「蒼」

　
長身に小顔、さらさらの黒髪短髪。
大きい目にさわやかな顔立ち。

いや、やっぱりこの人は紛れもなく矢口先輩だ。

でもいつもとなんか違うような…
　

　
いつもはさわやか～に「おはよう！」とか言ってていつも笑顔で、こんなイラついたような顔しない。

なんか嫌なことでもあったのかな…

「ねぇ」
　

　
「そいつに、もう一生メールしてこないでって、言っといてくんない？」

「え…なんで…」

「正直うざいんだよねー俺のファンとかさ。俺の何知ってるの、て感じ。どうせ見た目でしょ？」
　

　
何この人…

「矢口先輩…ですよね？」

「そうだけど？あれ。君も俺のファンだった？」

矢口先輩は少しにやっとしながらあたしに迫ってきた。
　

　
「えっ何、矢口先ぱ」

ガコッ！

先輩はあたしを囲むように机まで迫ってきた。

ちょっと…近いんですけど…///

「なに照れてんの」
　

　
「君は特別にしてあげるよ、だから今日の俺のこと誰にも言うなよ…？」

チュッ

「じゃあね」

ガラガラ……
　

　
え？
今、あたしキスされた？

矢口先輩とキス？

え！なんで？！
　

　
流れが掴めなかった。

特別ってなに？
ていうか、先輩ってあんな人だった？

あたしは口に手を当てながら走って教室まで戻った。
　

　
本当は、あそこで抵抗するべきなんだったんだ。
マンガとかドラマとかそうだし！

でもあたしは長年矢口先輩一筋だったから抵抗もなにもできなくて…

でもあんな人だったとはガッカリで…

ゆいこのことひどく言われて…
いきなりキス！？
　

　
いや、やっぱり幻滅だ。
矢口先輩はあんな人じゃない。

「ゆいこ！矢口先輩だけはやめな！！」

「え、なにいきなり」
　