… 極楽(18禁)愛戯 …

-

【竜のおはなし】

渡辺竜｡

親には今の仕事をちゃんと報告することを避けてる｡別に隠すことではないけど…友達からも今までの彼女からもいい返事をもらったことはない｡

ま､女の場合それを気にさせるほど俺の中身も外見も落ちぶれてないけど｡

自信家の野心家で金と女にはルーズなのが俺｡

それは昔も今も変わってない｡

-

-

「お電話ありがとうございます」

俺の背後にはワイワイ賑やかにやってる女の子達｡仕事を待つ､…金のために来てる風俗嬢たちだ｡

「……えと､まどかちゃんならすぐ大丈夫ですよ｡ …ええ､分かりました｡」

週に何度も電話を寄越すこのデブは大手企業の主任かなんかだ｡うちの店の常連だけど女の子はみんなデブだからかいやがる｡

「まどかちゃん､準備して～」

「はあい…」

かったるそうに仕事用バッグを持つと外にいる車に向かう彼女｡

-

-

デリバリーヘルスとホテルヘルスの合併的な店の店長が俺だ｡

女の子に居心地のいい待機室と態度をとってあげて､金を稼いできてもらうという楽そうで大変な仕事だ｡

「…テンテン､あたしもう辞めたい～…」

泣き言をいいながら来るやつもいれば

「今日お金ないから前借りしてもいい？」

とか言う鬱陶しい女もいる｡

-

-

俺は基本タイプじゃない限り店の女には手を出さない｡だって後々面倒なのは経験済みだから｡

ヤったとしても酔って覚えてないとかいうふうに突き通す｡女って体の関係を持つとやたら面倒になる｡

だから俺は基本彼女をひとりには定めない｡

そのほうが執着しないぶん､みんなに優しく適当にできるからだ｡

「…おはよ､みさ｡今日なにやってる？」

「竜♪今竜に電話してご飯いるか聞こうと思ったところ～」

-

-

みさは女子大生｡

普通に大学に行き､たまにバイトをしてる一人暮らしでちっさいからぬいぐるみみたいだ｡

「ありがと♪」

仕事を終わらせてみさの家に車を走らせてると電話｡

「竜､今あんたどこ？」

ツンデレ薫からだ｡これが今の俺の２人目の彼女｡なにかとツンツンしてるんだが､ただのかまってちゃん｡

「…今から浮気～っつて」

-

-

「ふざけんな! ばかっ…」

とだけ言うと冗談が通じない彼女の場合は電話を切ってしまう｡

でもほんとはただ､折り返しの電話で俺が薫のことを気にしてるっていうのを試してるだけの言わば､ただの我が儘｡

俺はあえてかけない｡

するとまた怒りながら電話がかかってくるから冷静に対応するのが俺と薫の関係｡

３人目の彼女は､人妻の美登里(みどり)さん｡足がすらっと長くて綺麗な黒髪に上品な唇｡清楚で高貴な女性…といった感じ｡

-

-

出会いは確かバーでひとりで飲む美登里さんを俺はナンパして､彼女には家庭があることを前提につきあいをしてる｡

悪く言えば都合のいい関係｡

切りやすく繋がりやすい俺と美登里さんは週1はホテルで密会する｡純白そうな顔をしてワンピースを着ているのに､それを剥いだ瞬間の彼女の淫乱さといえば並ではない｡

そのギャップが俺は好きだ｡

1 普通の女の子
2 ツンデレわがまま娘
3 刺激的な人妻

ぜんぜん違うタイプだろ？

-

-

ちなみに

4 ただの都合いい女

と最後に俺が一番本気になりたいのが

5 歩くブランド

て感じかな｡

もう裕貴(ゆうき)とは４年くらい付き合ってる｡お互いフラフラした性格でつきあいたては大変だったけど､慣れてみれば今ぐらいが丁度いい｡

金がかかる女で綺麗だし美意識が高いから俺と付き合ってるのを隠したがる｡

たかが風俗店店長てだけで｡

-

-

みさとご飯を食べ終わったら電話が鳴る｡

【唯(ゆい)】と画面にでている｡みさは食器を洗ったり片づけをしてるから普通に電話をとった｡

「はい？」

「今から会えない？」

都合のいい女､唯はいつも突然でほんと不定期なため､なかなか会えない存在だ｡

俺たちは"付き合ってる"けど､約束とか絆とかないようなもの｡

「わかった､すぐいく｡」

俺はジャケットを手に持ってソファから立つ｡

-

-

「…また仕事場のひと？」

「ああ､ごめんな､みさ…ちゃんと埋め合わせするよ」

俺はしゅんとしたみさの頭を優しく撫でてやる｡みさはエプロンを付けたままぎゅうっと俺を抱きしめる｡かわいいなあ｡

「明日は？」

「…ごめん明日は予定あるから､明後日来てもいい？」

「うん♪わかったあ♪」

笑顔で俺を見送るみさに手を振って車に乗り込む｡

-

-

