せ ん せ い
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#1 [ひ ま じ ん] 11/05/23 15:07
恋とか愛とか
そんなうわわついた言葉大嫌いだった
いまいちな学校生活、
勉強に焦る毎日。
「俺についてこい。」
あ…。笑った
「受験までよろしくお願いします!」
思わず出た一言だった。
せんせいのこと…
好きになっちゃいそう
-せんせい-
立花あおいside
#17 [ひ ま じ ん]
時計の針は3時半を指していた。
(そろそろ出発するか。)
神内はソファから離れて腕時計をし、カバンを持った。
玄関で靴を履いているとキッチンから女が出てきて神内に後ろから抱きついた。
「ゆうちゃーん。なんで出発するのにいつも一言も言ってくれないの?」
「美加…いたのか。ごめんごめん。行ってくるよ。」
「いたのか、じゃないし!もう!はやく帰ってきてね。」
「ん。じゃあね。」
神内は女に別れを告げ、玄関の扉をあけて外に出た。
:11/05/24 00:17
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:g0qYSIBg
#18 [ひ ま じ ん]
神内は駅前の予備校の講師をしていた。予備校では優しくておもしろく少しクールな先生で人気だった。しかし神内について詳しいことは生徒どころか先生もあまり知らなかった。
そんな神内の生活はというと実は大学生だった。26歳で四回生になり学費を稼ぐために予備校で働いていた。26歳という歳で大学に通っているのも深い理由があった。しかし理由を含めこのことすべてを知っているのは同じ職場の先生だけだった。
ただ職場の先生でさえ知らないことがあった。それは神内が女と同棲していることだ。
もともと神内は頭の回転が早くトークが上手いので女からよくモテた。ただ神内本人はモテてる自覚はないし、女にさほど興味がなかった。同棲している美加にだって彼女としてちゃんと相手することはほとんどなかった。
神内もまた、人を好きになったことがなかった。
:11/05/24 00:17
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#19 [ひ ま じ ん]
(ああー…今日も1日なげぇなあー…)
そんなことを考えながら神内は美加の原付にまたがって予備校に向かっていた。神内は美加のいわゆる"ヒモ"なのだ。
神内が予備校につくと大谷が駆け寄ってきた。
「神ちゃん。今日はBクラスに1人体験の子がくるよ。」
神ちゃんとは神内のあだ名だ。
「ああ大谷先生。お疲れ様です。体験ですか。どんな子ですか?」 「立花あおいって子。商業高校の子でお兄ちゃんが通ってたんだよ。」
「商業高校ですか。へー。」
(立花あおい、よし。覚えた。)
:11/05/24 00:18
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#20 [ひ ま じ ん]
授業の用意を持ち神内は数学Bクラスの202教室へむかった。
(あっ。そーいや商業高校の生徒がいたよな。ちゃんと注目して見といてやろう。授業ついてこれるかな。)
そんなことを考えながら神内は教室の扉をあけた。
「うぃーす。」
いつもの気だるい感じで入ると真っ先にあおいと目があった。
(あの子か。商業高校の子。)
簡単な自己紹介を済ませて神内は授業にうつった。
授業は解き方を教えて実践問題をやらす繰り返しだった。生徒が問題を解いてる時、神内は生徒の邪魔にならないように様子を見ていた。
(男子はいつも通りだな。立花は…結構問題解くスピード速いな)
それが神内の第一印象だった。
:11/05/24 00:19
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#21 [ひ ま じ ん]
「解くの早いな。」
神内はあおいを見下ろしながら声をかけた。
あおいはびっくりして目を大きく見開き神内を見つめた。
(びっくりさせたか。)
神内は少しあおいのことを気にしながら授業を再開させた。
授業が終わり男子は帰って行ったので教室にはあおいと神内だけが残された。神内は声をかけてみることにした。
「今日の授業どうだった?なんか解くの早かったけど…」
あおいは少しびっくりした様子だったが元気よく答えた。
「す、すごくわかりやすかったです。内容は少し簡単でしたけど…」
これをきっかけに2人の会話が弾んだ。
:11/05/24 00:20
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#22 [ひ ま じ ん]
神内がモテる最大の理由。それは人を見る目だった。どんな些細な仕草、表示も見逃さずその場に応じた声をかけることができるのだ。
このときの神内もあおいの表示を見逃さなかった。笑顔だがどこか辛そうな目。だけどその目の奥には覚悟がみえた。
(なんか、大変そうだな。辛そうだし。高校受験の失敗引きずってそう。)
あおいの立場、状況を考えながら神内は相手の気持ちになって話を聞いていた。
「まあ結局落ちちゃいましたけど…商業高校から頑張って大学行きたいんです。」
そんな力強いあおいの言葉を耳にした神内は問題集から目を離さずにはいられなかった
:11/05/24 00:21
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#23 [ひ ま じ ん]
「俺についてこい。」
神内が気がついた時にはこの言葉を言い終わっていた。目の前にはびっくりして神内をみつめるあおいがいた。
(ちょっと…言いすぎたか?)
口をもごもごしながらあおいは何かをいいかけた。
「えっ…あの…」
そのとき教室の扉が開き大谷が入ってきた。
(立花…何を言おうとしたんだ?)大谷と神内とあおいで軽く会話を交わしたが神内はあおいが何をいいかけたのか気になりあまり会話が頭に入ってこなかった。
ただあおいのクラスをあげてほしいと言ったのは覚えていた。
「じゃあ、失礼します。」
会話を終えた神内は軽く会釈をして教室を出ようとした。
「あの、神内先生!受験までよろしくお願いします!」
神内は自分の背中から元気のいいあおいの声を聞いた。
:11/05/24 00:21
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#24 [ひ ま じ ん]
振り返ると緊張しながらも笑顔のあおいがいた。神内は笑顔につられて自分も笑顔で返した。
「まかせとけよ。」
そう答えると神内は教室をあとにした。
喫煙所に向かいベンチに腰をかけてタバコに火をつける神内。この喫煙所は受付の隣にあり椅子と机がならべられたホールの様子もよく見える。生徒同士教えあったり食事したり休憩をとったりしていた。
神内はぼんやりとその光景を眺めていた。
:11/05/24 00:22
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#25 [ひ ま じ ん]
帰り道原付を運転しながら神内は今日した授業の反省をする…はずだった。なにも今日した授業はあおいがいた授業だけではない。だいたい1日で2〜3つ授業をする神内にとってすべて反省する点があるのに今日の神内はあおいのいた授業ばかり思い出していた。
それは決して好意を持ったと言うわけではないが、なんとなく気になる存在で先生としてほっとけなくどうにかしてやりたい生徒だった。
(俺の数学を全部叩き込んでやろう。商業高校だからなんだ。俺は精一杯立花を応援してやろう。
なんだか、あいつ
なんとなく俺と似てる気がするんだよな)
少し原付のスピードをあげた神内はぼんやりと明るい満月が暗い夜道を照らす中をかけぬけた。
:11/05/24 00:23
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#26 [ひ ま じ ん]
数学を頑張るようになったのは
数学を好きになっていったのは
苦手だからって理由だけじゃない
せんせいが優しく丁寧に
教えてくれるから
私も頑張ろうってなる
恋に落ちるのにそんなに
時間は必要なかった
「先生も階段でいこ!」
勇気をふりしぼって言った
言葉にせんせいは優しく
不器用に答えてくれた
「えぇー…しゃあねえなあ。」
一緒に階段を上ってるとき
何度その手を掴もうとしたか
好き、好きだ
これが好きってことだ
-せんせい-
立花あおいside
:11/05/24 00:24
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