つなぎ目

こんにちは。

マイペースですが、
更新していきたいと思います。

暇つぶしに見て頂けたら嬉しいです。

アンカー

>>2

「おまえ、今からそんな無関心じゃ、社会に出て苦労するぞ。
もっと色んなことに目を向けていかないと」

随分と上からの物言い。

カチンときた。

『それって、そんな大事なことですか』

私の呟きに、担任が顔を上げる。

え？

といったように、口がポカンと開いている。

これぞ、マヌケ面。

『真剣に悩んでいる私の今の時間は無駄ですか』

一度口を開いたら止まらなかった。

『そんなに早く決めなきゃダメなんですか？
早く決めることが、そんなに偉いんですか』

矛盾してる。

先日まで何も考えていなかった自分。

なんでこんなに必死になってんの。

荒くなった呼吸に肩を揺らしながら担任を見据える。

ふと、視線を感じて顔を上げた。

ほぼ全員がこちらを凝視している職員室の中。

よく見る顔が一つ。

同じクラスの男子がいた。

私と目が合っていることに気がつくと、
彼は口の端に薄い笑みを浮かべる。

遠くからでもその表情の変化ははっきりと分かった。

自分で顔の熱が上がるのが分かる。

顔から火が出るかと思った。

『―――失礼します！』

いたたまれなくなって、
職員室を飛び出す。

あたし、何やってんの。

担任に喧嘩売るなんて。

しかもこんな時期に。

息を切らして走る。

絶対、今頃笑ってる。

こんなの、立派な逆ギレじゃないか。

走って校舎を出た後も、
全身の熱は下がらなかった。

＊＊＊＊

地元の駅に着き、
街路樹をトボトボと歩く。

いつもは夕陽を浴びてオレンジ色にキラキラと光って見えるイチョウ並木も、

心なしかくすんで見える。

きっと今、私の目には濁ったフィルターがかかっていて、

どんなキレイなものも汚く見えてしまう。

体の中に溜まった息を吐き出す。

あー……

考えたくないなぁ……。

「まーた、ため息？」

突然聞こえた声に驚いて、
振り返る。

「ため息ついたら幸せ逃げるよ？」

そう言って、パン屋さんが笑う。

気がつかないうちに、
パン屋さんの前まで歩いてきていた。