『リカ』
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#1 [アカシ] 12/03/12 12:37
日記を書くように言われました。
しかし、ここに居ては何も起きないので、書くネタがありません。
そのことを相談すると、今までのことを書きなさいと言われたので、そうすることにしました。
この日記を私に渡した方は、これを唯一の親友だと思い、なんでも正直に書きなさいと言いました。
しかし、この日記は私の物ではなく、あなたの物です。私に親友など要りません。
でも心配しなくても大丈夫ですよ。私は嘘を吐きませんから。嘘と言うものは誰かの中で生きたいと願う人が使うものですから。
#6 [アカシ]
私は高校時代、電車の中で初めて痴漢にあいました。確かに、不快な気持ちになりました。しかし、抵抗することがすごく無駄なように思えたのと同時に、耳元でガムをクチャクチャさせながら、臭い息をかけるおじさんのために、私が傷付くということが、我慢できなかったのです。
:12/03/13 06:58 :K006 :vA9Qcg4Q
#7 [アカシ]
私は自分の『才能』に気が付きました。
おじさんに前の割れ目を触られているとき、私は目の前の電車の扉を見ていました。
私は、自分も扉の一部だと思うようにしました。私は今、ただの電車の扉なのだと。そうすることで、私は自分から感情を消すのが上手なんだと知りました。これが私の『才能』なのです。
:12/03/13 07:05 :K006 :vA9Qcg4Q
#8 [アカシ]
それから、私は、事ある毎に自分を物に変えました。映画館でつまらない映画を見ているときは、椅子になり、面白くない男に抱かれているときは、ベッドのシーツになりました。
:12/03/19 07:10 :K006 :QOZXd10k
#9 [アカシ]
私のこのような性(さが)は、恐らく幼少時代に自然と身に付けたものだと思います。私は、義父から虐待を受けていました。
母は夜になると仕事に出かけるので、私は義父とふたりきりでいることが多かったのです。義父は、私のことを「ママ」と呼び、お酒を注いだりさせられました。
:12/03/19 07:18 :K006 :QOZXd10k
#10 [アカシ]
「ママは良い女だ」
義父は私のことを、よくそう言いました。なぜ私はママなのか、なぜ良い女なのか分かりませんでしたけど、悪い気にはなりませんでした。
私は義父の言うことに合わせて、いつも笑顔でいました。
:12/03/19 07:22 :K006 :QOZXd10k
#11 [アカシ]
ある日の晩、私は、いつものようにお酒の用意をして、義父の帰りを待っていました。義父はいつもより遅い時間に帰ってきました。義父はかなり泥酔しているみたいでした。そして、何を言っているのかよく分からなかったのですが、獣のようなうなり声を出していました。目も、まるで死んでいるみたいで、私は本能的に、用意していたお酒を隠さなければと思いました。勿論、恐怖もありました。
:12/03/19 07:27 :K006 :QOZXd10k
#12 [アカシ]
日本酒の入った一升瓶を抱え、台所に向かったところ、義父に呼び止められました。私は、殺されると思いました。
義父は私の行動に腹を立て、喚きながら私に迫ってきました。
私は、暴力を受けるのは初めてでした。しかし、前にも同じようなことをされた、ような、気がしました。
:12/03/19 07:35 :K006 :QOZXd10k
#13 [アカシ]
私がもっと幼かったとき、実の父から、母が暴力を受けていたのを思い出しました。その時母は、私の目をじっと見ていました。目から涙がこぼれていたと思います。私は、母の代わりになりたいと思ったのだと、思います。
:12/03/19 07:39 :K006 :QOZXd10k
#14 [アカシ]
私は、母が暴力を受ける度に、自分がそれを受けている気持ちになっていました。母にじっと見詰めながら、私は頭の中で母になっていたのです。
奇妙なことですが、そうすることで私は、母を守っている気になっていたのです。
:12/03/19 07:43 :K006 :QOZXd10k
#15 [アカシ]
私は義父に殴られ、意識が遠退いて行きました。このときに見たものをあまりはっきりと覚えていないのは、頭を殴られ過ぎたからだと思います。しかし、唯一はっきりと覚えているのが、私が必死になって、日本酒の入った一升瓶を守ったということです。
私は、誰かに助けてもらうことを諦め、一升瓶を自分であるかのように守ったのです。
:12/03/19 07:52 :K006 :QOZXd10k
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