あの日僕らは。
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#1 [ゆり] 11/07/19 19:31
#2 [ゆり]
私が彼と出会ったのは、もうとっくに桜が散って行き交う人たちの服が半そでになってたり、まだ長袖の人もいたりと、少し微妙な季節だった。
私は・・・七分丈という、これまたなんとも微妙な服だった。
「ねぇ、あんた久々におばあちゃんの家行って来なよ。」
家の掃除を終えてソファでアイスを食べていた母が突然発した言葉。
私はというと掃除の邪魔にならない程度にくつろぎながら母が食べていたアイスと違う、イチゴ味のアイスを食べていた。
「突然何!?」
ふいにかけられた言葉に思わず落としそうになったアイスの棒を慌てて加え直して母の顔を見た。
これがもしおばあちゃん家に頻繁に行っている人ならあんまり驚かなかったかもしれない。
でも私はかれこれ10年おばあちゃんに会っていないのだ。
別におばあちゃんが嫌いとか、母とおばあちゃんの仲が悪いとかそういうことではない。
ただ何となくタイミングがあわなく、おばあちゃんの家が遠かったので行かなかっただけだった。
「だって、あんたおばあちゃんにしばらく会ってないでしょ。行ってきなさいよ。」
まぁ・・・それはそうだけど。それにしても・・・
「いきなりすぎない?」
うん、絶対いきなりすぎる。でも母は突然思いがけないことを言うのは珍しくなかった。ただ今回は予想外のことだった。
「そう?まぁもう休みに入ったんだし、丁度いいでしょ?」
:11/07/19 19:40 :SH010 :W4AA8iTU
#3 [ゆり]
私たちの学校は夏休みじゃなく、初夏(しょか)休みという何とも変な休みが存在する。
そして昨日からその休みに入ったのだ。
まぁいっか・・・久しぶりだし
「いつから?」
母は食べ終わったアイスをゴミ箱に捨てながらこっちを見た
「今日に決まってんでしょ」
また急な・・・
思い立ったらすぐ行動!が母のモットー。
「ほら、早く準備しなさい!おばあちゃんには私が連絡しとくから」
ということで、私は今おばあちゃんの家の近くの駅にいる。急いで準備して来たわりには、我ながら可愛いワンピースを選んだと思う。
それにしても・・・・
「暑いー!」
何ここ!灼熱地獄だ…溶ける
いや、灼熱地獄はちょっと言いすぎたかもしれない。でも、少なくとも私の体の水を奪うには十分な暑さだった。
ペットボトルに入った水を飲み、母から手渡された少し汚い手書き地図を広げる。わかりにくけど・・・多分駅から500メートルぐらいだろう。
「よしっ、頑張ろう」
:11/07/19 20:27 :SH010 :W4AA8iTU
#4 [ゆり]
うん…確実に迷った。
何故迷ったか?そんなのこの地図のせいに決まってる!だってこの地図じゃ一直線のはずなのに…道はあちこちにあるのだから。
きっと母は昔を思い出して書いたのだろう。でもね?10年もあれば道は変わるんだよお母さん。
「私ここで死ぬんじゃない?」本当にこの暑さの中訳もわからない道で迷ってると不安になる。誰かに訪ねようとしても、周りは山だらけだし。いっそ木に話しかけてみようか、なんて危ない考えが出てくるのも無理はない。
:11/07/19 22:26 :SH010 :W4AA8iTU
#5 [ゆり]
・
「あーもう…誰か私を案内してよ」
なんて届かない声を発しながら空を見上げる。
木の隙間から見える空は思ったよりも綺麗で、少し見とれてしまった。
:11/07/20 07:56 :SH010 :VDShXZPw
#6 [ゆり]
・
ぶわっ
「わっ」
思いがけない風に、私の麦わら帽子は飛んで行ってしまった。
「嘘でしょー…」
お気に入りでもないけれど、この暑さの中帽子は必需品である。
仕方なく、私は帽子が飛んだ方向へ歩いた。
近くにあるかと思ったのに、森の入り口まで来てしまった。どうしよう…。何て表したらいいのか分からないほど、森は不思議な雰囲気だった。ご丁寧によそ者は入るななんて看板まである。
…でもここまで来たら見つけたいわよね。
「よし、ごめんなさい。お邪魔します」
:11/07/20 20:49 :SH010 :VDShXZPw
#7 [ゆり]
・
木々は全部背が高く、森の中にいると少し暑さがマシになる気がした。
ここは本当に誰も入らない森なのだろうか。でも、じゃあ誰があの看板を?
うーん・・・
まぁいいや、帽子帽子。
多分こっちだったはずなんだけどな。なんだか私が歩く方向へ行くにつれて、道が険しくなっている。
「本当にこの道あってんのかな〜」
そんな疑問を抱きつつも、どんどん森の奥へ歩いて行く。
なんか・・・・
「もう!帽子どこなのよ」
何でこんなに見つからない訳?もう夕方になってしまう。空を見ると若干薄暗くなっていた。
だめだ、こんなとこで夜になったらどこが帰り道かわからなく・・・・・
帰り道・・・・・・
どこだっけ・・・・
:11/07/21 17:39 :PC/0 :MiAD9YGU
#8 [我輩は匿名である]
・
やばい
やっぱり帽子なんてほっとけばよかったのかも。
今になってこの森へ入り込んだ事を後悔した。
帽子に夢中で気づかなかったけど…この森薄暗いと不気味かも…
カラスはカーカー鳴いてるし…どうしよう。
あーもう!
やばい…何か泣けてきた。
「うー…どうやったらこの森抜けれるのよー…」
ヘナヘナと座り込もうとする途中に、下が土の事を思いだし近くにあった大きい岩に腰かけた。
:11/08/02 17:43 :SH010 :3FU7TAZY
#9 [ゆり]
・
その時
「わっ」
またあの風が吹いた。
木はざわざわと揺れ、カラスは一斉に飛び去っていく。
『おい、どけや』
突然頭上から聞こえた声。
「え?」
見上げると…男の子が木から飛び降りるところだった。
…ん?飛び降り?
って………ぶつかる!!!
:11/08/02 18:07 :SH010 :3FU7TAZY
#10 [我輩は匿名である]
・
咄嗟にその岩から離れた私(正確には転げ落ちたというのだろうか)。
とほぼ同時に岩の上に着地したそいつ。
『お前、よけてなかったら死んどったな』
少し半わらいでこっちをみるそいつを
私は不覚にも綺麗だと思ってしまった。
:11/08/03 22:07 :SH010 :RJYEvrWU
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