官能迷宮

2011年4月3日、田中三郎という名の青年が、陸と海とが接する砂浜に立っていた。

ジ―ンズのポケットに両手をつっこみ、大西洋のおだやかな波をみつめている。

潮風が長すぎるくらいの茶色の髪を吹きあげ、すけるように白い額をあらわにした。

この3ヶ月間ずっと、彼の頭をかきみだしているもやもやが、いまも胸にわだかまっていた。

いまから3ヶ月前、彼と彼の母は東京都のマンションに住んでいた。

三郎は高校を卒業したあと、就職にも就かず部屋でゲ―ム三昧の日々を送っていた。

バイトもいくつかしたが、長くは続かず結局今は最後に就いたピザ屋のアルバイトに週に１回行くか行かないかという状態であった。

別に人生諦めている気はないが、高校時代まではそれなりに運動も勉強も密かにそこそこは出来ていた。

顔立ちも悪くはないはずだ。

しかし、卒業してからというものバイト先ではなかなか友達もできず適当な毎日を過ごすようになり、童貞という壁も越えられずにいた。

そんな彼がずっとハマっているものがあった。

それはＣ-ＢＯＸというネットであった。

そこは様々な人が数秒と間隔をあけないうちにレスされているような交流の場であった。

特に、ネタ板に依存している彼はそこではハンネは持ってはいないものの、歴代のネタ民を知っているほど長くいた。

たまに女性のｕｐ画像などをオカズにしたり、１８禁を拝見しながらオナニ―することもしばしばあった。

三郎はネットの世界では、現実では絶対出来なかったようなこと…例えば論破などキマッた時は優越感で気分が良かった。
三郎が唯一、威厳を張れる場所こそがまさに、そこにはあった。