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#1 [◆After.ISPo] 11/08/31 15:25
 私が泣きたいとき、空は私の代わりに泣いていた。
 それは私の涙を隠すため、空が私のために流す涙だ。

 そして今日の空は、突然降り始めた雨で灰色に染まっていた。
 私の隣を歩く彼が言う。

「何か、悲しいことでもあった?」

 心配そうに言う彼は、私の情緒が雨を降らせる事を知っていた。
 私は首を左右に振り、否定を示す。

「じゃあ、何で雨は降っているの?」

 怪訝そうに問い掛けてくる彼に、私は答える。

「これは、悲しいから降ってる雨ではないわ」

 首を傾げる彼を横目に、私は歩きながら話を続けた。

「この雨は、貴方のせいで降る雨」

「僕のせい?」

 彼の問い掛けに応えるように、私は立ち止まる。
 私の行動に受動して立ち止まった彼を、私は見つめる。

「そう。この雨は貴方が私を喜ばせたから降った涙なの」

 息を継ぐ。
 驚きに目を丸くする彼に、私は微笑みかけて言葉を紡ぐ。


「これは、貴方と両思いになれて嬉しいと思った、私の嬉し涙よ」

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