【統合】ﾌｧﾝﾀｼﾞｰなおしりＨ

ざわつく広間の王座でメルーザが口を開いた。

「皆、静まりなさい。皆も気付いているだろうが、今、この城に向かって得体の知れないエネルギーが接近してきている。私が察知したところこれは生命体ではない。」

幹部達は緊張した面持ちでメルーザの話を聞いた。

「私が思うにこれは…核だ。」

核の定義を知る者は言葉を失った。

戦死したとされたグレンに代わって四天王に任命された、魔族における物理学の長であるDr.デルは神妙な顔で話し始めた。

「まさか、下等な人間ごときが核を操ろうとは。我々魔族ですらその危険度の高さゆえ開発を停止したと言うのに。」

新・魔族四天王

科学長官

Dr.デル

続いてベドムが言った。

「サル共め…とうとう神の領域に足を踏み入れてしまったようだな。もし仮に、この城にその核ミサイルが着弾すれば…魔族は一貫の終わりだ…。」

ベドムの言葉にその場は氷ついた。

重い空気を払拭するようにダビラスが言った。

「ベドム殿、そんなバカなことを言うものではありませんぞ！それより状況はどうなっているのだ？そのミサイルが到達するまでの時間は!?」

Dr.デルは直ちにレーダーを準備したところ、やはり猛スピードで城に向かう高エネルギーの物体を感知した。

大きなモニターにその物体の詳細が映し出される。

その内容をデルが話した。

「この形状、速度は正しくミサイル。さらに搭載された物質から核兵器であることは間違いないでしょう。そして、距離と速度から考えて到達まであと１５分足らずと言ったところでしょうか。」

「１５分では空を飛べる者が逃げるのみで精一杯では!?」

平の幹部達はどよめいた。

「うろたえるな！」

メルーザは恐怖する幹部を一喝し、落ち着いて言った。

「何か策はないのか？」

するとデルがこう言った。

「はい、万が一に備えて城を覆うバリア装置を設置しておりましたのでそれが上手く作動すれば最悪の事態は阻止出来るかと思われます。」

広間は安堵の空気が流れた。

デルは話を続けた。

「しかし、バリアの範囲は城の周囲３㎞程度までしか覆いきれませんのでそれより外側は核兵器の威力にもよりますが被害が発生するでしょう。」

メルーザの脳裏にとっさにホイミンのことが浮かび上がった。

「何!?では…」

皆の前なのでメルーザはそれ以上は口に出すことができなかった。

デルはバリアの説明を続けた。

「さらにこのバリアは魔気をエネルギーとして作動します。魔気の強さが強度と直結しますので我々幹部全員で魔気を集束機に注入する必要があります。」

そんな中ベドムがメルーザの曇った表情に気付き、そっとメルーザに耳打ちした。

「メルーザ様、ホイミンなら心配いりません。ホイミンとクレアは現在、運良くエルフの森に迷い込んでいる模様です。エルフの森は異空間でありますので核の被害からは免れるでしょう。」

「そ、それは本当か？」

「ええ。それゆえご心配なさらずに…。」

「しかし…他の者は…」

メルーザは少しホッとしてしまった自分に憤りを覚えた。

そしてベドムは少し声を張上げていった。

「この犠牲は避けることは不可能です。この危機的状況を我々魔族が一致団結して乗りきり、更に人間に勝利して犠牲となった者を弔おうではありませんか！」

ベドムの熱弁にメルーザ含め幹部達は胸を熱くし、決意を固めた。

「ベドム様のおっしゃるとおりだ！」

「人間などに好きにさせてたまるものか！」

しかし、ベドムの腹は違っていた。
『フッフッフ…安い奴らよ…』