Ｙ。

あたし、蘭。

あたしの夢はモデル。
まぁそんな夢は
見るだけのものだから、
本気で狙ってる訳じゃ
ないんだ。

ｽｯﾋﾟﾝは不細工。
でも頑張って頑張って
変身できる技を
身に付けた。

あたしはユウの
冷たい目にビクッと
体を強ばらせた。

｢……ごめん。｣

そう、付き合ってれば
遅かれ早かれ
誰しもが経験する
ケンカ。

こんな大事に
なるなんて思っても
みなかったから…

｢はあ、もうごめんね。
どうすればいい？｣

『じゃけん、別れる。』

些細なことなのに
ユウは『別れる』
の一点張り。

別れたくないよ。
やだ、どうしよう。

どうしたら…
許してくれる？

「もう、行かんよ。
ユウが怒ると思ったけん
言わんかった。」

正直に話した。

『もうええわ。』

ユウはふーっと
煙草の煙を吐き出した。

あたしは黙って
それを見ていた。

「ほんまにごめんね。
別れたくない！
あたしユウしか見えてない」

『………はあ。』

そう言うと我慢していた
涙が頬を伝った。

だめだ。泣くな！

あたしは唇に力を入れ
少し上を向いて
涙を我慢した。

『…こっち来いや。』

ユウの突然の言葉に
動くことができない。

「……え？」

『蘭。こっち来い。』

涙で視界が霞む。

「…うん。」

ああ、見えんって。
涙が邪魔でユウの顔が
見えんよ。

あたしはゆっくり
ユウに近づいた。

『ふっ。くそ不細工。』

ユウは笑いながら
髪を撫でた。

「うるさい……」

少し視界を横に
ずらしてつぶやく。

『あ？』

再び不機嫌そうな
ユウの声にあたしは
ユウの腕を掴んで
慌てて訂正した。

「ごめん…。」

『もうええよ。』

さっきとは違う
優しいユウの声と
表情にあたしは
抱きついて泣いた。

「ふ……ﾋｯｸ…」

『もうすんなよ？』

「うんっ…ｸﾞｽｯ……」

『不細工。
……仲直りな？』

「ユウ～……好きぃ。」

『俺も。』

そう言うとユウは
あたしを抱きしめて
髪を撫でた。

ほんまによかった。
やっぱりユウが好き。
別れるなんか
絶対にいやだ。