ち目はない。おとなしく私に捕まるがいい。キヒヒ…。」

ダークアイはゆっくりと葉月に近付いて行く。

「どうやら貴様は忍者というものを誤解しているようだな。隠れたり逃げたりするだけが忍者ではない。」

「キーッヒッヒ…他になにがあると言うのだ。」

葉月はムッとした顔で答えた。

「忍者とは戦いにその真価を発揮するもの。まして私はメルーザの首を取りに来たのだ。貴様ごときに捕まるはずがない。」