行き先は唯の家｡ヤることなんてひとつしかない｡ただ重ね合って求め合って､ふたりの時間を過ごすだけ｡

唯の頭にはセックスしかないんじゃないかと思うくらい｡

ほかの男と不仲になるとすぐ俺を呼びつける｡

「…じゃあな」

２時間くらい一緒にすごすと俺は本命のいる家に戻る｡

どうせ帰宅してもいないんだろうな｡

-

-

「…ただいま」

俺がドアをあけると部屋がやたら明るい｡珍しい…この時間いるんだ｡

リビングのドアをあけると彼女はソファで寝転がったまま眠りについたみたいだ｡

抱き上げると寝室に連れて行く｡

「ん………竜…」

寝ぼけて俺に絡みつく｡

「はいはい…」

かわいいとかじゃない｡ただ愛おしい｡

-

-

裕貴は知ってる｡

俺が遊び人でひとりの女に執着できないことくらい｡それでも彼女は何もふれてこない｡

ただ4年間当たり前のように一緒にすごしてきた｡

裕貴にとって俺という人間と付き合ってメリットが果たしてあるのか？と思ったりもする｡

「……ん～……」

気持ちよさそうに布団に潜る裕貴の頭を撫でながら俺は何度､「ごめん」と言っただろう？

-

-

―…ある日､みさと手を繋いで街を歩いてたら､前から裕貴が友達と楽しそうにはなしながら歩いてきた｡

俺は思わず手をふりほどいて彼女から目を避ける｡

ぱっと彼女の顔をみると笑顔のまま友達とはなしながら俺をさりげに見て通り過ぎていった｡

みさとお泊まりをせずに家にかえるとみさはＴＶをみてた｡

「……おかえり～…」

それだけ言う裕貴に俺はなにもいえなかった｡

俺…傷つけてるのに｡

-

-

裕貴が入ってる布団に潜り込んで背中をむけた彼女を抱きしめる｡ …やっぱり一番ここが落ち着く｡

俺はふうと軽くため息をつくと彼女をぎゅっと抱きしめる｡

「……ねえ､竜……？」

「ん…？」

少しのあいだの沈黙｡

「あたし､今月末には家でるね…実家に帰る｡」

静かに裕貴が言う｡

「……なんで？」

-

-

「……もう疲れたの｡」

裕貴の背中しか見えない俺は彼女を頃がしてこちらに向かせる｡

真っ赤になった目…頬をつたう涙に俺は焦りを感じる｡

今まで涙なんか見せなかった､裕貴が､俺の目の前であふれるくらい涙をこぼしているからだ｡

俺は両手で彼女の頬を撫でてから抱きしめる｡

「……裕貴……ごめん､もうやめるから｡おまえだけを大事にするから……」

首を横に振る裕貴｡

-

-

「…あたしも浮気したから……」

ズキン､と胸にナイフが刺さって息ができなくなった｡

「……彼のこと浮気相手としか思ってないけど､彼は大事にしてくれるの｡竜はあたしが離れないとでも思った？」

正直思ってた…｡

「…いくなよ｡無理…」

俺は強引に裕貴の唇に自分のを被せる｡

「……っやあ……」

「嫌じゃないだろ! お前には俺しかいないだろっ……」

-

-

裕貴は涙をぼろぼろ流したまま放心状態だった｡俺は頭をくしゃくしゃっとすると顔を伏せた｡

―…彼女を犯すなんて｡

裕貴は最初抵抗してたものの､次第に力がなくなりまるで人形みたいになってた｡俺はただただ無我夢中で彼女を抱いた｡

引き止めたいのと､浮気相手に対する嫉妬心と…裕貴への愛､ごっちゃまぜにして…

「………っく……」

裕貴はまだ泣いてる｡

「ごめん､裕貴……お願いだから離れるとか言うな｡頼む…」

-

-

頭を撫でようとすると弾かれる｡

「触らないでよ……」

最低､と小声で呟くと乱れた服を着直してスーツケースをクローゼットから取り出した｡

「……正気かよ……」

「もう無理だよ｡あたしはいつか変わってくれると思ってあなたを待ってた｡でもあたしが離れてから気づくなんて子供同然じゃない……」

確かにそうだ｡

「…俺はお前がいい……」

-

-

「都合のいいこと言わないでよっ!!! あたしに４年もつらい思いかけたくせにっ……」

次第に裕貴の声は大きくなる｡

「……わかったよ」

俺は…

「残りの６０年お前を幸せにするから…」

「……竜……」

本当に

「ごめんな､つらい思いさせて」

-

-

仕事用以外の携帯電話をすべて解約して俺は新しい裕貴との人生をスタートさせた｡

付き合って長いのになぜか新鮮で照れくさかった｡

その1年後に俺は裕貴にプロポーズをする｡給料をためて買ったダイヤの指輪と一緒に｡

プロポーズはこれで…あのときから２回目だよな｡

「残りの人生絶対に幸せにする」ってくさすぎるかな？何気に､俺は結構好き｡

---fin---

-