… 極楽(18禁)愛戯 …

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「ｱｧｯ……」

部屋中に響きわたる妖気な声---重なり合うふたつの影…
女のほうは髪の毛が非常に乱れている｡男はシャツをまとっているが､ボタンははずれていて魅惑の筋肉がちらちらと女に魅せ隠れしている｡

「もｯ……だめｪ……」

ぎゅっとシーツを握りしめて果てた女は､生の抜けた人形のようにベッドへ沈んでいく｡

「…お前これで終わると思ってんのか？」

火照った耳に近づいて男はそう言うと休憩なんて勿論しない…女の中でただただ狂った｡

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"事"が終わると男は煙草を口にしてふうと煙を吐き出した｡女は重たい手を動かしてシーツをつかむと胸元をそれで隠しながら､彼に目を移す｡その煙草の仕草が素敵だと思う女は､随分彼の虜になっていた｡

「さてと……」

まるで仕事が終わったかのように男はそそくさと自分がまとっていたシャツのボタンをかける｡下着を履いて､ズボンをはいてカチャッとベルトを締める｡

「……もういくの？」

女は彼の背中をみつめたまま声をかける｡本当なら【行かないで】だとか【まだ一緒にいたい】と先に言いたいのに言えないのが彼女の謙虚なところ｡

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「だって最近お前いい子じゃないからな…俺に尽くすならもっと一緒にいてやるよ｡」

彼は女の気持ちなんてすべて理解できている｡魔法でもかけられているような気分にもなれる女は､鞄をあけてポンとなにかをベッドの上に置いた｡

「これ………でも？」

分厚い札の束｡

男はにこりと優しくほほえむとその束を片手でヒョイと拾い上げてただ眺めた｡

「なあ………」

そして口を開くとこう言った｡

「お前にとって俺ってただの安モンなんだね｡」

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その札束は女が稼いでくる半月のお金だ｡片手からﾎﾟｲと､ベッドの上にそれを放つと男はもう振り返らずに部屋を出た｡

「……愛してほしいのに……」

ただ彼がコンドームを付けずに抱いてくれていたら､どうにかして妊娠して彼と策略結婚するのに…彼は女を愛さないプロ｡

それが彼の職業｡

「……もしもし？今から同伴してよ｡俺お腹すいちゃったんだけどさー…家に財布忘れてさあー…」

彼は意地悪な悪魔にも愛らしいペットにもただの性欲を満たす機械にもなれる｡

愛するひとがいないから…

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～花梨の場合～

「じゃ花梨(かりん)で決まりだね｡」

今日は都会に出てきて２日目｡
今まで優等生で､すすんできたあたしもあるバイトをしてみることにした｡

密かにあこがれてた…雑誌にのるかわいい女の子たちが抜群のスタイルに綺麗なドレスをまとい､ネイルもしっかりお洒落してるそんな姿に憧れてた｡

面接にいくと早速club lapisで働くことが決まったあたしは…今日からその憧れのキャバ嬢になった｡

「宜しく御願いします｡」

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正直高校のときはモテたけど18年間で彼氏ができたことはなかった｡

いつも双子の妹に盗られてしまうから｡

18年間生きてきて彼氏いない､ことのほうが少ないのは圧倒的にあの娘だ｡

一緒に都会にでてきて共同生活をするものの､あたしたちが似てるのは顔だけで中身も体もぜんぜん違う構造でできていた｡

「花梨ちゃん､何番テーブル!」

ただクラッチを持ってテーブルについてお酒をつくって飲んで…しゃべるだけの簡単な作業｡

きらびやかにみえて意外に地味な仕事｡

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～花蓮の場合～

双子の姉のあの子が源氏名を"花梨"にしたから､わざと"花蓮"て名前にした｡

時々思う｡
あたしって本当に【黒】が似合う女だってこと｡

「経験は？」

「……ないですけど｡」

今あたしは男性とふたりでホテルにきてる｡自分のお店の店長とふたりっきりだ｡

向こうは下半身を剥き出しにして､風呂場のほうに歩き出す｡

これが講習てやつ｡

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あたしはいつも姉を利用するのが得意だった｡付き合ってと姉に告白してくる男すべてにあたしに"花梨"をダブらせては､うまく利用させてもらった｡

