BLACK WORLD

ゴミを平然と捨てる奴
年寄りを騙して金とる奴
盗みをする奴

そいつらの黒い心が私を生んだ

私はこの世界を黒に染め尽くすために生まれたんだ

私はあの子に向けて"黒の光"を送った

"黒の光"とは黒くてどろどろした私の魔法

一筋の黒い光が、ヒトの白い心に入り込み、包み込んで真っ黒にする。そうやって心を破壊していくのが私の仕事や快感

しばらくの間"黒の光"を送り続けていた

すると先生の罵声にじっと耐えてたあの子についに変化が表れた

｢お前がいないほうがチームがまわる、今のお前はチームにいらねぇ！｣

先生が言った途端、あの子の目から大粒のしずくが溢れた

｢…わかりました｣

一言だけ呟き、ふらふらと散りばめられたジャージを手にとりその場をあとにした

私はワクワクしていた

ーもうすぐあの子もこっちの世界に堕ちる！魔力減るけどもっと魔法使って早く壊そっと！

魔力はあとわずか

あの子が家に着くまでになくなりそうだったが、大丈夫だろうと自信があった

私の姿はヒトには見えないからぴったりあの子にくっつき"黒の光"をかけられる

時折あの子はぐずったりため息をついていた

あの子とは、サッカー部の１年生。１年生ながらレギュラーに選ばれる実力がある。そんな彼はただ今壁にぶちあたり悩んでいた

｢苦しんだ分だけ損だよ、やめて楽になろう｣

｢チームのためなんかじゃなくて、自分のことだけ考えて楽になろう｣

聞こえないけど私はたっぷりと希望の言葉をかけ続ける

私は魔法を使えるほかにヒトの心の色が見える

もうすぐ彼の家に着く
もうすぐ彼の心は真っ黒に染まる

仕事が成功すると少しだけ魔力が高まる

彼が歩くことをやめた

俯いていた彼の表情を見ようと私は覗きこみ、私は今日一番の笑顔をした

彼もまた笑っていたから。彼は楽になることを選んだんだ

ー実力はあるのに精神面は弱くて脆いんだね。ありがとう

次の日、彼は退部届けを出した

私は魔力も回復し早くも次の仕事を考えている

ヒトだらけの場所はとにかく獲物が多い。誰しも一つは黒い心の世界を持っているから。ターゲットにならないヒトを見つけ出す方が難しい。

そんな中で私の次なる天使を見つけた

私にとっての｢天使｣とは、ヒトにとっては｢悪魔｣だ。たまに例外もいて、ヒトを殺たりしちゃうんだけどね。私が手を貸さなくても勝手に黒く染まってくれて助かっている