… 極楽(18禁)愛戯 …

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「いらっしゃいませ」

あたしはキャバクラで働き始めてから猫をかぶるようにした｡凛みたいな女の子を頭に描いてそれを本に顔の表情や仕草を造りきった｡

「…花蓮ちゃんって本当に綺麗だね…」

お客さん達はあたしに翻弄される｡

でもひとりだけ違った｡

「ねえ､そんなにつくってて疲れない？」

あたしより10個も上の大人な男性からそう言われた｡彼は岩本さん｡

あたしを可愛がってくれてるお客さんの連れだ｡

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「えっ……」

あたしのお客さんが席をはずしたときに顔を近づけて言う彼｡

ドクン…

「そ､…そんなことないですよ｡無理なんかしてないですし｡」

「いや､嘘言われても俺にはわかるよ｡」

少し苦笑する岩本さん｡

「………」

「たぶん素のほうが君はいいと思うんだけどなあ｡まあ猫かぶってるから余計､その仮面の下をみたいんだけど」

くすりと笑う｡

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その日の帰り､あたしの心臓がドキドキいってるのが分かった｡

「…むかつく……」

そう呟いて顔をあげるとクラクションが鳴った｡

あたしは思わず振り返ると見慣れない黒塗りの車｡窓があくと……岩本さんだった｡

「…今からご飯どう？」

あたしが岩本さんの友達の担当なのに､このひといいのかな？

あたしは興味本位に助手席にのる｡

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駐車場に車を停めると彼はあたしの前を歩く｡大きい背中…がっちりしてるであろうスーツの下は…大人の色っぽさ｡

ほんのりブルガリのブラックの香りがあたしの鼻をくすぐる｡

薄暗い店内｡すごくムーディーだったりする｡

「……で？」

「はい？」

あたしは意味の分からない展開に聞き直すと岩本さんは笑った｡

「君の本性教えてよ｡」

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なんか急におかしくなって､あたしも笑った｡

「あたし？こ～んなのっ…」

座りかたを崩して顔に入れてた力をゆるめる｡

「…やっぱり｡絶対俺好みのさばさばしてて自分に自信ある思ったんだよね｡そういう子って目つきとか顔でわかる｡」

「……はあ？」

よくわかんない人だ｡

なに？口説いてんの？

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岩本さん曰く､あたしはもの凄く窮屈でつまらなさそうに接客をしてるんだって｡

可愛い子ぶれてもないし､猫も中途半端にかぶってるとか散々に言われた｡

「…なんか凄くけなされてるんだけど…嬉しいのはなんでだろ…」

くすくす笑いながらあたしは言う｡

「…うーん､たぶん誰にも気づいてもらえないからじゃない？」

そう､あたしはみんなにあたしの色んなところを見てもらいたいのに見られるのは双子の姉かあたしの外見｡

誰もあたしの悪いところにも興味を持ってくれなかった｡

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しゃべっていると気づけば閉店の時間になっていた｡最後の一杯を頼んだ頃にはお互いにいい感じになってた｡

「…じゃ､これ…」

1万円札をあたしに渡す｡

「え？」

「タクシー代だよ｡付き合ってもらったんだしさ｡」

岩本さんは目を細めて言った｡

…このひと､あたしを口説くわけでも抱くわけでもなく､単に話をしたかったんだ｡

そう理解すると余計に岩本さんてひとがあたしの中で大きくなる｡

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その日別れてすぐにベッドに転がり込んだ｡翌日気づいたのはあたしが彼の連絡先を知らないってこと｡

それから数日､数週間経っても彼が店に現れることも…店の前であたしを待つことも…名刺から電話してくることもなかった｡

会いたい……

あたしの想いは募るばかり｡

何度岩本さんの友達…あたしのお客さんに連絡をとって彼の連絡先を聞こうと考えたか｡

そのとき､携帯のバイブ音があたしの静かな部屋に響く｡

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画面に飛び出してきたのは知らない番号｡

あたしはかったるく電話をとる｡どうせ先日来た客からのお誘いの電話だろう｡

つくづくキャバよりも風俗のほうが後腐れなく客と繋げることができると痛感していた｡

「もしもし？」

「蓮？」

あたしの本名ってことはプライベートの友達かな？

「だれ？番号登録してないんだけど…」

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「俺だよ俺っ…」

「俺俺詐欺かよ……」

あたしは地元の男連れに話すきつい口調でつっこむと電話先の彼は笑い出した｡

「やっぱり好きだな､そういうの…」

ドキン……

「俺だよ…岩本､わかる？」

ああ､彼だ｡

「わかる｡」

素っ気なく返事をする｡

「…ほんとは待ってただろ？」

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