彼女を嫌いなわけではない｡

ただ憎悪と嫉妬心だけがあたしの中では渦をまいてた｡

「………ｯ」

寝かせた店長のアレを片手でしごきながらあたしの大きな口でぱっくりとくわえて舐め回すと店長さんは声をぐっとこらえながらも背中を反る｡

「……ぅ……」

我慢してんじゃねーし｡

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……1 出会い……

「ただいま…」

一応蓮に声をかけるのは姉である彼女｡

一緒に共同生活してる分仲良くはしなくてはならない｡だいたい家にいると妹は妹のままで家事手伝いなんてしたことがほぼない｡蓮ができることはゴミ捨てだ｡ただ､それでも忘れたと理由を付けてはなにもしない｡

「……あれ､早かったね｡」

蓮はクシャクシャな頭をぽりぽり掻きながらキッチンの冷蔵庫にむかってる｡

「あ､あたしにもフルーツジュースとって｡」

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「凜…相変わらず酒臭いね…」

「仕方ないじゃない｡仕事だもん…お金のためじゃなかったらこんな仕事しないよ｡」

凜＝花梨はかなり水商売を嫌ってた｡でも貯金をしてかなえたい夢を叶えるために頑張って妥協して今の仕事についた｡

14から水商売を親に内緒でしてたのは花蓮のほうだ｡

フルーツジュースをいっき飲みすると､凜はため息をつく｡

「…ほんと疲れた｡なんか若い男の子たくさん来たし…」

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「名刺みせて!」

凜はクラッチの中に入ってある同業の子たちの名刺を蓮に渡す｡

どうやら水商売をしてると､ホストやバー等そっちの方々が営業又は趣味でキャバクラに遊びにいったりするらしい｡もちろん風俗にも｡

「でも凜ちゃん口説かれたでしょ｡」

「…うーん､なんかね｡面倒だったから､丁重にお断りしたんだけど｡」

確か顔がのってる名刺だったかな｡ …そうそう､龍咲なんとか｡

「羨ましいな｡あたしなんかただの受付嬢だから､おっさんばっかで……」

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蓮はいつもさらっと嘘をつく｡それに凜は気づかない､というか嘘にしろ本当にしろ､そんなに興味がないだけなのかもしれないが｡

「…いいじゃない､大企業の受付嬢なんて､この不況のときになかなかないよ？ママからこの顔もらったからだよね､感謝しないと｡」

凜は自覚している｡自分たちの顔が整っていることを｡生まれてきてからずっと人にうらやまれて､モデル事務所からもスカウトがきたりだとかもしてた｡

凜に限っては勉学においても優秀だったから才色兼備の鏡だった｡

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プラスにさらにプラスアルファ…絵に描いたような優等生の凜が蓮にとっては気にくわなくて仕方なかった｡

「…口説いてきたのどれ？」

取り上げていた名刺をさっと凜につきだして蓮は言う｡

「龍咲なんとか…覚えてないよ～自分の指名客と被ってたから適当に流しといたもん…」

フルーツジュースを飲み干すとまたカップにおかわりして一気に飲む凜｡時計で時間を確認するとそのまま洗面所にいった｡

「club HERTSの…龍咲レオンね｡」

顔つき名刺を手にすると､そのまま蓮は自分の部屋に戻った｡

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「もしもし？」

電話の相手口はガヤガヤとうるさい｡

「…今日はご来店ありがとうございました｡」

品のあるゆったりした優雅なしゃべり方はその名前にもあってる凜の話し方だ｡でもさきほどのはニュアンスが微妙に違う｡蓮が真似してる､と身内なら誰でもわかる｡

「…ああっ､花梨？」

低い何ともいえない太い男性の声が耳を撫でる｡

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「連絡くれるなんて予想してなかった……２回目行こうと思ってたのに｡しかも明日な｡」

ケラケラと子供のように笑うレオンに蓮はきゅんとしない｡ただ"花梨"のことを想う男性がただただ欲しいと無意識に想うだけ｡

「いまなにしてるの？」

「今は先輩のバーでダーツしてる｡お前もくる？」

このままいくと絶対にばれる｡化粧も髪の毛もすべて違うし…

「お風呂はいってから行っても大丈夫？」

「わかったよ､じゃまた連絡頂戴｡」

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蓮は化粧を落としてから髪の毛にストレートをあてて､すっぴんに近い状態にして３０分後である今､家からでてタクシーに乗り込む｡

