心霊夜話
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#1 [怪男] 11/11/16 23:13
このお話は全てフィクションです…
#209 [怪男]
突き飛ばされた美緒は体勢を崩し、ベッドの上に倒れる。
「ちょっと勇紀、なに…」
「姉ちゃんも人の事言えんのかよ!あんな店で働いて…!」
「え…?」
勇紀の言葉を聞いて、美緒の表情が段々と青ざめていく。
「は…は?意味わからないんだけど…。コンビニで働くのが犯罪なの?」
強気でそう返すも、動揺は隠せなかった。
:12/02/03 17:33 :W62P :☆☆☆
#210 [怪男]
勇紀は拳をぶるぶる震わせながらベッドに座り込む美緒を少し見つめた後、背を向けてドアの方に向かい、ドアを開けると再び美緒の方を振り返って一言つぶやいた。
「……母さんにも父さんにも全部言ってやる……」
そう言う勇紀の表情は、美緒も今まで見た事のない、まるで悪魔のような形相だった。
部屋から出ると、ドアを大きくバタンと閉めて自分の部屋へと入っていく勇紀。
同時に美緒の肩の力がスッと抜け、そのまま仰向けになり目をつむった。
:12/02/03 17:35 :W62P :☆☆☆
#211 [怪男]
綺麗な朝日が部屋の中に差し込む―
ゆっくりと目を開けて、体を起こす。
自分の身体を見ると、昨日と同じ服装。
あれからそのまま眠りについたんだとわかった。
まだ少し眠たい目をこすりながらベッドの傍の目覚まし時計を確認する。
午前7時11分…
時計を見た後、昨日から着ていた服を脱ぎ、別の服に着替えた。
部屋を出て階段へ向かう際、勇紀の部屋の前で足を止め、ドアを少し見つめて昨日の夜の事を思い出す。
:12/02/03 17:36 :W62P :☆☆☆
#212 [怪男]
あの勇紀の悪魔のような表情は、衝撃的だった。
普段からおとなしく普通の高校に通う普通の高校生。
しかし、そんな弟が覚醒剤に興味を持ち、手を出す…
ただそれだけで今まで平凡だった人生…最悪の場合、人格までもが一瞬にしてひっくり変わってしまう。
美緒は、勇紀の気持ちも知らずに昨夜あんな風に言ってしまった事をものすごく後悔した。
:12/02/03 17:38 :W62P :☆☆☆
#213 [怪男]
「(ごめんね…勇紀)」
そう心の中で一言謝ってから階段を下りリビングへと向かった。
キッチンからは味噌汁の匂いと共に、包丁で材料を切る“トントン”という音が響く。
昨夜の母の豹変ぶりには衝撃を受けたが、おそらく日頃の疲れとストレスが溜まっていて大声を出す事により、それらを発散したかっただけなのだろうと思う事にして、キッチンにいる母・渓子の元へ。
「お母さん…おはよ」
野菜を切っている母に声をかけると、すぐに美緒の方を見て
「おはよう。今日は早いんだね」
笑顔でそう返した。
:12/02/05 13:03 :W62P :☆☆☆
#214 [怪男]
それはいつもの母であり、美緒は少し拍子抜けすると同時にホッと一安心した。
「うん、なんか目覚めちゃって」
「そう。ご飯もうすぐでできるから顔洗ってきたら?」
「そうする」
昨日のアレは夢だったんじゃないかと思うくらい母の表情はいつもと同じで明るかった。
:12/02/05 13:04 :W62P :☆☆☆
#215 [怪男]
冷たい水で顔を洗い、昨日からしたままだった化粧もサッパリ落とした所で、鏡に映った自分の顔を見つめながら昨日の勇紀の言葉を思い出す。
“あんな店で”…
この言葉にひっかかっていた。
昨日、携帯電話の電源はずっと切られたままであった事はわかっている。
だが、なぜだか胸騒ぎがした。
それは、自分はあまり携帯電話の電源を切らないでいる為、バッテリーが無くならない限り故意に自分から電源を切る事はないとわかっていたからである。
昨夜の勇紀の“全部言ってやる”という言葉の真意は…
もしかしたら…と焦っていると、洗面所に寝間着姿の父・幸宏が入ってきた。
:12/02/05 13:06 :W62P :☆☆☆
#216 [怪男]
「きゃっ!」
いきなり鏡に映った背後の人影に驚き、小さな悲鳴をあげて振り返る。
「うわっ、びっくりした!」
「なんだ…お父さんか…」
少し気まずい空気と沈黙が流れた後、美緒は父の横を通り過ぎ、そそくさとリビングへ向かった。
:12/02/05 13:08 :W62P :☆☆☆
#217 [怪男]
キッチンの食卓には、いつもの朝食が並んでいた。
炊きたての白いご飯、わかめと豆腐の味噌汁、目玉焼き…そして珍しくサラダ。
「今日はアルバイト何時から?」
ご飯を茶碗に盛りながら母が聞く。
「夕方の5時からだよ」
「そう。じゃあお願いしたい事あるんだけどいい?」
「いいけど…なに?」
思わずゴクリと息をのむ。
:12/02/05 13:09 :W62P :☆☆☆
#218 [怪男]
「今日ね、勇紀を学校休ませてお母さん一人でその例の子に会いに学校に行こうと思ってるの。だから、お母さんが帰ってくるまででいいから家で勇紀の事見張っててくれる?」
「え……」
「ほら、放っておくとあの子、例のもの買いに行くかもしれないでしょ?まだお母さんに黙って隠し持ってる可能性もあるし。ね?お願い」
手を合わせてお願いする母。
姉としては当然引き受けるべきなのだろうが、弟の勇紀は自分の秘密を知っているかもしれないと思うと、少し了承しずらい点もあった。
だが断ると、昨夜のように豹変しかねないと思い
「わかったよ。私に任せて」
と愛想よく返事し、約束をしてしまった。
:12/02/05 13:11 :W62P :☆☆☆
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