僕のものがたり(^ω^)
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#11 [ばららいか]
生きているにせよ、傷を探して止血しなくては出血多量でどのみち母は死んでしまうだろう。
母の体をおこし、「傷」を探した。
「傷」はすぐ見つかった。
母の手にはカッターナイフが握りしめられていて反対の手首がパックリと開いている。
そこから赤黒い血が多量に流れ出ていた。
:11/04/18 19:32 :P01B :KeC.1MnE
#12 [ばららいか]
プール鞄からタオルをとりだして母の手首にきつく巻き付け止血するという措置をとった。
救急車を呼び、父の携帯に電話をかけたが、なかなか出ないので何回もかけていると電源を切られてしまった。
救急車はすぐに到着した。
:11/04/18 19:32 :P01B :KeC.1MnE
#13 [ばららいか]
待合室では僕と、何故か僕のクラスの担任の湊川先生がいた。
その頃には僕もすっかり落ち着きを取り戻していて、呑気にココアなどすすっていると男の先生が出てきて母の無事を告げた。
息を切らした父が病院の入り口を抜けて僕たちの前に現れるのを心のどこかで期待していた。しかし父は最後まで現れなかった。
:11/04/18 19:33 :P01B :KeC.1MnE
#14 [ばららいか]
時計を見ると午後8時をまわっていたので今日は湊川先生のお家に泊まらせていただくことになった。
ファミレスで夕飯をご馳走になった。
このファミレスには、小さい頃来た記憶がある。
まだ両親の仲がよかった頃だ。
僕はあの日と同じハンバーグセットを頼んだ。
:11/04/18 19:34 :P01B :KeC.1MnE
#15 [ばららいか]
「お母さんご無事でよかったねぇ。
発見が早かったのと、応急措置のお陰だと先生が感心なさっていたわよ?」
湊川先生は若くて可愛らしい顔立ちをしていた。
生徒からの人気はダントツの1位だ。
湊川先生の家に泊まったなんて言ったらみんな羨ましがるだろうな、と思った。
:11/04/18 19:35 :P01B :KeC.1MnE
#16 [ばららいか]
「僕、本当は今日プールにいくはずだったんだ。」
「学校の?」
「うん、けど行かなかった。すぐ帰ったんだ。」
「何故?」
「それは・・ええと、つまり面白いものが落ちてたんだ。それをずっと観察してた。」
「あら、なにが落ちていたの?」
「それは内緒だよ。」
湊川先生は首を傾げながらオムライスを口にはこぶ。あの日母もオムライスを食べていた。
:11/04/18 19:36 :P01B :KeC.1MnE
#17 [ばららいか]
あの猫の事を思い出した。飛び出した猫の目に僕はうつっていただろうか。
弱々しい鳴き声はなにを伝えたかったのだろうか。
僕に助けを乞うようにも聞こえたし、もういっそ殺してくれと悲願しているようにも聞こえた。
僕は助けることもしなかったしとどめをさすこともしなかった。
ただ見ていただけである。母はどうだろう。
どうしてほしかったのだろう。
余計なことをしてくれたと僕を恨んでいるだろうか。
:11/04/18 19:38 :P01B :KeC.1MnE
#18 [ばららいか]
父と連絡がついたのは翌日の朝だった。
父は仕事を休み僕を迎えにくるとそのまま病院へと向かった。
母は目を覚ましていて、僕の顔を見ると涙を溢れさせながら嗚咽まじりに言った。
「ありがとう・・・ごめんね、ごめんね・・・」
僕は母を助けて良かったのだ、と思えた。
:11/04/18 19:41 :P01B :KeC.1MnE
#19 [ばららいか]
一週間後、母は退院してきた。
同時に、両親から離婚を告げられた。
今まで父は離婚を拒否し続けてきたが、今回の母の自殺未遂がきっかけとなりついに離婚を決意したようだ。
僕は母に引き取られることになり、夏休み中にもこの町を出て母の田舎へ引っ越すことが決まった。
:11/04/18 19:43 :P01B :KeC.1MnE
#20 [ばららいか]
一通り話を聞き終えると湊川先生は今にも泣き出しそうな悲しそうな顔で「そうなの・・・元気でね、クラスのみんなでお手紙書くからね・・・」
と言いながら僕の手を優しく握り、包み込んだ。
僕は
「いらないよ。」
と言って先生の手を振りほどきその場を後にした。
:11/04/18 19:43 :P01B :KeC.1MnE
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