凜が話しかけてきてたけど内容は適当に返事したんだと想う｡

「今出たよ｡」

「タクシーの運転手さんにかわってくんない？道案内するからさ｡」

そして数分後には目的地につくことができた｡

「…おいで｡」

バーカンにいたのは王子様みたいに綺麗な男の子がひとり｡蓮を"花梨"だとおもって手招きしている｡

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「化粧薄くてもあんま変わらないね…可愛い｡」

少し色っぽい声でにっこりほほえむと蓮にドリンクメニュウを渡してきた｡

「でも花梨は気まぐれだね｡アフター誘ったら､"明日朝早く予定があるんで"て断ってたのに｡まさか来るし｡」

ま､うれしいけど､とグラスとグラスをあわせて乾杯する｡蓮は凜が好きなカシスオレンジを頼んだ｡でも蓮自身は好きではない｡甘いお酒なんてお酒だとも想ってない｡

「…俺も水商売してるけどやっぱ彼女は欲しいからさ､花梨みたときはほんとキターて想ったんだよね｡」

イケメンが目も合わせずいってくる｡

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ふつうの女なら多分､【あたしに気があるんだ】とか思うだろう…でも相手は水商売のプロ｡

女の子の気持ちを考えて行動したり言動したりするのが職業なわけだ｡

そんな彼らが簡単に心を許すわけがない｡

「営業でもその言葉はうれしい｡ありがとう｡」

長いまつげをパチパチさせながら"花梨"のふりした蓮は甘ったるしいカシスオレンジをくいっと半分まで飲んだ｡

心の中で焼酎か日本酒のみたいと思いながら咳をする蓮｡

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「ま…ホスト相手じゃ､そう思われて当然だよな…」

けど､…と言うと顔をぐっと近づける龍咲レオン｡高い鼻がかすりそうで､吸い込まれそうなほどの目力でじっと見つめられる｡

「店に来なければ俺たちは客とかそうゆう関係じゃないだろ､花梨？お前が俺のものになればいい｡」

にこっと微笑むと彼はグラスを飲み干してバーテンダーにドリンクを頼んだ｡

「…花梨が俺の仕事場にはいってこないなら､俺たちは水商売ていうフィールドと全く関係なくなるじゃん？」

と龍咲レオンは続ける｡

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早く抱かれたい…ただ自分のステータスに姉に惚れてたイケメンホストとセックスをしたっていう項目が入ればいい｡

…蓮はそれだけで快感に浸れる｡

「…いこっか…」

特に話もせずにチェックすると龍咲レオンは手を握りしめて､店を出た｡

向かう先はわかってる…男女の関係になることくらいわかってる｡そんなものに言葉なんて必要じゃないもの｡

夜が死んで朝になったときにすべてが変わる｡

蓮のものになってるか……

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……

シーツがくしゃくしゃになって､男女の頭が枕にふたつ並んでる｡

男はテレビに向かって体をむけて､女は彼の背中にしがみつくような形だ｡

「レオン……」

まだ抱いてくれない｡

「なに？欲しいの？」

レオンはそっぽを向いたまんま蓮に話しかける｡

蓮は何時間も抱いてくれないレオンにしびれをきかせて､右手で彼のモノを握った｡

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上手と言われる蓮のテクニックでも､レオンは我慢できる程度だった｡

「下手くそ…」

蓮の体をひっくり返すと､熱く十分濡れた部分を優しくゆっくりと撫でる｡

「……ｱｧ……///」

ほんの少し触れただけでも感じてしまう｡もう理性のは別に体はレオンの奴隷になってしまっていた｡

レオンは唇を蓮のどこにも触れてくれない｡

「馬鹿な女…俺を虜にさせれると思ったの？」

くすっと悪く笑うレオンに蓮はいいわけさえできなかった｡

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…バーで飲んでるときだ｡

トイレにいったら着信履歴に知らない番号が残ってたからレオンは折り返した｡

「…もしもし？」

あれ？と違和感を感じながらも相手の言葉を待つレオン｡

「…本日ご来店ありがとうございました｡御礼の電話だけでもと思いまして…お時間大丈夫でした？」

丁寧なのに距離を置かれてるのがわかるしゃべり方…

トイレから扉をかけるとバーカンに座った"花梨"はバーテンと話している｡

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龍咲レオンも､さすがに水商売のプロとは言っても正直焦った､というか混乱したであろう｡

