【統合】ﾌｧﾝﾀｼﾞｰなおしりＨ

「グレン…って言ったかしら。…あなたは騎士として、何の為に戦うの？」

「…ふっ、そんなことは言うまでもなく、我等魔族の平安だ。…しかし、私はその戦いに敗北した。それなのにどういうことなんだ…負けたにも関わらず気分が清々しい。…私はこうなることを望んでいたのかもしれない。」

「望んでいた…？」

「あぁ。私は魔族軍の幹部として部下を戦場に送り出し、自分はただ指示を出すのみ。そしてそのたびに私は自分のかわいい部下達を失っていった。そんな毎日に嫌気がさした。…さぁ、私を部下達の元へ送ってくれ。」

「グレン…私はあなたを殺さない。」

「な、何を馬鹿なことを！この私に生き恥を晒せと言うのか！」

「平安を求めるのは魔族も人間も一緒。グレン…あなたに出会って少し考えが変わったわ。魔族は無意味に人間を襲うのではない。そして人間も無意味に魔族を攻撃しているのではない。…それは平和の為。グレン…あなたには魔族の騎士としてやるべきことが残っているわ。」

「私はこの戦いに自分の持てる力を全て出し切り、敗北した。他に何がある。」

「グレン…人間と魔族は共存できないの？太古の昔は全ての種族が争いもせずに共存していたと聞いたことがある。…グレン、これ以上誰も傷付けることなく、魔族も人間も平和に暮らせる方法を二人で探すことはできないかしら？」

「……それは………恐らく無理だ。魔族全体に深く根付いた人間に対する敵対心はそう易々と無くなるものではない。」

「それでも私は諦めない。」

そう言ってセリスはグレンの手を引き、自分の肩に担いだ。

「セ、セリス殿！何のつもりだ！」

「こんな所に寝てたらカラスの餌になって終わりよ。少し休めそうな場所を探しましょう。」

セリスはグレンに肩を貸して歩きはじめた。

「セリス殿…何故貴女はそこまで…。」

「あなたに出会ったからよ。グレン。魔族にもあなたみたいな人がいる。私はあなたと同じ騎士として真の平和を手に入れたい。そして、あなたとならそれを実現できる気がする。」

セリスは森の木陰までグレンを連れて歩き、太い木の根元に寄り掛かるように彼を座らせた。

「ここなら休めそうね。」

少しの間を置いてグレンが話しかけた。

「セリス殿…悪いことは言わない、故郷に戻って身を隠すんだ。メルーザ様とて人間を絶滅まではさせまい。いつかこの戦争が終わるまで生き延びるんだ！」

「そんなことは出来ないわ。私は皆の期待を背負ってこの戦場に出た。それに…私の甘い判断で二人の仲間とはぐれてしまった。彼女達のことだから心配はしていないけど、まずは一刻も早く探し出さなくては…。」

「………セリス殿、貴女の仲間は………」

「…ん？」

その時、二人は強烈な何者かのオーラがこちらに近寄ってくるのを感じた。

「こ、このオーラは…！セリス殿!!早く逃げろ!!」

しかし、セリスは逃げようとせずにその強大なオーラを待ち構えた。

「なんてオーラなの…これまでこんなに強くて邪悪なオーラは感じたことがないわ。」

槍を握るセリスの手に力が入る。

「来た!!」

「フッフッフ…不様だな、グレン殿。私の忠告を無視した結果がこれか？」

「べ、ベドム殿…。」

二人の前に現れたのはベドムだった。

セリスはベドムの余りの圧力感に動けないでいた。

「ベドム殿…一生の頼みです。どうかセリス殿を逃がしてやって下さい!!!」

グレンはなりふりかまわずベドムに土下座した。

「グレン殿、人間ごときに情けを掛けられた位で血迷ったか？それはメルーザ様に対する裏切りと見なされるぞ。」

「この通りです！どうか御見逃し下さい!!」

「フッ…ゴミ虫め。消えろ。」

ベドムの手の平に黒いオーラの塊が現れた次の瞬間、そのオーラの塊は目で追えない程のスピードでグレンの方に放たれた。

（ﾎﾞｳｯ！）

「うわっ!!!」

（ｺﾞｵｫｫｫｫｫｫｫ!!!）

グレンはそのままオーラの塊に吹っ飛ばされてしまった。