ガムと飴と炭酸と…
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#1 [ローカル線] 11/12/25 23:24
この世には、このような旨いものが数多く存在する。
俺が思うに、この3つは季節問わずに旨い。
何かに集中したい時はガム、喉痛い時は飴、スカッとしたい時は炭酸。
このように使い分けることが出来る。

仕事中は、ガムも飴もダメ。炭酸なら、休憩の時はOK。
俺には耐えられない。
汚い話、ガムは朝一噛んだものは次の休憩まで噛み続けることが出来る。
噛むというか、口をもごもごさせたらダメだから、飴のように含んだまま。


この3つは、今までの俺を語る上で欠かせない。

まぁ、そんなことはどうでもいいけど…

#26 [ローカル線]
俺はシーフード、樋口が普通のカップヌードル、吉井さんは焼きそば。
オニギリは適当に選んだ。

俺は1分を超えたらフタを開ける主義だ。3分なんて待ってたらノビノビになる気がして。

「吉岡君、もう食うのか?早くね?」

古い小型の冷蔵庫から緑茶を取り出した吉井さんが問いかけてきた。

「俺、いつもこん位の時に食いますよ。伸びちゃうから。吉井さん、頂きます」

この時間のラーメンって何でこんなに旨いんだろう。
夜中、腹減った時に食うラーメンはまた格別だ。
仕事場でこんな時間に食うのは初めてだから変に不思議な感じがするけど。

「じゃ、俺の焼きそばもそろそろいいかな?このお湯捨てる時の匂いが何気好きなんだよね♪」

⏰:11/12/26 17:07 📱:F02B 🆔:JbwTaILM


#27 [ローカル線]
吉井さんはルンルンでお湯を捨てた。

ソースをふりかけ、程良くかき混ぜてズルズル食い始めた。

「……固っ!」

「そりゃ、焼きそばとラーメンは違いますよ。ラーメンはスープあるから結果柔らかくなっちゃうけど、焼きそばは…」

俺の言葉にうんうん頷き、しまったという表情で飲み込んだ吉井さん。

「…うん。学んだよ…暫く置いといたら旨くなるかな?」

「や…変に伸びちゃって激マズっすよ」

「うわ、最悪だ。樋口君は食べないの?」

椅子に座ってちっちゃくなってる樋口。
俺と吉井さんに?が浮かぶ。

「すんません…俺、猫舌だから…」

⏰:11/12/26 17:16 📱:F02B 🆔:JbwTaILM


#28 [ローカル線]
「はぁ?」
腐れ縁と言えど、初耳すぎて俺は笑ってしまった。

「樋口君、猫舌なの?うわ、何可愛いこと言ってんの」
吉井さんも続けて笑う。

「樋口君、見た目とのギャップありすぎるぞ」

「すんません…もうちょっと置いてていいっすか?」

「それは構わないけど…樋口君、意外だね。ガテン系って感じなのに」

益々小さくなる樋口。

「こいつ、見た目ガテン系でも名前アオイちゃんっすから」

「ちゃん付けんな」

「あ〜、やっぱりアオイって読むんだな。『そう』とか読むかと思ってた」

⏰:11/12/26 17:23 📱:F02B 🆔:JbwTaILM


#29 [ローカル線]
「親に言ってくださいよ。せめて『そう』が良かった」

「ま、いんじゃない?吉岡君は下の名前『ケイ』だよね?」

「そうっすよ。一文字だけ」

「アオイとケイな。明日からそうやって呼ぼうか」

吉井さんは楽しげに笑った。

「ちなみに俺の下の名前は『けんさく』だ。健康を作るって書いて『健作』」

「なんか格好いいっすね」

「そうかな?吉井健作なんて、爺さんって感じじゃね?」

「そうでもないっすよ」

何でこんな時間に野郎同士で名前について熱く語っているのか分かんないけど、初めて見る吉井さんって感じがして特別な意味を持ってるのかもしれない…と感じた。

⏰:11/12/26 17:35 📱:F02B 🆔:JbwTaILM


#30 [ローカル線]
話が一段落ついて、お開き〜って感じのムードが漂ったが、

「片野ちゃん、可愛いよな」

吉井さんの一言で場の雰囲気がまた変わった。

「片野ちゃんって何歳なんだろ?まだ若いよな」

樋口の目が輝いた。

「可愛いっすよね。19歳らしいっすよ」

「うわ、10代かよ。俺より10個も下だ」

「何?吉井さん、狙ってるんですか?」

俺が聞くと、吉井さんはまんざらでもない的な顔で、

「あ〜、そういう訳じゃねーよ。俺の元嫁に似ててさ」

「え?」

⏰:11/12/26 17:43 📱:F02B 🆔:JbwTaILM


#31 [ローカル線]
俺と樋口の声が揃った。

「あ、俺バツイチだよ。子供はいないけど」
「…はぁ」

「なんてゆーか、ツンツンした雰囲気でさ。俺の2つ年下で。真面目と面白さ兼ね備えてて。ああいう美人さんだった。雰囲気が似てるっていうのかな?毎日いいモン食わしてもらってた。まぁ、稼ぎは俺だけど」

