天使のいるまち

「さて、これからどうしようか……」

ふわふわ、ぷわぷわ。

宙に浮きながら下にいる人間の波を
見下ろす。上から見ると気持ち悪い。

あたしもつい最近まではあそこに
いたんだ……。

そう、あたしは生きていた。
でもいまは違う。
じゃあいまのあたしは誰か？

あたしは俗にいうユウレイ

……ってやつだ。

ことの始まりは5日前。

あたしの心臓はまだ動いていた。
で、止まった。
正確に言うと、自分で止めた。

飛び降り自殺。
なんでそうなったのかは覚えてない。
気がつくとあたしは雲のうえにいて
白いワンピースを着ていて

わかるのは自分は飛び降りて
死んだんだってことと、
「葉月」っていうあたしよ名前だけ。

あたし、どうなったんだっけ？

あ、そうだ。
確か学校の屋上から飛び降りて……

なんのために？
わからない。

でもあたし……死んだんだなぁ多分。

「ぴんぽんぴんぽーん！！」

パァン！というクラッカーの音とともに目の前に現れたのは白いヒゲの生えた年老いたおじいさんだった。

「うわぁ！？」

それと同時に驚き声をあげ、
あ、自分ってこんな声だったんだ
と知った。

「こーんにーちは。えーと。
葉月ちゃん。金山葉月ちゃん。

…で、合ってるよね？」

「え、あ、や、っていうか」

あんた誰。

白いヒゲに白い布みたいなものが
体に巻きついていて、頭の上には
ふわふわと金色のわっか。
にーっこり優しそうに微笑む
このおじさんはまるで……

「カミサマです。」

……。

いやいや、ナイナイ。
この汚らしいおじさんが？カミサマ？

「いまこんなおじさんが神様なわけ
ないって思ったでしょ？」

「あ、ばれました？」

「ほんとに思ってたのか」

しまった、ひっかかった。
いや、ていうか。

「あたしって、死んだんですか？」

なんとなくわかってた。
でも敢えて聞いてみた。

「なにも覚えてないの？」

「まぁ…飛び降りたことくらいしか」

「そっか……」

「天国とかって行けないんですか?」

「いまのままじゃ行けない。」

「えっ。」

あっさりと言い放った自称神様。
あんまりにもあっさりと言うので、
驚くのにも時間がかかった。

嘘だ、だって、
あたしが死のうとしたのは……

天国に行きたかったからなんだ。

……そうだ、あたしは、
天国に行きたくて、楽になりたくて。

記憶のなにかが動いた感覚。
パズルのピースがはまったというより
失くしていたピースを見つけた、
という感じ。

「あたし、天国行けないの？」

「自殺っていうのは重罪だからね。
天界においては人殺しと同等、
もしくはそれ以上の罪なんだよ」

「人殺し以上！？」

そんな常識知らない！！