エピソード・テン

今宵お送りするのは
10人の主人公が体験する物語。

1話完結オムニバス形式
ショートストーリー。

ハッピーエンドになるか…
バッドエンドになるか…

それは最後まで予測不能―

走った末
走行中の車を発見して手を振って合図をし車内に入れてもらった。

車内にいたのは四人組の男女。

事情を一から話すと
運転席の男性がこう言った―

「あれ、おかしいな…俺達これからその企画した廃墟探検に行く所だったんだけど…」

「え…」

―じゃあ、あの三人は一体誰だったんだ？

第一話・廃墟探検【完】

第二話【予知夢の男】

主人公:白田知也(31)

俺が予知夢を見るようになったのは
最近まで一緒にいた妻が交通事故で亡くなってからだ。

いきなりの朗報だった。

その日は雨で、俺はいつも通り
会社で事務仕事をしていた。

すると病院から電話との事で代わると
電話口の向こうで医者の男が力のない声で言った。

「白田典香さんのご主人の知也さんですね？これから〇〇病院に来ていただけますか？」

俺は胸騒ぎがして上司に事情を話して
早退し、すぐに病院に向かった。

受付で名前を言って
看護婦に誘導されて向かった先は集中治療室の扉の前。

そこにさっき電話で話したであろう
医者の男が立っていた。

医者は軽く一礼をしてから
のっけから俺にトドメをさすような一言を放つ。

「妻、典香さんは交通事故を起こし、ここに運ばれてきましたが…打ち所が悪く出血が激しかった為に先ほど息を引き取りました…」

そう医者から告げられた時、俺は
この世の終わりってこういう事をいうのかと肌で感じた。

その日は傘もささず
ずぶ濡れになりながら妻も誰もいない家に帰った。

鞄をソファーに投げ捨てて
部屋を見回す。

「この家ってこんなに広かったっけ…」

やがて涙が溢れ出てきて
小さなガキのように泣きじゃくった。

そろそろ子供も欲しいな、とか
もうすぐ結婚記念日だから旅行に行こう、とか話し合っていたのに…。

どちらも実現する事なく
妻はこの世からいなくなってしまった。

代わりに俺が死ねばよかったんだと
心の中で言い続けている内にソファーで寝てしまっていた。

その時に見た夢が全ての始まりだ。

夢の中で俺はどこかの
工場の前に呆然と立っている。

時間はわからないが
赤く染まった空の色を見る限り夕方だろう。

ふと工場の入り口を見ると
黒いフードを着て白いマスクをした男が出てきた。

顔は大きなマスクで隠れていてよく見えない。

男は周りを気にするように
コソコソとその場を後にしていった。

そこで何かの衝撃で突然目が覚めた。

幅の狭いソファーで寝てしまった為に
寝返りを打った拍子に床に転げ落ちてしまったようだ。

俺の目覚めは全身の痛みと共にあった。

腕時計を確認する。

AM8:54―

「…やべ遅刻！典香！なんで起こして…」

部屋の中は静まり返っている。

そこで昨日の事を思い出す。

そうだ、典香はもう―

ゆっくり立ち上がって
暗い表情で昨日から着たままだったスーツのポケットから携帯電話を取り出して会社に電話をした。

「…白田です。会社しばらく休ませてください…」

昨日、事情を伝えた上司は
俺の暗い声に何かを察したのか何も聞かずに休みを了承してくれた。

通話を切って携帯電話をソファーに投げ
テーブルの上に置いてあるリモコンを手にしてテレビをつける。

俺の気分とは裏腹にテレビは、楽しそうな占いコーナーやスタジオでの生トークが繰り広げられている。

俺はそんな光景を見るなり小さく舌打ちをしてから、リモコンの電源ボタンを押してテレビを消した。

再びシーンとなる室内…

昨日の朝まではいた明るく元気な妻は、今はもういない。

典子が事故に遭うとわかっていたら、昨日は無理やりにでも会社を休んで、典子を家から一歩も出さなかった。

全ては俺の責任だ。

昨日俺が会社に行かなければ…

典香のそばにずっと一緒にいれば…こんな事にはならなかっただろう…。

典香…いつものようにおかえりって言ってくれよ…。

いつものように優しい笑顔を見せてくれよ…。

…馬鹿だ俺は。

典香はもうこの世にはいないんだ。