「花梨だよね？」

「…はい｡」

崩さない距離とそのスタンス｡俺の心がモヤモヤと沸く｡こんなに相手にしたくない､ただ【御礼の電話】のため…とはいえ､そんなオーラ全快にされることなんて滅多にない｡

「今どこにいるの？」

「今家ですよ｡明日朝早いんで…寝る前にご連絡差し上げようかな､と思いまして｡」

アフター誘ってくださってありがとうございます､と丁寧に彼女は言う｡

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言い方ひとつひとつ俺の尺に触る｡いらいらとかじゃなくて､ただもどかしい感じ｡

「ね……寝る前にひとつだけ聞いていい？」

はい､と返事｡

「花梨て…家族構成どんなかんじ？」

「…父と母､それから双子の妹がひとりで４人ですよ｡」

なるほど｡

「わかったよ｡またお店いくからよろしくね…おやすみ｡」

「おやすみなさい｡」

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…

レオンは指を熱い部分に押し当てて動かしながら色んなことを質問した｡

「お前兄弟いないのか？」

「…ｱｯ……あたっ…あたし一人っ子だもんっ……ｱｱｱｯﾝｯ……」

うそつきな女｡

こんな女は壊れてしまえばいい｡俺のロボットの一体になって朽ちるまで働けばいい､俺のために｡

「もお……お願い……///」

頂戴と顔を火照らせながら言う｡

あの花梨と同じ顔と同じ声なのに､ただコイツに汚らわしいものに対する視線しかできなかった｡

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その後は言うまでもない｡

さっさと蓮を家から追い出すとレオンは布団をすべて洗濯機に詰め込んだ｡

「汚い……」

潔癖であるレオンは此処を客宿として使ってるものの､完璧なくらい清掃はするできる男だった｡

汚い扱いをうけた蓮は泣きながら家に帰った｡

すーすーと寝息をたてる凜を無視して鞄を思いっきり壁になげると買ったばかりのファンデーションが割れた｡

「…もう最低…」

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…絶対抱かれてやる｡

どんな手を使っても｡

勿論蓮は仕事場に電話して休み返上で出勤することにした｡

「客になって金さえ使えば､抱く気になるはず…」

すぐに用意をすると朝から蓮は仕事にむかった｡

裏側を知らない蓮と凜｡

知るのは間にいる男だけ｡

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蓮は仕事を終えてすぐにレオンに連絡する｡

:同伴するから店つれてって!

しばらく近くのカフェで待つけど返事は10分経ってもこなかった｡

電話かけるとガヤガヤした店内でテンション低めに電話をとるレオン｡

「なに？」

その言葉だけで蓮のアレはじゅん､としてしまう｡

「…店いきたいから…」

「じゃ2時間後に××な!」

とだけ言うと電話回線はもうすでにツーツーと鳴っていた｡

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「…はあ…」

と電話切ってため息をつくレオンに､花梨は隣で黙ったままお酒をつくっていた｡

「花梨は面倒なお客さんとかいるの？」

「…龍咲さんが一番わからないです｡」

面倒な客ナンバー1が俺？とか思いながら話の筋をきく｡

「水商売をしてる人がお客様ではいないですから､みられてるのかな､と思うと緊張します｡」

そういうことか｡

「俺は口説きにきてるだけなんだけど｡」

「そういえば､口説いてくる男性もいませんよ､私のお客様には｡」

というとクスクス笑った｡

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自分が客の約束を延ばしてまでキャバクラで女を口説くなんて､予想もできなかった｡