「そうなんっすか」

「栄養士の資格あるから、栄養面気にかけてくれて…だからインスタントなんか食ったことなかったな」

だから焼きそばでしどろもどろしたのか…何かいろいろ繋がってきた。

「なんで離婚したんすか?」

「樋口君、ストレートに聞くね。あ、アオイか」

「あ、すんません。ってか樋口の方がいいっす」

⏰:11/12/26 17:52 📱:F02B 🆔:JbwTaILM


#32 [ローカル線]
「やっぱりアオイは嫌なんだ。分かった分かった」

笑って言う吉井さんからは、どこか寂しそうな雰囲気を感じた。

「ま、簡単に言ったら浮気だよね。あと、金銭的に揉めちゃってさ」

「浮気されたんすか?」

問いかける俺の目を見て、すぐ視線を下に落とした。

「うん…今日みたいな残業が続いちゃった時期があってね。寂しいって、言葉にはしなかったけど、元嫁が元気なくなってきてね。仕事変えろとは言われたけど、俺ここの担当者っつーか責任者だからさ、しかも今の世の中不景気じゃん?今更仕事変えようっつっても何か…な。無理、ごめんって謝りまくったよ。お前食わせて行かなきゃ!でお互い我慢しまくってね」

「…はぁ」

気が付けば聞き入ってる俺と樋口。

⏰:11/12/26 18:02 📱:F02B 🆔:JbwTaILM


#33 [ローカル線]
早く帰りたい気持ちがある反面、何故か放っておけない気がして。

「金銭的は借金的なものかな?俺に内緒で嫁がいろいろ勝手に動いてて…それ気付かなかったんだけど、ポストに変な請求書がいくつも来ててさ。全部俺宛てで、俺見覚えねー…みたいな。問い詰めても嘘ばっか言うから1つ1つ確認していったらやっぱり嫁が何かしらしてて。終いには俺が悪者で、向こうの母親にまでとやかく言われる始末…お前の娘の何を信じて俺を責めてんだって思ったね…って、こんな話退屈だよな」

「いや、何か聞きたくなりますよ」

素直に俺がそう言うと、吉井さんは寂しく笑った。

「今でも何かを俺に隠してると思うよ。そんなこんなで上手くいく訳もなくて、勝手に嘘ついて勝手に男作って出て行ったね。借金は全部俺に残して」


「……………」

⏰:11/12/26 18:12 📱:F02B 🆔:JbwTaILM


#34 [ローカル線]
「うん…で、今の俺がいるよ♪って感じかな」

「じゃあ、逆に片野さん見るのって辛いんじゃないですか?」

「それはないよ。辛いとかじゃなくて、何か思い出すんだよなー…俺、バカ一途だからさ、どんだけ最低なことされてもそいつのこと好きな気持ち残ったままなんだよな。な?ホント馬鹿だろ?思いたくないけど、俺にも悪い所があったんだ!って自分を責める始末。実際、尽くしてくれたのは事実だから」

どんだけ優しい人なんだ…って思った。
逆に優しすぎて、自分を苦しめるタイプの人なんだろう。
スパッと切れたら楽だけど、切るに切れないって感じなんだと俺の心にガツンときた。

「もう結婚は考えないんですか?」

樋口が素っ頓狂な質問を繰り広げる。

⏰:11/12/26 18:21 📱:F02B 🆔:JbwTaILM


#35 [ローカル線]
「うん。考えられないね。女の良さとその逆を知っちゃったし、好きだし…俺みたいな男、気持ち悪ぃよな。自分が一番嫌になるよ、ホント。だから俺は一生独りが合ってると思うわ」

立ち上がった吉井さんは、俺と樋口のラーメンのカップを片付けてくれた。
猫舌男も、さすがに食い終わっていた。

「あ、すみません」

慌てて立ち上がった俺と樋口。

「いいよ。2人も早く帰んないとな。こんな話聞かせる予定なかったのに、ごめんな」

「いや、何か良かったっす」

「ホントかよケイ?」

「マジっすよ」

「はは。2人はこんな俺みたいな人生送んなよ。可愛いだけで選んだりしたらダメだ!な、アオイ?…あ、樋口」

⏰:11/12/26 18:29 📱:F02B 🆔:JbwTaILM


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