香り
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#1 [我輩は匿名である] 12/12/22 00:39
あの日あの時
一目見た時から
きっと恋に落ちてたんだ。

君は誰を想って
誰のために
生きてる?

#5 [我輩は匿名である]
「‥なに?」
吉祥寺という女が俺たちの視線に気付いて、無表情のまま振り向く。
中庭にある小さなベンチに腰掛け、口にはタバコ。って学校でタバコはだめだろ、思わずつっこみたくなった。

それよりも金髪に似合う色白の肌に長い手足。人工的に染められたとしてもそれは異国の人間に見えた。

⏰:12/12/22 00:49 📱:iPhone 🆔:☆☆☆


#6 [我輩は匿名である]
「ふーん‥おい、お前先帰ってろ。明日相手してやるから」
俺は横にいる女にそう言うと女はさも不満そうな顔をしたが、明日な。と再び呟くと微笑んで去って行った。

吉祥寺は再び俺に背を向けた。

思えばこの時からこの女ー吉祥寺麗子に
惹かれてた。

⏰:12/12/22 00:52 📱:iPhone 🆔:☆☆☆


#7 [我輩は匿名である]
俺は吉祥寺の隣に座った。
なおも吉祥寺は表情を変えない。
まるで俺がいないかのような表情。

「あの子ー」
吉祥寺は煙を吐きながら呟く。
メンソールの香りがスッと入ってくる。

「あんたのこと好きなんじゃない」
視線は依然として前。
吉祥寺がそんなことを言う。

「かもなぁ‥」
これが俺たちの初めての会話。
吉祥寺麗子との出逢い。

⏰:12/12/22 00:54 📱:iPhone 🆔:☆☆☆


#8 [我輩は匿名である]
「吉祥寺‥麗子さんはさ、いつもここにいるのか?」
思わずかしこまる。
俺が女にこんな態度とるのは初めてのこと。

「タバコ。」
「え?」
「タバコ吸えるから。」

吉祥寺は短く答える。

「あぁ、まぁばれないか。タバコは身体に悪いぞ」
なんてつまらない返答だろう。
ありきたりな返し、初対面なのに説教じみたことを口にしたと思う。

「別に。身体なんかどうでもいい、」
「は?」
「だって、人間は死ぬために生きてるんだよ」

ー死ぬために。

⏰:12/12/22 00:58 📱:iPhone 🆔:☆☆☆


#9 [我輩は匿名である]
吉祥寺は俺の方に顔だけ向けて、ふっと笑った。

怖いくらい綺麗な顔。
怖いくらい笑ってない目。

「もういいかな。君といるとタバコ吸いづらいんだけど」

「あ?気にしないですえよ。」

「あっそ。」

吉祥寺はタバコを口にくわえ
ジッポで火をつけた。

再びメンソールの香りがする。

⏰:12/12/22 01:00 📱:iPhone 🆔:☆☆☆


#10 [我輩は匿名である]
「麗子!」

「は?」

「麗子って呼んでもいいか?」

「お好きにどうぞ。」

吉祥寺‥麗子は興味なさそうに答えた。

⏰:12/12/22 01:02 📱:iPhone 🆔:☆☆☆


#11 [我輩は匿名である]
俺はこの日からこの無表情な女ー吉祥寺麗子のことが無性に気になり出した。


携帯を取り出し1番仲の良い男友達ー春日優希を呼び出す。

プルルル....
『もっしー??どしたのー??』
「相変わらずでんのはええな。ちょっと聞きたいことあんだけどさ。」
『はいはいー?なになにー?』
「吉祥寺のことなんだけどー」

改めて名前を口に出すと恥ずかしい。
俺が一人の女の名前をあろうことか誰かに聞くなんて。

『あー。吉祥寺さんね。んっとねー』

優希は台本があるかのように話し出す。

吉祥寺は両親を幼い頃に亡くしていて、今は残した遺産と奨学金で高校に通っていること。
そして彼女のIQは余裕でハーバード大学を卒業できるレベルで、まさに天才ってやつ。
唯一の友人は片瀬莉乃で同じクラス。片瀬は空手の有段者で吉祥寺が誰かに絡まれても無傷なのは彼女がいるから。だとか。
彼女自身も有段者だからそこは曖昧らしいが。得意科目は英語、体育。苦手科目は日本史。

「てか優希詳しすぎだろ。」
俺は優希の話を遮って呟く。

『俺は可愛い子猫ちゃんたちが教えてくれることを教えただけさ!』

子猫=優希の周りに群がる女達。

俺も群がる女の話はちゃんと聞こうかな。
そう思った瞬間だ。

⏰:12/12/31 00:45 📱:iPhone 🆔:☆☆☆


#12 [我輩は匿名である]
麗子はあの日
お好きにどうぞ
と言って去って行った。

あれから俺は珍しく学校で会うたびに
言葉をかけ、
中庭へ行き、麗子のタバコに付き合った。

最初は怪訝な顔をしていた麗子だったが
次第に俺の名前を呼んでくれるようになった。すごい進歩だ。

⏰:12/12/31 01:51 📱:iPhone 🆔:☆☆☆


#13 [我輩は匿名である]
いつだか俺が言ったー卒業したらどうするのか、と。
俺はなんとなく麗子の口からそれを聞きたくて言葉を待った。

麗子は
あたし夢があるから。それ叶えるために努力すんだよ。春人は?
と言った。

俺はー明確な答えが思いつかず、反対に目標がある麗子に見合う答えがわからずにいた。ただ曖昧に誤魔化したのは覚えてる。

麗子は言った。

春人は幸せだね、って。わらって。

なぁ麗子。
お前はどんな気持ちでそれを言ったんだろうな。

⏰:12/12/31 01:55 📱:iPhone 🆔:☆☆☆


#14 [我輩は匿名である]
俺は単純に麗子のことが好きなんだと思った。これが俗にいう恋か、なんて思ったから。
でも麗子は俺なんか見てなくて、きっともっと遠くを見つめてる。
それが悔しかったし、もっと見て欲しかった。

「なぁ麗子ー。」
いつもの中庭。いつもの光景。麗子はベンチにすわってタバコをふかす。出会った頃と同じ、タバコの香り。

『んー?』

麗子の視線が俺に向く。白い煙が秋の空に消えて行く。

「俺さ。お前のこと好きだ』

⏰:12/12/31 02:00 📱:iPhone 🆔:☆☆☆


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