これが色ぼけってやつか｡

たぶんこんな気分を味わいながら､女の子は担当に会いにホストクラブにいくんだろう｡

今なら少し理解できるかもしれない…なんとなくだけど｡

俺､かなりの可能性で花梨て女に惹かれてる｡

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「…花梨あのさ…」

プライベートでお誘いしようと思ったけど振り向いた営業用の花梨の顔をみると誘えなかった｡

「花梨さん､６番お願いします｡」

容姿もいいのに話にも幅広い花梨は年上でも社長クラスに好かれるキャバ嬢だった｡

話し声が聞こえて､明るく笑う花梨の声が営業ぽかったとしても､俺と話してるときよりも楽しそうな雰囲気が聞こえると少し心がおれそうになる｡

「すいません､龍咲さん…」

お待たせしましたとクラッチを置いて隣に座る花梨｡

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「あのさっ……」

座った花梨の細い腕をパッと握る｡はじめて彼女の体に触れた気がする｡ほんのり冷たい体｡自分から触ったのに､思わずドキッとする｡

「花梨…俺は客のまんまでもいいから…いつか一緒にご飯でも食べにいけない？」

「……」

目を点にする花梨｡くりくりの目をぱっちり開いて長いまつげがパチバチと動く｡

突然クスクス笑って花梨は手で口を押さえた｡

「龍咲さんって……変わってますよね……」

笑いすぎて涙を拭く花梨はひときわ可愛く見える｡

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「ってか笑えるんだ､花梨｡」

顔を伏せて笑う花梨の顔をもっとみたくて俺は両腕を掴んで､体を起こさせる｡

素直ないい顔…すっごい無邪気で可愛い｡

「…なんでちゃんと笑わないの？」

俺が顔を近づけて､にこおっとすると､花梨は少し顔を反らした｡

「…苦手？」

ほんのり頬がピンクなのはお酒のせいのかな？それとも…

俺の胸がドンドンと大きい音で中で響く｡

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「…実はあたし､男の人苦手なんです…」

その一言から､花梨は遠慮とかせずに少しずつ1時間半くらい自分の話をしてくれた｡

18年間彼氏がいないこととか､デートしたことがないとか､そうゆう恋愛関係の話もしたし､自分がどんな風に育ったかとかも｡

やっぱり普通の女の子だ｡

普通に話したがりで､かまってほしくて､キャッキャと笑いながら話して…

俺はそんな可愛い普通の花梨が可愛くて仕方なかった｡

「花梨…」

「はい？」

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「俺が一番最初の男だったらいや？」

俺なに言ってるんだろう｡

「…龍咲さん､ほんと冗談ならやめてください｡」

クスクス笑ってまた花梨はそう言うと俺の肩をポンポンと叩いた｡

「俺がなにをしたら､冗談て思わないの？」

また顔を近づけると､花梨は桃みたいな頬をしたままそっぽを向く｡

「ん……と､毎日会いにきてくれたら？」

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ザ･キャバ嬢みたいですね､と花梨が笑うと俺は分かったと言った｡

「お前の彼氏になれるまで通うよ｡じゃ､今日はアフターつき合えよな｡」

「えっ､仕事は…？」

「俺いい役職貰ってるから休んでも問題なし｡ただお客さんから鬼のような電話が鳴るだけ｡」

龍咲レオンは無欠をしたことないくらい出勤もするし遅刻しない､しかもお客さんにはマメで有名｡

「ちゃんと仕事はいかなきゃ､ね…龍咲さん？」

少しお姉さん口調な花梨｡

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「じゃわかった……」

――数時間後――

「いらっしゃいませ～!」

若い男たちの声が聞こえて煌びやかな内装が女の子たちを魅了する､ここはホストクラブ｡

「……花梨､ここ｡」

隣にいるホストのまんまの龍咲レオンが指を指してそこに私を座らせる｡なのに彼は隣に座ろうとしない｡

「レオン…隣すわってくんないの？」

甘える花梨｡

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スタッフに耳打ちをするとあたしになにも言わずに奥に消えるレオン｡それを気にしてる自分がむかつく｡

club HEARTSて店は広い箱で､ホストの在籍も多いみたいだ｡耳打ちされた新人ホストは向かい側の席にすわると､あたしの暇つぶしをしてくれるみたいだ｡

たまに奥から姿を魅せたと思えば店外にでてお客さんを席に通して軽く乾杯するとまた奥にいって､というパターン｡

数時間で店内は龍咲レオンの客でいっぱいだった｡

「レオン統括のお客様､しおり様から最高級シャンパン頂きました～～」

との一声から色んな卓でレオンに相手されたいために客が金を落としている｡

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ある子の卓には1時間でシャンパンが５本並び､ある子の卓にはブランデーなどの飾りものが卸されてる｡

