私、須藤 優子(17)。

今まで、普通に。

ごく普通に、女の子として生きてきた。

それが……

男子校に入学!!?

わっけ分かんない！

ふざけるなー！

私の父は自営業をしていて、割と裕福な暮らしをしてきた。

中学までを公立校に通い、高校受験にも成功、第一志望に見事合格し、我ながら楽しく、成功した人生を送ってきたと思っている。

しかし、高校2年生になってすぐ、父の会社が倒産した。

裕福だった暮らしとは真逆の、借金まみれの状態になり、私はあり得ないくらいに学費が安いという、全寮制の学校に通うことになったのだ。

ｶﾞﾗｶﾞﾗｶﾞﾗ…

身の周りの物をできるだけ詰め込み、ﾊﾟﾝﾊﾟﾝになったﾄﾗﾝｸを必死に引っ張っていく。

目の前に大きな門が見えてきて、私は荷物から手を離し、立ち止まる。

(ここが、私の通う新しい学校…)

学費が破格に安いとあって、やはり校舎が汚いことは否めない。

ちょっとしたお化け屋敷のような外観に、少し身震いをするが、どうしようもない。

ここまできたら、と覚悟を決めて、中に入っていく。

(職員室…どこだろ)

どこにいったら良いのか分からず、立ち呆けていると、ｶﾞﾊﾞｯと、急に後ろから衝撃が走る。

「女の匂いだ。やべ」

耳元で低めの声が囁き、ｽﾝｽﾝと鼻が鳴る。

弱い耳に刺激を感じて、体がﾋﾟｸﾝと跳ねる。

「お、感じちゃった？」

おどけたような声を出しながら、この不審者は私の耳たぶを口に含む。

「〜〜っやめてください！」

必死に振り払い、顔を覚えてやる、なんて思って振り向く。

―――…

超、イケメン。

180cmほどの身長に、軽くワックスで整えられた、漆黒の髪。

同じ色をした切れ長の目は、今にも吸い込まれそう。

ｽｯと通った鼻筋に、男らしい眉。

それに、薄くて形の良い、色っぽい唇。

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