… 極楽(18禁)愛戯 …

-

「名刺みせて!」

凜はクラッチの中に入ってある同業の子たちの名刺を蓮に渡す｡

どうやら水商売をしてると､ホストやバー等そっちの方々が営業又は趣味でキャバクラに遊びにいったりするらしい｡もちろん風俗にも｡

「でも凜ちゃん口説かれたでしょ｡」

「…うーん､なんかね｡面倒だったから､丁重にお断りしたんだけど｡」

確か顔がのってる名刺だったかな｡ …そうそう､龍咲なんとか｡

「羨ましいな｡あたしなんかただの受付嬢だから､おっさんばっかで……」

-

-

蓮はいつもさらっと嘘をつく｡それに凜は気づかない､というか嘘にしろ本当にしろ､そんなに興味がないだけなのかもしれないが｡

「…いいじゃない､大企業の受付嬢なんて､この不況のときになかなかないよ？ママからこの顔もらったからだよね､感謝しないと｡」

凜は自覚している｡自分たちの顔が整っていることを｡生まれてきてからずっと人にうらやまれて､モデル事務所からもスカウトがきたりだとかもしてた｡

凜に限っては勉学においても優秀だったから才色兼備の鏡だった｡

-

-

プラスにさらにプラスアルファ…絵に描いたような優等生の凜が蓮にとっては気にくわなくて仕方なかった｡

「…口説いてきたのどれ？」

取り上げていた名刺をさっと凜につきだして蓮は言う｡

「龍咲なんとか…覚えてないよ～自分の指名客と被ってたから適当に流しといたもん…」

フルーツジュースを飲み干すとまたカップにおかわりして一気に飲む凜｡時計で時間を確認するとそのまま洗面所にいった｡

「club HERTSの…龍咲レオンね｡」

顔つき名刺を手にすると､そのまま蓮は自分の部屋に戻った｡

-

-

「もしもし？」

電話の相手口はガヤガヤとうるさい｡

「…今日はご来店ありがとうございました｡」

品のあるゆったりした優雅なしゃべり方はその名前にもあってる凜の話し方だ｡でもさきほどのはニュアンスが微妙に違う｡蓮が真似してる､と身内なら誰でもわかる｡

「…ああっ､花梨？」

低い何ともいえない太い男性の声が耳を撫でる｡

-

-

「連絡くれるなんて予想してなかった……２回目行こうと思ってたのに｡しかも明日な｡」

ケラケラと子供のように笑うレオンに蓮はきゅんとしない｡ただ"花梨"のことを想う男性がただただ欲しいと無意識に想うだけ｡

「いまなにしてるの？」

「今は先輩のバーでダーツしてる｡お前もくる？」

このままいくと絶対にばれる｡化粧も髪の毛もすべて違うし…

「お風呂はいってから行っても大丈夫？」

「わかったよ､じゃまた連絡頂戴｡」

-

-

蓮は化粧を落としてから髪の毛にストレートをあてて､すっぴんに近い状態にして３０分後である今､家からでてタクシーに乗り込む｡

凜が話しかけてきてたけど内容は適当に返事したんだと想う｡

「今出たよ｡」

「タクシーの運転手さんにかわってくんない？道案内するからさ｡」

そして数分後には目的地につくことができた｡

「…おいで｡」

バーカンにいたのは王子様みたいに綺麗な男の子がひとり｡蓮を"花梨"だとおもって手招きしている｡

-

-

「化粧薄くてもあんま変わらないね…可愛い｡」

少し色っぽい声でにっこりほほえむと蓮にドリンクメニュウを渡してきた｡

「でも花梨は気まぐれだね｡アフター誘ったら､"明日朝早く予定があるんで"て断ってたのに｡まさか来るし｡」

ま､うれしいけど､とグラスとグラスをあわせて乾杯する｡蓮は凜が好きなカシスオレンジを頼んだ｡でも蓮自身は好きではない｡甘いお酒なんてお酒だとも想ってない｡

「…俺も水商売してるけどやっぱ彼女は欲しいからさ､花梨みたときはほんとキターて想ったんだよね｡」

イケメンが目も合わせずいってくる｡

-

-

ふつうの女なら多分､【あたしに気があるんだ】とか思うだろう…でも相手は水商売のプロ｡

女の子の気持ちを考えて行動したり言動したりするのが職業なわけだ｡

そんな彼らが簡単に心を許すわけがない｡

「営業でもその言葉はうれしい｡ありがとう｡」

長いまつげをパチパチさせながら"花梨"のふりした蓮は甘ったるしいカシスオレンジをくいっと半分まで飲んだ｡

心の中で焼酎か日本酒のみたいと思いながら咳をする蓮｡

-

-

「ま…ホスト相手じゃ､そう思われて当然だよな…」

けど､…と言うと顔をぐっと近づける龍咲レオン｡高い鼻がかすりそうで､吸い込まれそうなほどの目力でじっと見つめられる｡

「店に来なければ俺たちは客とかそうゆう関係じゃないだろ､花梨？お前が俺のものになればいい｡」

にこっと微笑むと彼はグラスを飲み干してバーテンダーにドリンクを頼んだ｡

「…花梨が俺の仕事場にはいってこないなら､俺たちは水商売ていうフィールドと全く関係なくなるじゃん？」

と龍咲レオンは続ける｡

-

-

早く抱かれたい…ただ自分のステータスに姉に惚れてたイケメンホストとセックスをしたっていう項目が入ればいい｡

…蓮はそれだけで快感に浸れる｡

「…いこっか…」

特に話もせずにチェックすると龍咲レオンは手を握りしめて､店を出た｡

向かう先はわかってる…男女の関係になることくらいわかってる｡そんなものに言葉なんて必要じゃないもの｡

夜が死んで朝になったときにすべてが変わる｡

蓮のものになってるか……

-