忘却のカルタサス R18 【BL】
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#1 [羽柴] 13/02/13 21:37
はじめまして。閲覧ありがとうございます!
こちらはBL小説です。
苦手な方、嫌悪を持たれる方は閲覧をご遠慮ください。
ご理解のある方のみよろしくお願いします。

#2 [羽柴]
人は産まれながらに平等である。

貧困、裕福、それらの境界線は人が作り上げた欲望と
また自らの心が作り出した善と悪である。

自らに打ち勝つ正義も、自らに敗北する弱さも全ては
自分自身の投影でしかないのだ。


「だからリヴェル、お前は強くならなきゃならないよ。
この国を治めるのはお前しかいないんだから」


そう言ってまだ若い王は息子の小さな頭を撫でた。
自分を不思議そうに見上げる、蒼く澄んだ瞳はまだ幼い。
この瞳の美しさがいつまでも続くようにと、願わずにはいられない。
この美しく無垢な輝きも、いつの日か陰ることが来るだろう。
年月と共に、深い闇を宿すのだ。
それまでに自分はこの子の側にいてやれるのだろうか。


若き王の心中を知らずに、幼い皇子はニコリと笑みを向ける。
母親の面影を宿した顔立ちに思わず目をすがめる。

「愛してるよリヴェル。お前は自慢の息子だ」

この小さな体は、多くの民の希望を受け止めることができるのだろうか。

腕に抱き上げた幼い皇子は
父に跪く兵士達を見下ろし、その腕の中で無邪気に笑い見下ろすのだった。

⏰:13/02/13 21:39 📱:iPhone 🆔:ej0vLohw


#3 [羽柴]
【第一章】




運命、宿命。

いつからだろうか。
そんな言葉を耳にする度に、自分は産まれでたその瞬間から、作られたただのモノだと感じるようになってしまったのは。

他人が決めた道を歩いて、人々の夢や希望の象徴になって、何が正義で何が悪かもわからない自分に苛立ちを感じ始めたのは。

皇子になりたかった訳じゃないのに、と思うこともあった。
皇子に産まれてよかった、と思うことは一度もなかった。

ただひたすらに自問自答する日々。

美しいビロードのマントに、銀の食器、まだこの世に産まれて17年の自分に、膝をつき頭を垂れる老人、兵士、民。

リーズベルトという国を象徴するには相応しいほどの城の中で生きてきた皇子は、贅沢過ぎる環境に染まることなく、父の願いそのままの形で成長した。

⏰:13/02/13 21:42 📱:iPhone 🆔:ej0vLohw


#4 [羽柴]
「ねえ、ライ。僕にも剣を教えて」

ある晴れた日の午後。
薄汚れた兵舎に現れた皇子に、休憩中だった兵士達がポカンと間の抜けた顔を向ける。

先ほどまで賑やかに談笑していた室内が静まり返り、にこりと笑い立つ主君をただ呆然と見つめていた。

「あの…」

自分に向けられた視線に小さくなり、その笑顔がみるみる不安に陰る。

瞬間、スイッチが入ったようにハッとした数十名の兵士が慌てて膝をつき頭を垂れる。
その姿に、ますます慌てた皇子は、そのままでいいから、と手を振った。

「ご、ごめん。みんなの邪魔したかな…」

「へ、陛下。なぜこのような場所に…」

⏰:13/02/13 21:54 📱:iPhone 🆔:ej0vLohw


#5 [羽柴]
一人の兵士が声を上げる。
陛下、と呼ばれた皇子ーリヴェルは、困ったように肩をすくませた。

「ちょっと、ライに剣を教えてもらおうかと思って…」

「ライザール団長なら、城下の教会に…」

「あ〜あ、全く。人使い荒いっつーの、ウチの王様は」

兵士の言葉を遮り、乱暴に部屋の扉が開く。
大きな声で文句を言いながら現れた長身の男に、リヴェルは顔を輝かせた。

「ライ!」

その姿を見るや否や、すぐさま駆け寄る。

「おーリヴェル!え、なんでこんなとこにいんの?」

駆け寄ってきた相手に笑顔を向けるも、首を傾げてその頭を躊躇なく撫でる。

⏰:13/02/13 22:03 📱:iPhone 🆔:ej0vLohw


#6 [羽柴]
慣れ親しんだ手のひらの感触に、リヴェルは子供のように笑った。

「ライに剣を教えてもらおうかと思って」

「はあ?それだけでこんなとこに来たのかよ」

「うん!」

「護衛もつけないで?」

「え、うん。」

「はあ…あのなあ」

首を傾げて答えるリヴェルに、がくりと肩を落としたライザールは、ポン、とその細い肩を叩いた。

「一人でフラフラ歩くんじゃねーって、何回言えばわかるんだ?お前は皇子なんだぞ?」

「でも、兵舎(ここ)だって城の敷地内にあるじゃないか」

「あのな〜、そういう問題じゃなくて、お前は皇子としての意識が低すぎるんだよ!何かあってからじゃ遅いだろ?どこに行くにも、何をするにも護衛をつけろって言ってるだろ。何かあってからじゃ遅いんだよ」

⏰:13/02/13 22:12 📱:iPhone 🆔:ej0vLohw


#7 [羽柴]
勘弁してくれ、と溜息を吐いたライザールに、リヴェルの眉が下がる。

その姿に、ライザールは頭をかくと、とにかく、と続けながら、携えていた剣を外した。

「ここにくる時は、俺に一言いえよ。そうすれば、お前がこっちに来なくてもいいだろ?」

「僕に出歩くなって言いたいの?」

「そうは言ってないだろ。一人で出歩くなってだけ」

「ライは一人でも大丈夫なのに、なんで僕はダメ?」

⏰:13/02/13 22:17 📱:iPhone 🆔:ej0vLohw


#8 [羽柴]
「リーズベルトの皇子様だから」

「またそれ?」

うんざり、と顔を歪めたリヴェルに、黒く長い軍服のマントを壁に掛けたライザールが困ったように笑い振り返った。

「俺はお前や、殿下…ランス様を、この城を守るためにここにいる。守るべきものが守られなかったら、俺は一生後悔する。そうなりたくないんだ。俺のため、みんなの為を思うなら、軽はずみな行動はやめて欲しい。わかったな?」

⏰:13/02/13 22:59 📱:iPhone 🆔:ej0vLohw


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