「あーぁ、今日も月見えてないじゃん。明日は見えるかなー…見えるといいなぁ。」

降り落ちる雨など気にせず空を見上げる少女に、男が後ろから傘を差し出し雨から少女を守る。

「ねぇ、明日は月が見えると思う？」

男に目を向ける事もなく、少女は真っ直ぐと暗い空を見つめ続ける。

「…残念ですが、明日も雨だそうですよ。」

「そっか…」

寂しげな返事をすると、少女は視線を自分の手へ向けた。

「ってそれより早く帰ってお風呂入らなきゃ。ね？」

振り返って男に笑いかけた少女の手は赤黒い血に汚れていた。
　　

　
テレビのドラマやアニメ、漫画にしても主人公ってどうしていつも正義ある者なんだろう。

善と悪があるなら、私は悪だ。

悪は決して善には勝てない。

でも、私は負ける訳にはいかない。

誰に何を言われようと私は

あの満月に誓った約束を成し遂げる。
　

「おはようございます。」

その声に瞼をゆっくり開ける。

「おはよー…今日も雨なんだね。」

「えぇ、雨音が」

失礼しました。

「えぇ、雨音が先ほどから強くなりましたから今日一日雨でしょうね。」

身体を起こすと男がそっと手を差しのべる。
その手をとり、ベットから下りると肌寒さに身震いする。

「桔梗、あったかいの飲みたい。」

「かしこまりました。お着替えしてから降りて来てくださいね。」

桔梗と呼ばれた男は頭を下げ部屋を後にする。