おやすみ、ワンダーランド
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#1 [我輩は匿名である] 12/01/06 01:22
醜い顔と無造作に散らばった真っ黒な髪。痩せ細った体に可愛さの欠片もない洋服。
鏡の中の私はいつもそう、今にも泣き出しそうな表情。
整った顔にお洒落に巻かれた蜂蜜色の髪。愛らしい笑顔によく似合うふわふわのワンピース。
私が見たのは、幸せそうな笑みを浮かべた姉の横顔。
誰もが姉の後ろにいる私を「出来損ない」と笑っていた
#2 [我輩は匿名である]
「あなたはどうしてそんなことも出来ないの!?」
キン、と部屋に響いた声と共に、私の頬はじわじわと赤く染まっていく
それが母にぶたれたと気付くのにそう時間は必要なくて、冷えた手のひらで熱くなった自分の頬をそっと包んだ
「彩は簡単にこなしたのに…どうして姉妹でこんな差が生まれてしまったのかしら」
大丈夫、お母さんは少し苛立っているだけ。
私はいつも自分にそう言い聞かせ、悲しみや痛みを和らげる。この言葉は鎮痛剤と同じ役割を果たし、私はその言葉を毎日服用した。
お母さんの痛みを私は今分け合っているのよ、これは私への期待なのよ、って。
:12/01/06 01:34 :F02B :GSMkANeM
#3 [我輩は匿名である]
ごめんなさいと謝ると、母の苛立ちをさらに煽ることになる。だから私は決して謝りはしない。
何も言わず、母の気が済むまで待てばいい。どれだけ痛くても、怖くても。これが母の愛情表現なのだから。
ただちょっと、私の姉とは違いがあるだけで。
「ただいまー」
リビングのドアが開いたと同時に、軽快で明るい声色がそっと舞い込む。
その瞬間、母は私を掴んでいた手を離し
「彩!おかえりなさい、今日も疲れたでしょう」
と微笑みを浮かべながら声の方へと足を向けた
:12/01/06 01:40 :F02B :GSMkANeM
#4 [我輩は匿名である]
床に頬を引っ付けると、ひんやりして気持ち良い。
反転した世界で笑い合う二人は、私と強い繋がりを持った唯一無二の存在。
「うん、しかもお腹がペコペコなの。」
「冷蔵庫にプリンが入っているわ、食べていいわよ」
「やったあ!」
腹を痛めて私を産んでくれたお母さんと、血を分け合った1つ年上の姉、彩。
私の大事な家族。
かけがえのない、私の生きる意味。
:12/01/06 01:47 :F02B :GSMkANeM
#5 [我輩は匿名である]
「…あなた、まだそんな所にいたの?みっともないから早く部屋に戻ってよ」
横たわったままの私に気付いた母は、目の色だけでなく声のトーンも変えて私を見下ろした。
彩はソファーに座りテレビを観ながらプリンを頬張っている。
ああ、急がなきゃ。
私は素早く起きあがると、一目散に二階にある私の部屋に飛び込んだ。
体を動かす度にさっきの傷が痛んだけれど、そんなの気にしていられない
:12/01/06 01:52 :F02B :GSMkANeM
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