なかなか相手にしてもらえない子達は退屈そうに携帯をいじりながらヘルプと会話をしている｡

「…花梨さんって､うちの店はじめてですよね!」

活き活きした顔で新人の男の子は話してくるけど､あたしはレオンと話したいだけなのに……

と､奥の部屋からドレスを着た女の子がグラサンをかけて出てきて､レオンと消えていった｡

新人がまるであたしを邪魔するかのように目の前をかためてたから､顔をしっかりみれなかったし､女の子も顔を伏せててよくわからなかった｡

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「ねえ､あっちの奥て部屋になってるの？」

「そうですよ! テレビもあって超広いスペースなんですよ! ちなみにVIP料金かかりますけどね☆」

ちなみに1時間5万が部屋代プラスの飲み代だそう｡さっきの女がエースなのかな？

「飲んでる？」

レオンは色んな卓で飲みまわってたから､少し眠たそうにも見えた｡

「乾杯しよ？」

「うん……サクヤ､ウーロンもってきて｡」

ノンアルコールって…

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「さっきの女の子ってキャバ嬢なの？」

「…お前が知らなくてもいいだろ｡」

ボーイが持ってきた烏龍茶を手にもってあたしのグラスと合わせると､いっきに飲み干す｡

颯爽とボトルを卸してる子達のもとにいって腕を肩にまわす｡ある意味､腹が立つくらい分かりやすい彼の営業スタイル｡

使う子にはそれなりの時間と愛情を注ぐ｡使わないならただの休憩場所として利用する､のどちらかだ｡

あたしは今のところ後者だ｡

「ドンペリもってきて｡」

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コールが始まるとレオンが戻ってきてあたしの肩を抱く｡耳元でサンキュとだけささやくと､彼はその高いボトルを片手に口の中に水のようにそそぎ込んで数十秒でそれが空瓶になった｡

「…次はピンク？」

意地悪に微笑んでレオンは耳元でそれを言うと軽く耳たぶを甘噛みする｡

「……ﾝ……///」

あたしの返事を待つはずもなく先ほどのシャンパンよりも高いものが持ってこられる｡

それも泡のように消える｡

水が流れるように消えていく商売こそが水商売……

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あたしのその日の会計は30万だった｡

未収にできるはずもなく､財布にあった45万からそれを払った｡自分の6日分の給料だ｡

「…花梨て俺のこと好きなんだな…可愛いね…」

ほんのり酔ったレオンはあたしの荷物を持ったまま､外に一緒にでる…送り出しだ｡

「なあ､本名教えて｡」

ほんとは…花梨は凜なのに｡

「蓮だよ……」

ほんとはレオンは偽物だって知ってるのに｡

蓮はそれを知らない……

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……

アフターで連れて行かれた場所は彼の職場だった｡最初に行かないと､かなり念を押したものの､彼は聞く耳を持たず､俺がアフター誘ってるんだから､金とか心配しなくていいから!と逆に念を押されて､

なんか凄く広い部屋に龍咲さんとふたりで座ってる｡

「ホストクラブて個室タイプもあるんですね…」

というとシステムというものをいろいろと教えてくれた｡

途中何度か部屋を抜けてはお酒を飲んで戻ってきて他愛もない話をした｡

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「…明日同伴予定は？」

「明日はまだ取れてないんです｡でも今月のノルマは達成してるから､大丈夫なんですけどね｡」

「じゃ､明日俺と同伴しよ？」

さっき本気て分かるまで毎日店来るっていってたの有言実行させる気なのかな？

ほんと変わった人……

「分かりました｡」

手帳をあけてさらさらっとスケジュール表に名前を書く｡

時間と場所は龍咲さんが決めてくれるだろう｡

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「昼からでもいい？」

「…えと…」

分かりました､と思わず答えてしまった｡

普段は昼からの約束は何かしら理由をつけて断る｡途中でしんどくなって､店に行きたくない､と思わせたら困るから｡あと単純に店外営業を本人達はあまりしたくないから｡

「俺営業終わってから､家かえって準備とかして……３時でもいい？」

「大丈夫ですよ｡」

てことはそれまでにセットとかしなきゃ駄目だな｡

「店いく前に一緒にセットしにいかない？」

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やっぱり龍咲さんは何かと気がすぐに利く｡

「そうしないと､花梨ちゃんと休めないもんな……もう帰って寝る？」

あたしは縦に頷く｡すっと立つとあたしの手をとって荷物を持ってくれた｡

部屋をでてすぐに他の従業員たちに何かを小声で言うと､あたしにも

「…グラサンだけかけといて｡あとなるべく俺で隠すけど､顔も伏せといてね｡」

といって肩を抱かれてあたしはガヤガヤした店内を抜けていく｡みてないけれど､女の子たちの視線を凄く感じた｡

「…よし｡」

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